別荘の日々 Ⅴ
別荘に戻り、皇紀は早速勉強を始める。
俺は既に終えて、昼食の準備に取り掛かろうとする亜紀ちゃんを呼び止めた。
「ちょっと、一緒に食材の確認をしよう」
俺は別荘にいる間のメニューの予定を言い、亜紀ちゃんはノートにまとめた。
二人で冷蔵庫の食材の棚卸しをし、メニューと付き合わせる。
「明日あたり、また買出しが必要ですね」
「そうだな。まあ予定通りだけどな」
「今日は全然問題ありませんが、明日はバーベキューですよね」
「うん」
「予測できないですねぇ」
「そうだよなぁ」
「明後日のメニューは、明日次第ということですか」
「おう、そうしよう!」
俺と亜紀ちゃん、それに双子で昼食を作る。
皇紀はその間、勉強をした。
昼食を終え、子どもたちに好きなように過ごせと言う。
亜紀ちゃんと皇紀は勉強がしたいと言い、双子は外に出たいと言う。
俺は双子に付き合った。
この暑い中に出掛けたいというのは、やはり子どものパワーだ。
俺たちは湖に向かった。
双子は手をつなぎたいと言い、腕にからまって持ち上げろだの、うるさい。
途中で花岡流も出る。
林を抜けると、畑が多い。
日差しをもろに浴びて、本当に暑い。
双子もげんなりしていた。
「タカさん、アイスだよー」
「そんなものねぇだろう」
「じゃあ、ジュース。自動販売機にいこう」
「それもねぇなぁ」
水筒でも持ってくればよかった。
丁度通りかかった年配の女性が声をかけてくれた。
「よかったら、うちで休んでいきませんか?」
野良仕事の帰りなのか、俺たちを誘ってくれる。
俺は礼を言い、寄らせてもらった。
縁側に座らせてもらい、麦茶とスイカまで出してくれた。
双子は遠慮なく麦茶を飲み、スイカにかぶりつく。
「可愛らしいお子さんですね」
「はあ、暴れん坊で困ってます」
表札に「中山」とあったので、俺は中山夫妻のご親戚かと尋ねた。
やはりそうで、旦那さんの妹だそうだ。
俺は別荘の管理でご夫妻に大変お世話になっていることを話した。
「じゃあ、石神先生ですか!」
「はい、ご存知で」
「そりゃもう。前に旦那が骨折した時にも、先生に大変お世話になりました」
ああ、そんなこともあったか。
開放骨折だったので、洗浄と消毒をし、簡易的に骨を戻したくらいだが。
「あの時は先生の処置がよろしくて、病院でも驚かれました」
「いえいえ。こちらのご主人だとは知りませんで」
俺たちは沢山の野菜をもらってしまった。
あの時のお礼ができずに、ということで、断りにくかった。
両手一杯の荷物に辟易する。
「おい、お前たちもちょっと持て」
双子は顔を見合わせて笑いながら駆けていった。
坂を上ると双子が笑って待っている。
二人は俺の尻を押して帰ってくれた。
「タカさん、この野菜はどうしたんですか?」
俺は事情を話した。
「また食材の計算をやり直しですね」
「ちょっと後でな」
俺は汗だくになり、シャワーを浴びる。
着替えて戻ると、丁度スーパーの車が着いた。
俺は庭先のウッドデッキに荷物を運んでもらう。
店長さんが自ら運転してきた。
俺はデッキの椅子を進め、亜紀ちゃんにレモネードを用意させた。
「ご立派な別荘ですねぇ」
「いえいえ」
店長さんは、また是非ご利用下さいと行って、作業員と一緒に帰った。
またすぐあと。
六花が響子を連れて来た。
途中でも電話をもらったが、特に問題はない。
良かった。
響子は俺に抱き上げられ、別荘を見る。
嬉しそうな顔をしている。
「昼食を途中で食べたのですが、車の中では眠れなかったようです」
六花は出発と昼食の時間。食事の内容や飲んだものなどを俺に報告する。
こいつに任せて良かった。
「じゃあ、響子を少し寝かせよう。お前も休めよ、ごくろうさん」
「いえ、私は」
俺は無理矢理六花にシャワーを使わせ、俺は響子を寝巻きに着替えさせた。
響子のパジャマは白のガーゼ地に、縁に青の線が入っている。
そして胸には虎の刺繍がある。
特注だ。
響子は俺のベッドに横になると、すぐに寝息をたてた。
後から六花が来て、響子の隣に横になる。
こいつはいつものジャージだった。
俺は六花の頭を撫でてやった。
すこし湿っている。
「本当にありがとう」
「はい」
六花は小声で応える。
俺は六花の額にキスをした。
「ちょっと寝ろよ」
「はい」
「あの」
「なんだ」
部屋を出ようとして、六花に呼び止められた。
「シャワーを浴びたら、ご褒美かと思いました」
俺は腕を振るい上げ、六花を殴るポーズをした。
そして声を出さずに口で伝える。
あとでな。




