表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星の家族:シャルダンによるΩ点―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困惑する外科医の愉快な日々ー  作者: 青夜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

196/3161

別荘の日々 Ⅳ

 朝に、やっぱり双子の花岡流で起こされた。

 俺の両腕に絡み付いている。



 柳と亜紀ちゃんとも違って、何の感触もねぇ。

 俺はそのままベッドの上に立ち上がって両手を振ってやった。

 二人がキャッキャと喜ぶ。

 亜紀ちゃんが朝食ができたと呼びに来た。


 「あ、ヤラシー王様だ」


 「……」




 朝食は中山夫妻からいただいたアジの干物と、ウインナーが大量に炒められていた。

 ウインナーが好きな双子が大喜びだ。



 「すいません。冷蔵庫に一杯あったんで。まずかったですか?」

 「いや、全然構わないよ。どうせまた買出しに行くんだしな」


 「あ、そうだ。皇紀!」

 「はい?」


 「お前、昨日生意気なことを言ってた罰だ。俺と一緒に買出しに行くぞ!」

 「はい」




 片付けは三人に任せ、俺と皇紀は街に向かった。


 「あの、タカさん。昨日は生意気を言ってすみませんでした」


 俺は笑って言う。

 「そうじゃねぇよ! 冗談だって。お前と一緒に出掛けたかっただけだ」

 皇紀はホッとすると同時に嬉しそうに笑う。



 「女が三人もいると、なかなか男同士で話せないからなぁ。今日から響子も来るし、ますますだ」

 「はい」

 「でも、俺はいつもお前のことを大事に思っているし、大好きだしな。昨日も真っ先に俺に礼を言ってくれたのもお前だ」

 「はい」

 「もちろん礼なんて要らないけど、お前の心だよな。ありがとう」

 「いいえ」



 狭い舗装道路を進んでいく。

 ハマーはでかいから、対向車に注意が必要だ。



 「ところで、今日は何を買出しに行くんですか? 昨日タカさんが行ってましたよね」

 「ああ、昨日見つけられなくてな。別に今日じゃなくてもいいんだが、花火だよ」

 「なるほど!」

 「もう、花火と言えば皇紀じゃない」

 「そうなんですか」

 「おう!」




 昨日のスーパーには売ってなかった。

 まあ、スーパーに寄って聞いてみるか。




 俺は昨日のスーパーに行った。

 丁度昨日手伝ってくれた店員が、俺を見つけて寄って来る。


 「昨日はありがとうございました! 今日は何かお探しですか?」

 「ええ、子どもたちに花火をやらせたいと思ってるんですが、こちらにはありませんか?」

 「ああ、それでしたら、特設売り場です。どうぞ」

 

 俺たちは案内してもらった。

 駐車場はスーパーの裏にあり、特設売り場は正面にあった。

 どうりで見つからなかったわけだ。




 俺は皇紀にキャリーを二つ持ってくるように言う。

 二人で選ぼうとしたが、いろいろあって面倒くさい。


 「なあ、皇紀どん」

 「なんでしょうかタカどん」


 「選んで買うのって、めんどくさくねぇか?」

 「え、でも」

 「近所の子どもたちが、この花火を楽しみにしてるんだよなぁ、きっと」

 「ええ、そうでしょうね」

 「なくなっちゃったら、面白ぇとは思わねぇか? どん」

 「それは悪いことですねぇ、どん」


 俺たちは片っ端から花火をキャリーに入れた。

 皇紀にももっとキャリーを持って来いと言う。

 皇紀が三つのキャリーと格闘していると、先ほどの店員がまた助けてくれる。


 「皇紀! 全部入れろ!」

 「はい!」


 「いえ、お客様。ここで会計いたします。こちらで全部包みますから」

 「そうなの?」




 俺は会計だけして、花火の梱包に時間がかかると聞いたので、構内の喫茶スペースに向かった。

 ちなみに、50万円ほどだった。


 俺と皇紀はクリームメロンソーダを頼む。

 たまに飲みたくなるんだよなぁ。





 俺は皇紀に葵ちゃんたちとの進展を聞き、何もねぇことに嘆く。

 「オッパイとか見せてもらってねぇのかよ!」

 「見ませんよ!」


 「なあ、柳のオッパイとか見たいか?」

 「見たいです!」

 言い切ったぁ!



 「お前も葵ちゃんたちとか付き合ってるのに、柳に惚れるとか、悪い奴だなぁ」

 「えーと、別に二人とは付き合ってるわけじゃ」

 「そんな言い訳が世間様に通用すると思うか?」





 くだらないことを話しているうちに、店員が呼びに来た。


 「準備が整いました! お待たせしてすみません。あ、ここのお飲み物はサービスいたします」


 「だったら、もっと頼んでおけばよかったな」

 「タカさん、悪すぎですよ」

 俺たちは小声で話し、笑った。





 先ほどの特設売り場には、ほとんど「売り切れ」の札が下がっている。

 やったな、皇紀!


 しかし、その脇に積まれたダンボールの量に驚く。

 まずい、ハマーに積めねぇ。



 「あの、この量はお持ち帰り大丈夫でしょうか?」

 「すいません、ちょっと何往復かさせてください」

 「いえいえ、もし宜しければ、お届けさせていただきますが」



 なんていい店員だ。

 名刺を差し出すので、俺も返す。

 店長さんだった。

 どうりで接客が気持ちいいはずだ。



 相手も俺の名刺を見て驚いている。

 まさか医者だとは思っていなかっただろう。


 俺はペンを借り、住所を名刺の裏に書いた。

 私用の電話番号もだ。


 距離的にもお届けは問題ないと言われ、三時ごろにとのことだった。



 俺たちはハマーで別荘に戻る。

 皇紀の勉強時間を削ったからだ。





 俺は何となく、さっきの話の続きをする。


 「お前、本当に柳が好きなんだな」

 「はい。こんな気持ちは初めてです」

 「おい」

 「はい」

 「初恋はなぁ、実らないのがいいんだぞ」

 「エェッー!」


 俺は大笑いした。








 これは、一応三角関係なのだろうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