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星の家族:シャルダンによるΩ点―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困惑する外科医の愉快な日々ー  作者: 青夜


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双子、大精霊界へ。 Ⅲ

 「花岡流!」

 「流れ!」


 俺は双子と一緒の部屋に寝た。

 当然のように、双子の花岡流で起こされた。

 こいつらは、俺には何を仕掛けても大丈夫だと思っている。

 流石に関節技以外は止めたが。


 「いててて、参った」

 俺が大げさに痛がると、二人は喜ぶ。

 まあ、俺が対して痛くはないのを知ってのことだが。


 「あら、もう起きてたのね」

 静子さんが起こしに来てくれた。

 「すいません、朝から暴れん坊で」


 「花岡流!」

 ハーが俺の寝巻きの下をずり下ろした。

 一緒にパンツまで脱げた。


 「お前ぇ!」

 二人が大笑いしている。

 静子さんは後ろを向いて笑いを堪えていた。

 

 まあ、静子さんが笑ってくれたからいいか。




 美味しい朝食をいただいて、俺たちはいつも通り掃除をさせていただく。

 ヘンゲロムベンベと化した院長が、気持ち悪い笑みを浮かべながら見ている。


 「石神、ちゃんと教育してるな」


 俺はハーに「花岡流」を見せろと合図して仁王立ちになる。

 ハーが、俺の寝巻きとパンツをずり下ろした。


 「何してるんだぁー!」


 静子さんが堪え切れずに声を出して笑った。






 掃除を終え、静子さんがスイカを切ってくれた。

 

 「美味しそうよね」


 縁側でいただく。

 院長は一口食べて驚愕していた。

 どうだ!


 「これは、なんという……」

 「ね、甘いでしょ?」

 「本当にね。びっくりしたわ」

 静子さんも驚いて下さった。


 「花屋さんに聞いたら、普通は素人がスイカなんかできないって言ってました。それが12玉もできたんですからね」

 俺が説明する。

 今回持ってきたのは、最後の小さなものだったが、御堂の家に持っていったのは大玉だった。

 そして、専門の農家以上の甘さがあったのだ。


 「ヘンゲロムベンベ様のまじないのお蔭ですよ、な?」

 「「ありがとうございました!」」


 「お、おう」


 お二人は二切れほど食べて、あとは双子にと言った。

 

 

 昼食は遠慮し、帰り支度を始める。


 「これ、良かったら家で食べてね」

 大量のそうめんを静子さんからいただく。

 「ありがとうございます」


 うちにも頂き物でたくさんあるが、油断すると全部なくなるので助かる。


 「石神、また来いよ」

 「はい、是非。また怪獣ともどもお邪魔します」

 「おう」


 大精霊みずから門を開けてくれ、俺たちは辞した。






 「折角だから、ちょっとドライブして帰るか」

 「「わーい!」」

 双子は大喜びだった。




 俺は二子玉川に向かい、丁度昼時なのでツバメグリルに入る。

 メニューを見せて好きなものを好きなだけ注文させた。

 双子は5人前を選び、俺が自分の分と合わせて注文する。


 マネージャーらしき男性が「すいませんでした」と言い、俺たちは広いテーブルに移される。

 6人がけだ。


 料理がやってきて、すべて椅子の前に置かれた。

 「お連れ様は、すぐにいらっしゃいますか?」

 「いえ、三人だけですが」

 「!」


 まあ、そうだったのか。



 双子はもの凄い勢いで料理を食べ、店の人たちを驚かせた。

 まだ入るかと確認し、俺はフルーツパフェを二つ注文する。

 俺はコーヒーでいい。



 会計を済ませ、俺が美味しい料理をありがとうございますと言う。

 「とっても美味しかったです!」

 「ありがとうございました!」


 双子も礼を言う。

 店の人たちが全員で拍手してくれた。

 店を出るときに、手を振ってくれる。





 俺は多摩川の河川敷で子どもたちを遊ばせた。

 俺はハマーから簡易椅子を持ち出し、離れて見ていた。


 周囲には家族連れも多かった。

 双子が珍しいのか、子どもたちが集まってくる。

 双子はでかい石を持ち上げて放り投げる。

 驚いた子どもたちが驚いて逃げ出して行った。

 双子は腕組みをして笑っていた。

 

 なんだよ、そのやり切った感は。




 親らしい集団が双子に詰め寄ってきた。

 危険なことを叱ろうとしているらしい。

 

 「あなたたち! あんなことをして怪我したらどうするの!」

 親の一人らしい女性が双子に詰め寄った。


 「有象無象がうるさいです」

 ルーが啖呵を切った。

 「まざー・ふぁっかー!」

 ハーが中指を立てた。


 親たちが双子を取り囲む。


 俺は二人に近づいて言った。

 「おい、二人とも帰るぞ!」


 集まった親たちが、一斉に俺を見る。

 親が同伴だとは思ってもいなかったらしい。

 双子は俺の両手を握ってきた。


 そのまま帰ろうとしても、誰も止めない。


 「子ども相手には威勢がいいけど、なんなんだ、お前らは」


 俺が車に向かおうとすると、一人の大柄の男が俺の肩に手を乗せた。

 「ちょっと待て!」


 俺はそのまま背負い投げで男を投げ飛ばす。

 顔の横の地面を踏み潰した。


 男は硬直した。





 車に乗って、双子ははしゃいでいた。


 「タカさん、カッコイイ!」

 「さいこう!」


 「お前らなぁ。あれは完全にお前らが悪いって分かってるか?」

 「うん」

 「まあ、そうですね」




 「でもなぁ、俺はお前らの味方だからな」


 「「!」」


 「いつだってお前らを守ってやる。だからお前らも俺の顔にあんまり泥を塗るな」

 「「はい!」」


 帰りの車の中で、俺たちはあの連中のダサさの話で盛り上がった。


 亜紀ちゃんは素直で優しい。

 皇紀は優しくて、芯が強い。

 双子は暴れん坊だ。

 しかし、双子の無茶苦茶は俺の好むところだ。

 優しさは微塵もねぇが、いずれ分かる時が来るだろう。




 俺がそうだったからな。










 家に帰り、双子から経緯を聞いた亜紀ちゃんが涙目になって怒り、三人で叱られた。

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