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2005/3040

吉野 牛鬼狩 Ⅲ

 怒貪虎さんと一緒にカールを食べながら、いろんな話をした。

 主に私たちがタカさんの話をした。


 「私たちの両親が突然死んじゃってね。タカさんが兄弟4人を引き取ってくれたの!」

 「凄いおっきい家でね。でもそんなことよりも、タカさんが優しくって! 毎日泣いてたんだけど、すぐに元気になった!」

 「ご飯も毎回美味しい物を作ってくれてね!」

 「だからタカさんのために、何でもしたいの! 大好き!」

 「超好き!」


 怒貪虎さんは笑って私たちの話を聞いてくれた。


 突然、大きな気配がした。

 まるで爆発したみたいな巨大な圧力。

 怒貪虎さんが立ち上がった。


 「怒貪虎さん!」

 「ケロケロ!」

 「うん、お願いします!」

 「タカさんたちを助けて!」


 「ケロケロ」


 怒貪虎さんが走って山に入って行った。

 時々ジャンプして木々を乗り越えていく。

 物凄い速さだった。


 「タカさん……」


 私たちは怒貪虎さんの進む方角をずっと見ていた。





 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■





 俺が「飛行:鷹閃花」で向かうと、巨大な牛鬼が見えた。

 体長50メートルはありそうだった。

 8人の剣士が周辺にいて、既に1人が立ち向かい離れて3人。

 他の剣士は逃げようとしていた。

 石神家の剣士はその場で勝てない強敵に対峙した場合、一人が犠牲になって敵の技や能力を出来るだけ出させていく。

 それを数人が見届けてその情報を持ち帰り、返し技を編み出す。

 数人が見届けるのは、途中で敵に殺される可能性があるからだ。

 だから別々な方向へ逃げて追跡をかわす。

 今も、一人の剣士が立ち向かい、3人が離れてそれを観ていた。

 他の4人は先に逃げて行く。

 

 「どこにいたんだよ、あんな奴!」


 俺は地上へ向かった。

 上空から、他の剣士が向かってくるのが見えた。

 単独で行動してた「剣聖」たちだ。

 俺は地上に降りた。

 一人残った剣士の隣に立った。


 「俺がやります! 離れていて下さい!」

 「ダメだ! お前は生き残らなくちゃいけねぇ!」

 「何言ってんですか!」

 「当主なんだからよ!」

 「!」


 何言ってんだ。

 牛鬼の背中の剛毛が逆立つ。

 これほど大きいと、まるで一本一本が槍のようだ。


 「来るぞ!」

 「おう!」


 俺が叫び、剣士が応じた。

 俺は前方に「虚震花」を撃ち込んだ。

 剛毛が霧散していく。

 剣士が大笑いして喜んだ。


 「行くぞ!」

 「俺も行く!」


 俺と剣士が一緒に走る。

 でかい脚が俺たちを薙ぎに来た。

 先に剣士が刀身で受け、そのままへし折られた。

 俺が飛んで必死に「流星剣」を合わせる。

 脚の半分が斬り裂かれた。


 倒れた剣士を抱き起した。

 

 「大丈夫か!」


 意識はあったが喋れない。

 口から鮮血を吐いた。

 肋骨が肺を破ったのだろう。

 俺はそのまま抱えて飛んで距離を取った。

 剣士は苦しそうな顔のまま、自分で懐から「Ω」「オロチ」の粉末を取り出して口に入れた。

 すぐに表情が柔らかくなる。


 「助かったぜ」

 「いいですよ! 大丈夫ですね?」

 「ああ」

 「じゃあ、ここにいて下さい」


 俺はまた牛鬼に向かって行った。

 牛鬼は俺に斬られた脚を上に持ち上げて威嚇していた。

 俺の「流星剣」でも、一太刀では斬り飛ばせなかった。

 余程の硬度がある。


 「高虎!」

 「虎白さん!」


 虎白さんと他の3人の剣聖が来た。

 流石に速い。


 「どうだ?」


 虎白さんが俺に聞く。

 俺は短い言葉で伝えなければならない。

 切羽詰まった状況で、即座に行動しなければならないためだ。

 敵が尋常では無い妖魔なのは全員が分かっている。


 「「カサンドラ」を。普通の刀剣じゃ斬れません」

 「おし!」


 その遣り取りで十分に伝わった。

 奥義を出し惜しみ出来る相手ではなく、しかも「カサンドラ」が必要になる敵だということだ。

 虎白さんたちが躊躇なく刀を置き、背中から「カサンドラ」を外して握った。

 一人がロングソード・モードにし、200メートルのプラズマの刀身を展開する。

 虎白さんと他の四人は通常のソード・モードで、1.5メートルの刀身を出す。

 そういうことも全員が悟って手分けした。


 何も打ち合わせなく、虎白さんたちは四方へ散った。

 俺はロングソード・モードの剣聖と一緒に正面に残る。

 ロングソード・モードの剣聖が正面から巨大な牛鬼に振り下ろす。

 一撃で両断出来るとは誰も思っていない。

 振り下ろされた「カサンドラ」は、巨大な牛鬼の背中を焼いた。

 牛鬼が絶叫する。

 熱いようだ。


 俺は「ブリューナク」を牛鬼の顔面に見舞った。

 牛鬼の右目が潰れる。


 「ざまぁ!」


 隣の剣聖も「カサンドラ」をどんどん顔に突き刺して行った。

 牛鬼の攻撃が俺たちに集中する。

 俺は飛ばして来る剛毛を「虚震花」で防ぎ、剣聖を護りながら戦った。

 虎白さんたちが四方から同時攻撃を仕掛けた。


 「連山!」

 「煉獄!」

 「雲竜!」

 「疾風」


 牛鬼が脚を斬り飛ばされ、やがて胴体をどんどん削られて行く。

 巨体なので多少の時間は掛かるが、「カサンドラ」を使った奥義は圧倒的だった。

 俺の隣で剣聖が言った。


 「あいつ、ジェヴォーダンよりも硬いな」

 「そうですか!」

 「じゃあ、俺も行くな!」

 「はい!」


 剣聖が笑って突っ込んで行った。

 俺も笑いながら牛鬼の上に飛んだ。

 

 「オロチ大ストライク!」


 虎白さんたちに倣って、技名を叫んでぶっ放した。

 胴体が四散し、牛鬼の身体がペシャンと潰れた。


 「おお!」


 斃し切ったようだ。


 「高虎ぁー!」


 下で虎白さんが俺に叫んだ。


 「はい! やりましたね!」

 「バカヤロウ! 何でてめぇがとどめ刺すんだよ!」

 「え!」

 「しかも一発でよ!」

 「す、すいません!」

 

 手で来いと言っているので、俺は虎白さんの隣に降りた。

 ぶっ飛ばされた。


 「てめぇ! 身体がちょっと痺れたぞ!」

 「すいませんでしたぁ!」

 「ふざけんなぁ!」


 他の剣聖も来て、みんなに蹴りを入れられた。





 50メートル級が他に3体おり、80メートル級が1体いた。

 剣聖たちが争って斃しに行き、俺は「飛行」でどんどんクールタイムに入る「カサンドラ」の予備を運ぶ役目に集中した。

 通常の牛鬼は他の剣士たちが狩って行った。

 堕乱我と違って、ちょっと強すぎだったので、牛鬼は全滅させた。


 あー、俺もやりたかったのになー。

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