Das Blaue Licht
一階応接室。
院長は双子に大人気だった。
青い光を見せて欲しいだの、精霊の国はどんなところかと聞かれ、オロオロする様は見ていて気持ちがいい。
静子さんは、院長が子どもたちに好かれているのをニコニコと見ていた。
「まあ、あの人があんなに困った顔をするのは珍しいわねぇ」
「そうですね」
俺たちは、亜紀ちゃんが煎れてくれた紅茶を飲んでいる。
「おい、石神! 助けてくれ!」
じゃあ、そろそろ助けてやるか。
「おい、ルー、ハー、大精霊様たちに、花壇を見てもらおう!」
「「はーい!」」
俺たちは一度玄関に回り、外へ出た。
花壇を見て、院長が驚く。
「おい、まだ数週間しかたってないぞ?」
クレメオはちょっと成長が早い程度だが、ガウラはもう1メートルを超えている。
もう花壇には収まらなくなるだろうと、今便利屋に他の場所を用意させているところだ。
そして院長は俺の耳元に口を近づけた。
気持ち悪い。
「花壇全体がまだ光ってるぞ」
そう言われても、それがどの程度の驚きなのか、俺には分からない。
「やはり、あの双子かぁ」
だから分からないって。
「あらあら、ここはルーちゃんとハーちゃんの花壇なの?」
「「そうです」」
「ずいぶんと可愛がって手入れしているのねぇ」
「はい!」
「分かりますか!」
二人とも大喜びだ。
「ええ、だってお花たちが喜んでいるもの」
俺は院長の顔を見る。
すると院長は顔を横に振った。
静子さんに何かが見えるわけではないらしい。
「あのね、ガウラちゃんはもっともっと大きくなるよって言ってるの」
「それでね、クレメオちゃんは、待っててねって言うの。きれいなお花をみせてあげるって」
院長が俺の肩を掴む。
「おい、石神、この二人を俺にくれ!」
「え、ちょっと何言ってるんですか」
「二人は俺の家でちゃんと育てるから!」
「そんなの無理ですよ!」
亜紀ちゃんが双子の前に両手を広げて立ちふさがる。
「あなた、無理なこと言わないでください」
静子さんにたしなめられ、院長はおとなしくなる。
「すまん、つい興奮してしまった」
双子が院長の両側から背中をぽんぽんしてやる。
「ヘンゲロムベンベ、どんまい」
呼び捨てだ。
まあ、本名じゃねぇが。
静子さんが、また笑った。
俺は夕飯の準備を始めた。
今日は鳥鍋にする。
静子さんが愛知の出身なので、名古屋コーチンのいいものを使う。
鳥の切り身と、団子も作るつもりだ。
「私もお手伝いしますよ」
そう声をかけて下さる静子さんを座らせ、俺と亜紀ちゃんと皇紀でやった。
双子には二人の相手を任せる。
院長も二人と一緒にいたいようだから、いいだろう。
そのうち、二人は双子が家を案内するということで連れて行かれた。
院長は何度か来ているが、大抵打ち合わせで家の中のことは知らない。
静子夫人は二度ほどか。やはり案内したことはない。
食事の用意と言っても、鳥団子以外は食材を切っていくだけだ。
俺と亜紀ちゃんで担当し、皇紀はひたすら団子を握っていく。
切り終えた俺たちも、団子に参加する。
「おい、石神! お前の家ってすげぇな!」
「ほんとに、うちとは全然違うのねぇ」
院長の家は、基本日本住宅だ。
洋室もあるが、和室が半分を占めている。
ただ、広い縁側があり、手入れの行き届いた庭が美しい。
「あの階段のガラス、素敵だったわぁ」
自慢げに双子が披露したのだろう。
静子さんがそう言われると、少々照れくさい。
食事の準備が終わったので、少し歓談し、鍋の準備をする。
コタツは、4月から普通のテーブルに変えている。
さて、じゃあ見てもらおうか。




