「線形だと思ったら非線形だった」。そーですか。
夕飯は、俺の家で食べることになっている。
俺は亜紀ちゃんと皇紀にカレーを作らせ、栞と一緒に双子と話した。
一階の応接室だ。
「今日は、とことん聞くぞ」
「「はい」」
双子は、学校で「人生研究会」というクラブを作った。
それは俺も知っている、というか、俺が発案したものだ。
それは双子が暴力で学校を支配していると聞いたからで、もっと思想面でも強化させ、危なくない方向性を与えるためためだ。
まあ、双子の教養を高める目的が多かったのだが。
物事は、人に教えることで、格段に高まる。
一人で覚えるよりも、ずっと効果が高い。
双子が学校に提出した活動内容や目的は、俺が作ったものだ。
もちろん、そのための勉強はさせている。
さて、その先だ。
「「人生研究会」は、200名以上の部員がいます」
増えたなぁー。
「「人生研究会」自体の部室は理科室のままだけど、活動は今は視聴覚室でやってるの」
「でも15名の幹部で、月に二回、幹部会をしてます」
「幹部会は「虎の穴」という名称ね」
ルーとハーが交互に説明する。
「どうして「虎の穴」なんだ?」
「タカさんの名前の「虎」を入れた名称にしようとしたんだけど」
「いい名前が見つからなくて」
幹部たち全員で話したのが「虎を守る会」だったそうだ。
「なんか、動物愛護協会みてぇだなぁ」
「うん。便利屋さんもそう言ってた」
便利屋?
「そうしたら、便利屋さんが「虎の穴」はどうかって」
「それだ! ってなったのね」
「なんで、「それだ」なんだ?」
「便利屋さんが教えてくれたんだけど、強い人間を育てる闇の組織なんでしょ?」
ああ、『タイガーマスク』な。
どうしてあんな古いもんをあいつは知ってんだ?
「そこを出た主人公が、親のいない子どもたちを守っていく話なんでしょ?」
ちょっと違うけどなぁ。
「「もう、ピッタリじゃん!」」
だから違うって。
「そうか」
言うしかねぇ。
「あのね、あたしたちと幹部は全員、学年トップクラスの成績なんだ」
「ほぉー」
「タカさんの勉強法ね」
ちょっと嬉しい。
「みんな、それに感謝して、あとタカさんのお話なんかも大絶賛で、タカさんの教徒なの」
おい。
「ね、思想面でも進んでるでしょ?」
二人はニコニコして俺を見ている。
「褒めて」という目だ。
「うん、二人ともすごいな!」
「「エヘヘヘ」」
「それとね、危ない技はダメだけど、護身術みたいなレベルでは、みんな強いよ」
「あたしたちが鍛えたからねぇ!」
「ちょっと待て、どの程度なんだ?」
「うーん、ブロックくらいは割れるかな」
それは危ない技だろう!
栞が腕を組んで黙って聞いている。
たのむぞ、アドバイザー。
「じゃあ、お前たちとその幹部で、もう学校で逆らう奴はいないということか」
「まあ、だいたいねー」
「でも、どこにでもバカっているじゃないですか」
「ああ」
「だから、たまに締めていかないとダメなの」
「まあ、大体分かった。じゃあ、株の話を教えてくれ」
「はい。株は最初にネットの口座を開きました」
「ああ、そういえば前に、口座を開設したいとか言ってたな」
「それです!」
「だけど、株なんてそうそう儲かるものじゃないだろう」
「実際に買う前に、いろいろ調べました」
「過去の株価の変動がどうしてそうなるのか、調べました」
「それで?」
「最初は線形かなって思ってたんだけど、これは非線形じゃないかって」
おい。
「だから「有限要素法」をあてはめて、アレンジしたら、大体読めるようになりました!」
栞がソファからずり落ちている。
「ソレハスゴイナ」
俺はもう少し話を聞いて、大体現状は把握した。
この先はまったく分からんが。
「よし、分かった! もういいぞ。じゃあ、亜紀ちゃんたちを手伝って来い!」
「「はい!」」
「花岡さん」
「私に聞かないで」
栞が耳を塞ぐ。
「双子ってカワイイですよね」
「そうだと言って欲しいの?」
「そんな、大体大元は花岡さんじゃないですか!」
「そんなことない! 大元は石神くんのヘンな教育のせいでしょう!」
喧嘩してる場合じゃない。
「すいません、やめましょう。もっと建設的な話し合いを」
「だから、どーしろと?」
「「うーん」」
「ウランの濃縮って」
「物騒なたとえはやめて!」
「「うーん」」
「とにかく、大物になるのは間違いない、と」
「そこは同意するわね」
「「うーん」」
核ミサイルの無効化でもやらせてみるか。
できそうで怖い。




