ブロード・ハーヴェイのコンサート Ⅱ
斬と子どもたちをあやしながら楽しく話し込んでいた。
気が付くと、早乙女たちがこっちを見ていた。
俺の子どもたちと怜花を一緒にさせたいようだったが、斬がいるので躊躇していた。
俺が手招いて呼んだ。
「斬、俺の親友の早乙女と奥さんの雪野さん、そして娘の怜花だ」
「そうか」
「こいつが斬。俺の義理の親父だな」
「ふん!」
早乙女達が斬に挨拶する。
斬が何者かはもちろん知っている。
たとえ知らなくても、身に纏う雰囲気で近づきたいとは思わないだろう。
もちろん今は随分と優しいオジイチャンだが。
それでも士王たち以外には、激しいものが振り撒かれている。
「斬、早乙女をどう見る?」
「ヘッポコじゃな」
「え!」
俺は大笑いした。
確かに早乙女は何の武術も無い。
モハメドがいるから無敵なのだが。
「でも、頑張っているぜ」
俺はそれだけしか言わなかったが、斬には全て見受けられていたようだった。
流石だ。
「心は果てしなく広く優しいな。思い決めたら、何としてもやる遂げる男じゃ」
「!」
「その通りだ。こいつに任せて安心できないことはないぞ」
「そうじゃな」
「石神!」
早乙女が泣きだしそうな顔をしていた。
俺は笑って話題を変えた。
「おい、斬。この怜花を士王の嫁にどうだ?」
言われて斬が怜花をジッと見詰める。
「悪くは無いな。その子も光り輝いておるな」
「「!」」
早乙女達が喜んだ。
「石神! 是非頼む!」
「石神さん!」
俺はまた笑った。
斬も笑っている。
「おい、お二人さん。士王はこいつの息子ぞ」
「はい?」
「一人の女で納まると思うか?」
「「!」」
「おい!」
早乙女と雪野さんが顔を見合わせていた。
「石神、まだ先の話だ」
「あんだよ!」
「本人たちの希望もあるしな」
「だからなんだよ!」
「様子を見てからな」
「うるせぇよ!」
みんなが笑った。
頭に来たので、士王を雪野さんに抱かせた。
すぐに士王が雪野さんのオッパイを揉んでいく。
雪野さんが困った顔をしていた。
「ああ、こいつ。綺麗な女性のオッパイが大好きなんですよ」
「そ、そうなんですか」
早乙女が止めたいが止められずに顔を歪ませた。
ざまぁ。
楽しくなったので、麗星と蓮花、ジェシカを呼んだ。
三人のオッパイも士王に触らせてやる。
士王が興奮して来て喜んでいた。
ついでに「紅六花」の連中も呼ぶ。
中ではキッチパイが一番好きだったようだ。
「これでコンプリートだな!」
「うん!」
みんなが笑った。
早乙女と雪野さんが、小声で何かを話していた。
俺は子どもたちを早乙女達と斬に任せ、他の人間の所へ行った。
ロボの御飯皿が変わったのだと言うと、みんなが見に行き、褒められてロボが喜んだ。
流石にうちの子ら以外はみんな食べ終えてゆっくりしている。
それぞれと話し、初めて会う人間同士を引き合わせたりした。
これから共に戦う者同士が集った。
特別な夜になった。
また斬が俺の傍に来た。
「おい、ここに降りた時にいた男は誰じゃ。お前と親しそうな男だ」
「ああ、聖か?」
「あいつ、何者じゃ?」
「俺の大親友だ」
俺は聖と傭兵になって戦場を渡り歩いた話をした。
今は「セイントPMC」の社長になっていると。
「あいつがセイントか。相当強いな」
「ああ、俺と同じくらいにな」
「おい、あいつとやらせろ」
「なんだ?」
「頼む。機会を作ってくれ」
本当に戦闘狂だ。
まあ、斬にとっては、聖はこの上なく魅力的に映るだろう。
「分かったよ、そのうちにな」
「あやつも「花岡」を使えるな」
「相当にな。だけど、それだけじゃないぜ」
「分かっておる。だからだ」
「そうかよ」
1時間もするとうちの子どもたち以外は全員が満足したので、ホテルへ向かってもらった。
亜紀ちゃんたちもようやく落ち着いて来て、ステーキ以外の残った料理を漁って行く。
ロドリゲスがやっと挨拶出来た。
響子の所へ行く。
アルと静江さんもいる。
「御手数をお掛けしました」
「いいえ。皆さん石神さんの大事な御仲間ですもの」
「そうです。これからも宜しくお願いします」
俺がテーブルに座ると、ロドリゲスがコーヒーを運んでくれた。
「お酒の方が宜しかったですか?」
「いや、今晩はこのまま寝るよ。時差ボケは無いけど、やっぱりこっちの感覚にしておかないとな」
「さようでございますか」
「タカトラの子どもたちはどんどん大きくなるね」
「そりゃな。響子も綺麗になっただろう?」
「ああ、そうだね。タカトラに愛されているのが分かるよ」
響子が嬉しそうに笑った。
「よくパンツを脱がされるけどね!」
「おい!」
「さっきも起きたら履いてなかった」
「!」
忘れてた。
「タカトラ……」
「石神さん……」
「あ、危ないからですよ! 「タイガーファング」はマッハ300で飛行しますからね!」
「何を言っているんだ」
「ごめんなさい」
響子がザマァという顔で笑っていた。
子どもたちは部屋に入り、俺は一部屋借りてギターを弾いた。
照明を落として、薄暗い中で弾いた。
貢さんを思っていた。
あの人は、生涯闇の中で弾いていたのだ。
もう完全に曲は身体に沁み込んでいるが、俺は一通りを奏でた。
静江さんだけが俺に断って、一緒の部屋で聴いていた。
飲み物も置かず、ずっと黙って座っていた。
俺が弾き終わると、拍手してくれた。
「素敵な夜になりました」
「そうですか」
大きな窓から月光が挿し込んでいる。
本当に美しい夜だった。