御堂家 Ⅵ
子どもたちは、お世話になった御堂家の部屋を徹底的に掃除した。
掃除が終わり、部屋に挨拶する。
「「「「「三日間、お世話になりました!」」」」」
御堂家の人々がにこやかに見ていた。
昼食に手巻き寿司を用意してくれ、また子どもたちは楽しそうに食べた。
見ている俺は、あまりの喰いっぷりに食欲を無くしたが。
「しばらくこの光景が見れないのはなぁ」
「そうですねぇ」
正巳さんたちが残念そうに言う。
柳が俺の隣に来た。
「お父さんにお風呂のこと話したでしょう!」
「俺は話すって言ってたじゃないか」
「もう!」
俺は柳の頭を撫でた。
「東京に来たら、面倒みてやるよ」
「ほんとに?」
柳が嬉しそうに笑う。
「それで、お父さんに怒られたか?」
「ううん、好きにしなさいって」
「そうかよ」
俺たちは荷造りをし、ハマーに乗せた。
御堂家のみなさんが見送りに出てくれた。
「「「「「お世話になりました!」」」」」
「また、絶対にみんなで来てくれな」
「本当にね」
正巳さんと菊子さんが言う。
「石神さん、今度はもっと長く来てください」
「今回はあまり話ができなかったな。正利も東京に遊びに来てくれ」
「はい、必ず!」
「私は近いうちに、東京へ行きますね」
「お前は来なくていいぞ」
柳はむくれた顔をする。
「絶対行きますから!」
「石神、また来てくれな」
「ああ、本当に世話になった」
「またな」
「またな」
「柳のこと、よろしくお願いします」
「いや、澪さん、ちょっと」
澪さんは、うふふと笑った。
子どもたちも、それぞれ挨拶を交わす。
帰り際に、たくさんの卵と子どもたちと採った山菜をいただいた。
山菜は灰汁抜きしてあるとのことだった。
ありがたい。
御堂家を去った。
「あー、本当に楽しかったですね」
助手席には亜紀ちゃんが座っている。
「お前らは喰ってばかりだったがな」
「エヘヘ、本当にたくさん食べましたねー」
「喰い過ぎだ!」
一体、食費がいくらかかったことか。
「でも、山菜を一杯取りましたよ?」
「スイカも美味しかったって」
ルーとハーが主張する。
「バカヤロー! お前らが喰った百分の一もねぇ! それに山菜は全部車に積んである!」
「おじいちゃん、喜んでましたね」
皇紀が言う。
まあ、それはな。
「まあ、そうだな。みんな楽しんでくれてはいたな」
子どもたちは喜んではしゃいだ。
俺はふと思いついて、帰りに河口湖へ回った。
子どもたちをボートに乗せたりして、夕方まで遊んだ。
湖畔のレストランに入り、ちょっと早目の夕飯にする。
子どもたちはメニューを開こうとして、俺が止めた。
「ここでは、必ず食べなきゃいけないものがある」
俺は「大名御膳」を4人前と、俺はカレーを頼んだ。
出てきたでかい膳に、子どもたちが喜ぶ。
俺はニコニコして見ていた。
「「「「いただきまーす!」」」」
「う」「げ」「なに?」「まっずぅー」
「どうだよ?」
「タカさん、ひどく不味いんですが」
「そうだろう」
「折角の山梨の思い出がだいなしだよー」
ハーが嘆く。
「バカを言うな。その不味さで、御堂家でいただいた食事の数々が輝いてくるじゃないか」
「えぇー!」
俺は笑って言った。
「あ、タカさんだけ違うの食べてる!」
ルーが抗議する。
「ああ、俺は前に喰ったからな。安定の不味さで感心するよ」
「ひどいです」
「アハハハ、お前ら残さず喰えよ!」
俺たちは喰えなかったけどな。
ちなみに、カレーも不味かった。
澪さんが、帰り際に俺に土産を渡してくれた。
手に乗るほどの、小さな箱だった。
家に戻って包みを解く。
小さな、純金の昇り龍だった。
「石神さんをお守りするようにと、注文したものです」
澪さんは、そう言っていた。
俺は三ツ谷硝子に特注のケースを注文し、寝室の壁に飾った。




