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4話 慣れないこと

 今日はオフの日。それぞれが自由に過ごす日だ。ハクは皆で遊ぼうとアインとユリカを誘いに家に行こうかと提案するも、ミシェルに即却下された。

 

 ミシェルは検索能力で、アインとユリカが朝から励んで(・・・)いることを知ってしまった為だ。現在絶賛行為中。そんな時に家に入ってこられたら折角のムードが壊れてしまう。

 

 2人きりの甘い時間を邪魔するわけにはいかない。なのでミシェルは、ハクをデートに誘うことにした。

 

「ねえハク、せっかくだから2人きりでデートしない?」

 

「うん!」

 

 即答である。ハクはミシェルを心から愛している。そんな相手と2人きりで出かけられることに、彼の心の中は瞬間的に高揚感で満たされた。

 

 対してミシェルは、たまには一緒に遊んであげよう、という程度の気持ち。もちろん彼女もハクを愛しているが、それは弟に向ける慈愛のようなもの。好きは好きでも、そのベクトルが違う。それはまだ異性に向ける愛情とは言い難い。

 

 

 2人は外に出る格好に着替え、外出した。現在は春。気温もちょうど良く、デートには絶好と言える季節だった。

 

 2人が露店を見て回っていると、そこかしこから様々な内容の話が聞こえてきた。息子が結婚相手にプロポーズを断られただの、最近友達の態度が悪いだのという、他愛もない話だった。そんな話を話題にすることもなく、喧騒と共に2人は聞き流した。

 

 

 そして2人は町を歩く。その道中、ハクは露店商が売っているネックレスを見つけた。青く光る、一見宝石のようにも見える大きな石が付いた物だった。

 

「これ、綺麗だね!………そうだ、お揃いにしようよ!僕がミシェルにプレゼントするよ!」

 

「………本当?ありがとうハク。これ、大事にするね」

 

 金貨一枚(約一万円)という、ネックレスにしてはやや高めの値段。しかしハクは一切躊躇することなくそれを支払った。

 

「まいどあり!末長く仲良くしろよ!」

 

 2人を恋人だと思った気の良い露店商の男が、そう茶化すように声を掛けた。それに対しハクは素直に返事をし、ミシェルは恥ずかしそうに少し顔を赤らめる。

 

「はい!」

 

「あっ………はい………」

 

 そしてミシェルはこの礼をしようと、昼御飯を少し高めのレストランで奢ってあげることにした。きっと彼は舌鼓を打ってくれるだろうと期待する。

 

「ハク、お昼ご飯………良いお店があるんだけど、行かない?」

 

 デートが突発的に決まって良かった、とミシェルは思った。きっと事前に決まっていれば2人とも張り切って、それぞれ2人分の弁当を作ってきてしまうだろうからだ。流石に2人分の弁当を一人で食べることはできないので、助かったと言えるだろう。

 

 

 そして入ったレストランを見たハクは、子供のように目をキラキラさせて店内を見渡す。

 

「ほらハク、行くよ」

 

「あっ、うん!」

 

 ミシェルに手を引かれ、席に座る。内装も豪華で、明らかに高級レストランといった赴きだ。他の客を見てみても、見た目からも明らかな貴族が多かった。品格のある座り姿が印象的だった。

 

「えっと………この牛ヒレの卵とじを下さい」

 

「私は………白身魚のスープ煮を下さい」

 

 名前だけ見れば、普通の料理。たが驚くなかれ。その料理には、随所に料理人のこだわりが詰められているのだ。

 

 ましてやこの世界の文明レベルは、15世紀ほど。その観点から見れば、実に上等な料理であった。

 

 店員が彼らの料理を持ってきてくれた。そのきらびやかさに、2人は思わず生唾を飲み込む。

 

「「いただきます!」」

 

 2人は行儀良く食べ始めた。ハクは一口料理を食べた途端、幸せ一杯の顔になった。今にも昇天しそうな雰囲気すら感じさせるほどに。

 

