こんなあさましい身と成り果てた今でも:中島敦
俺は6回、六花は数え切れないほど逝き、気を失った。
もう朝の4時だ。
浴衣を着て、六花にも着せる。
六花を椅子に座らせてから、フロントへ連絡し、新しいシーツとベッドパッドを頼んだ。
待つ間もなく、すぐにボーイが運んでくる。
俺は自分でやるからと言い、汚れたものと1万円札を渡した。
一瞬恐縮したボーイは、深く礼をして立ち去った。
手早くベッドを整えて六花を寝かせ、俺はシャワーを浴びる。
ベッドへ戻ると、六花の美しい寝顔を見て、またちょっかいを出したくなるのを我慢した。
二時間後、俺は六花のキスの嵐で目覚めた。
俺が目を開けると、六花は自分の股間に俺の手を導く。
「また、こんなになってます」
俺たちは、また互いを求め合った。
「腹が減ったなぁ」
「そうですねぇ」
二人で天井を見ている。
「たんぱく質を補わないとな」
「はい」
俺たちは一緒にシャワーを浴び、また求めた。
「いい加減にしねぇと、帰れねぇぞ」
「そうですねぇ」
俺たちはやっと服を着て、サービスの朝食バイキングにありついた。
平日ということもあり、会場は空いている。
「お一人様、二皿まで」という看板を見て、二人でショックを受ける。
「高ぇ宿泊代のくせに、ケチくせぇな」
「ほんとにほんとに」
俺と六花は、目玉焼きを5枚重ね、その上にローストビーフの山を作った。
もう一皿は、乗せられるだけあらゆる料理を乗せた。
「これでもとは取れますね!」
俺たちは貪るように喰った。
「石神先生、運転大丈夫ですか?」
六花が心配そうに言う。
「もう一泊して休みませんか?」
「冗談じゃねぇ! 死ぬぞ!」
確かに疲労があるし、眠かった。
睡眠が辛ければ、途中のサービスエリアで仮眠を取ろう。
眠くならないように、俺は六花に話しかける。
「そういえば、六花」
「なんでしょうか」
男女の仲になっても、六花は変わらない。
ベタベタするような甘えはなく、助かる。
「来週、アビゲイルが響子と一緒にお前のマンションへ行くんだよな?」
「はい、その予定です。石神先生もご一緒ですよね」
「ああ、そうだ。ところでさ、お前、資料の片付けは大丈夫だろうなぁ?」
「ええ、ちゃんと片付けてます」
俺は念のために聞く。
「お前の大事な資料は寝室に仕舞えと言ったよな?」
「はい、言われた通りにしました」
「なら良かった」
「響子のために勉強してる資料は、全部寝室の扉付きのキャビネットに入れてます」
「!」
驚いた俺に、六花が怪訝な顔をしていた。
「お前、エロ本はどうしたんだよ!」
「ああ、別に大事でもないので、いろんな場所に入れてますが」
「そういえば思い出したけど、お前の部屋に行ったときに、テレビの前にAVが一杯あっただろう?」
「はい。あれは毎日見てますので、大体あの位置に」
「おい、今日はこのまま病院には戻らずに、お前の家に行くぞ!」
「え、は、はい! 喜んで! いろいろと器具も……」
六花が満面の笑みを浮かべる。
「ばかやろー! 勘違いすんな! 全部今日中に片付けるからな!」
「はい?」
いや、一度病院へ寄って、カフェイン剤を持ち出さないと。




