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星の家族:シャルダンによるΩ点―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困惑する外科医の愉快な日々ー  作者: 青夜


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岡庭クンは、イジラレたい

 皇紀が真面目な顔で、俺に言った。



 「タカさんは別ですけど、僕はどうもみんなにイジラレるタイプなんですよね」


 「そうだな。でもどうして俺はいいんだよ」


 「タカさんは、イジってもらうと嬉しいですから」


 「そうかよ。まあ、お前の場合、安心感があるんだよな」

 「安心感ですか」


 「ああ。お前は怒らない。何か言っても酷いことを返さない。だからだろうよ」

 「そうなんですかねぇ」


 「自分のことって、よく分からないんだよな。要はお前は「いい奴」なんだよ。だから冗談も安心して言えるんだよな」




 俺は、大学時代の同級生の話をしてやった。









 「パパ! 学生時代の同期で、グアムに行くことになったよ!」

 岡庭健は、新聞を読んでいた父親に嬉しそうに言った。


 「そうか、いつからだ?」

 「三週間後の8月20日からだよ」


 岡庭は山形で大病院を営む父親の下で働いている。

 卒業と同時に入り、まだ修行中の身だ。


 岡庭健。身長151センチ。超細身。眉が非常に濃く、体毛も太い。

 岡庭父。身長147センチ。細身だが腹が出て来た。眉と体毛が濃い。


 完璧な遺伝である。



 「それでね、パパ。旅行には石神クンも来るんだよ」

 「ああ、健の大好きなあの人だな」

 「うん、そうだよ」


 岡庭父は、愛する息子に言った。


 「それは良かったね。でも健、スカートは履いていくなよ」

 「やだなぁ、パパ。そんなことするわけないじゃないか!」

 「そうか、それならいいけどな」


 岡庭は階段を機嫌よく昇っていく。

 周囲を気にせず一段とばしに昇ったので、、スカートの裾からパンツが見えていた。






 (飛行機の中では、絶対に石神クンの隣に座ろうと思ったのに)

 (ちゃっかり花岡さんが座っちゃってぇ。なんだか楽しそうに石神クンとずっとお話ししてた!)


 医学部の仲の良い同期。

 それぞれ病院での研修期間も終わり一段落している。

 それで、誰の発案だったのか、久しぶりに旅行でも行こう、ということになった。


 場所はグアムに決まり、幹事になった数人でホテルや飛行機を予約してくれた。


 

 8月のグアムは非常に暑い。

 みんな薄着で半袖だったが、石神だけは白の麻のスーツを着ていた。


 (カッコイイ! さっき聞いたらダンヒルのフルオーダーだって!! 石神クーン!!!)



 「さて、じゃあまずはホテルに行って荷物を置こう。最初に部屋割りも決めちゃうからな!」

 幹事の川原がみんなを誘導する。


 (い、石神クンと同じ部屋になりますように!)




 


 (なんで石神クンは御堂くんと一緒になっちゃうんだよ。クジ引きじゃないのかよ)

  

 部屋割りは希望者が一緒になった。

 当たり前だ。



 岡庭は誰も誘ってくれず、幹事の川原と一緒になった。


 「じゃあ、荷物を置いたら三十分後にロビーに集合してください。今日はみんなで市内観光をして、その後は自由行動とします。ホテルには7時までに戻ってください。夕食になります」




 岡庭は石神と自由行動を、と思ったが、石神は御堂と花岡と一緒に予約していたガン・シューティングに行ってしまった。




 ホテルでの夕食も、三人が一緒のテーブルにいる。

 岡庭は勇気を出して、そのテーブルに座った。


 「よう、岡庭。相変わらずちっちゃいな!」


 (い、石神クンがボクに声をかけてくれたぁ!)


 「石神くん、岡庭くんに失礼よ」

 「いや、岡庭が変わってなくてよかったなって話だよ。俺はちっちゃい岡庭が大好きだからなぁ」


 「ブフォッ!」


 岡庭は飲みかけのビールを噴出し、激しく咳き込んだ。


 「大丈夫、岡庭くん?」


 花岡が心配して、ハンカチを差し出してくる。


 (ダイスキダカラ、ダイスキダカラ、ダイスキダカラ、ダキタイカラナ!)


 「ぼ、ぼくも石神クンがダイスキだよ」


 岡庭は勇気を振り絞って言う。


 「な、俺たちは仲良しなんだよ」

 「もう」


 花岡は呆れて言った。

 御堂は声を出して笑っている。


 


 「ねえ、石神くんって、なんであんなに銃が上手いの?」

 「え、そうだったか?」


 「だって、マグナムでしょ? 店の人だって手がこーんなに上がっちゃってたじゃない」

 「ああ、あれは酷いよなぁ」


 「そんなことないよ! 石神くんは全然ぶれないで、全部的の中心に当ててたよね?」

 「よく覚えてないや」

 「それも、片手でバンバンすごいスピードだったよ」


 「ああ、あの後、店の人がなんかくれてたよね」

 御堂は自分と花岡の紙とはちがうものを石神が受け取っていたのを見ていた。


 「僕と花岡さんは普通の成績表だったけど、石神はそれと別にもらったじゃないか」

 「ああ、あれか。「マスタークラス」って書いてたな」


 「「なに、それ!」」


 「知らねぇ。明日も行くから聞いてみろよ」

 「え、明日はみんなでビーチに行くんじゃない」

 「ええ、俺は嫌だなぁ」


 「じゃあ、岡庭、一緒に行こうぜ」


 「え、い」

 「ダメよ、みんなで来てるんだから!」


 (ハナオカ、シネ!)


 「しょうがねぇなぁ」







 岡庭は全然会話に入れなかった。



 

 夕食後、仲の良い者同士で、それぞれ部屋に集まったり、外へ飲みに行く者たちもいた。

 石神はまた御堂と花岡とで、町に繰り出していった。



 岡庭は夜の浜辺を歩いた。








 (石神クン、あしたは、きっと!)


 岡庭は打ち上げられたナマコを踏んで、激しく転んだ。


 

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