「ん~!美味しい!」

 

「あぁ………うまぁ………でもミシェルのご飯の方がむぐっ」

 

「こらっ!お店の中でそんなこと言ってはいけません!作ってくれた人に失礼だよ!」

 

「ごめんなさい………」

 

 思わずとんでもなく失礼な発言をしそうになったハクを叱ったミシェルは、その後ニコリと笑いかける。その笑みをハクも返した。

 

 

 そして2人は十二分に料理を堪能し、食後の紅茶を嗜む。貴族になったような気分に浸り、雰囲気を楽しんだ。

 

 そして店を出ると、突然1人の青年がミシェルに話し掛けてきた。身長170後半くらいの、青みがかった白い髪の男。

 

「こんにちは、綺麗なお嬢さん。今日は実に良い天気だ。僕とこれからお茶でもしませんか?」

 

 ナンパであった。ハクもミシェルも混乱しており、上手く言葉が出てこなかった。

 

「あの………ごめんなさい。お気持ちは嬉しいのですが、今は彼とデート中で」

 

「おや、そうですか。これは失礼。では楽しんで!」

 

 去り際にスッと手を上げ、クールに去っていく。随分と紳士的なナンパもいたものだ、と2人は感心すら覚えた。

 

 

 そして2人は再び町をのんびりと歩いていく。その道中でミシェルがあっ、と何かに気づいた声を出した。

 

「治癒と魔力回復のポーション、ちょっと量が心もと無いなぁ………必要な分だけ買おうか?」

 

「それが一番だね。じゃあ早速行こうか」

 

 そして2人は治癒と魔力回復のポーションを合計40本買う。このままだと重いため、ハクのテレポートでポーションを家に送った。

 

 ミシェルとハクは 再びショッピングに勤しんでいた。 商店街を抜け、少しばかり高級な店が立ち並ぶ場所に来ていた。

 

 そこではオシャレをした貴族達が至るところにおり、店の扉の前に店員が待機しているなど、先ほどいた場所はいわゆる庶民向けの店ばかりだったので、その雰囲気の違いに圧倒されていた。

 

「す、凄い………」

 

「どのお店に入る?………あ、この服可愛い!ねえハク、ここにしない?」

 

「いいよ!入ろう!」

 

 2人はアパレルショップに入り、ミシェルの服を選んでいく。

 

「これどうかな?似合うかな」

 

「うん!ミシェルに凄くあってる!」

 

「これは?」

 

「似合う!かっこいい!」

 

「じゃあ………これは?」

 

「凄くかわいい!」

 

 ミシェルが選んだ服全てを似合う似合うと褒めそやすハクに、彼女は苦笑いを浮かべる。落ち着いた大人の服、騎士の正装の服、可愛いワンピースなど、それぞれ違うコンセプトの服を選んでいた。

 

「困ったなあ………あの、店員さん。この3つの中で、どれが私に一番似合うと思いますか?」

 

「………うーん、そうですねぇ………この黒い服はどうですか?」

 

 最初に選んだ落ち着いたコンセプトの服を、店員はセレクトした。

 

「じゃあ、これ下さい!」

 

「お買い上げありがとうございます」

 

 そしてホクホク顔で店を出る2人は、次はどこへ行こうかと相談した。

 

 

 ◆◇◆◇◆◇

 

 

 ミシェルとハクのデート中に、街中(まちなか)に設置されている拡声魔法器スピーカーのようなものから、緊迫した声が響き渡る。

 

「緊急召集っ!!!この街にいる冒険者の皆さんは、すぐにギルドに集合してください!!!」

 

 そう言われては、ショッピングを打ち切らざるをえない。

 

 2人はすぐに転移魔法でギルドに飛んだ。

 

 

「こんにちは!一体何が………」

 

「皆さん!良く聞いてください!魔王軍の小隊がこの街に現れました!!!今現在より、全てのクエストの受付を停止いたします!王国騎士団がすでに戦闘に向かっているので、加勢してください!数は把握できているだけでも500を越えます!」

 

「まさか、魔王軍じゃ………」

 

「………うん、どうやら魔王軍みたい………私、どうしてれば………」

 

 その時、遠くで爆発音がした。すぐにその場にいた冒険者全員が建物から出て、迎え撃つ準備を整える。魔族は通常の人間よりもはるかに強く、危険視されている。ましてや魔王軍に所属しているとなれば、その力は強大だ。一般兵1人ですら、D級冒険者2人分と同等の強さを誇るとされている。

 

 ハクは戦う力を持たないミシェルを守りながら戦わねばならない。手詰まりというほどではないものの、緊迫した状況であることには変わりなかった。

 

 ◆◇◆◇◆◇

 

 魔王軍に属する魔族が、500体。普通の冒険者なら絶望するような状況だろう。しかしここには、ハクやアイン、それにユリカがいる。この3人がいれば何とかなるかもしれない。

 

 彼らは外に出て、街中で暴れまわる魔王軍と交戦する。

 

「くたばれっ!ハアアアア!!!」

  

 ユリカの大剣が黒く光ると、絶大な威力を持った一撃となって5体を吹き飛ばした。そして次々と魔族の身体を両断していく。

 

 アインもまた、氷柱で心臓を串刺しにしたり、冷気を流し込んで凍死させる、などの戦法を使って効率よく魔族を倒していた。範囲攻撃を使いたいところだが、まだ避難が完了していない住民や冒険者に危害を加えるわけにはいかない。

 

 

 一方ハクはミシェルを後ろに据えながら、魔族相手に無双の限りを尽くしていた。操り方が上手くなった黄金の魔力を鞭のように伸ばして敵をからめとり宙に持ち上げ、魔力の光線を発射して消し飛ばす。

 


 

 ◆◇◆◇◆◇

 

 同時刻、冒険者ギルドに白蓮が現れた。

 

「………おや、依頼の紙が無いようだけど………」

 

 珍しい出来事も起きるものだ、と彼は状況を飲み込み、その理由を尋ねようと受付嬢に話し掛ける。

 

「ねえ、クエストボードに依頼の紙が無いんだけど………何か緊急事態でもあったのかい?」

 

「………えっ、あっ!あなたは………《万象》の白蓮さんっ!?」

 

「はい。で、何かあったのかな?」

 

「は、はい!実は魔王軍が現れて………あの、何とかしていただけないでしょうか!?もちろん、それ相応の報酬はお支払いします!」

 

「ああ。承った。ちなみに報酬は不要だ。僕はお金の為にやっているわけではないからね。人に刃を向ける者達から、人々を守る。それが僕の使命だ」 

 

 そう言った白蓮は、一瞬でその場から姿を消した。

 

 

 

 そして街中へ出た白蓮に、上級魔族やモンスター達が目をつける。格好の獲物だ、と言わんばかりの表情だ。

 

 ヴァンパイアロードにデーモンキング、キングミノタウロスが魔王の力により強化された個体であるキングミノタウロス・アビス………などなど、モンスターの中でも特に危険な個体ばかりが勢揃いしていた。

 

 一体だけでもAランクの冒険者と同等の強さを誇る個体が20体もいる。Sランクのいる町だからと警戒されていたのだろうか、相当な念の入れようであった。

 

「グハハハハ!!!小さき虫め!覚悟するが良い!」

 

「人を虫呼ばわりするのは気分が悪いね。君達の交戦の意思は受け取った。僕は白蓮。Sランクの冒険者にして、万象の二つ名を授かっているよ」

 

 そう名乗った途端、魔族達は狼狽し始めた。

 

「万象だと!?」

 

「狼狽えるな!いくら奴だろうとこの数を相手にできるはずもない!やってしまえ!」

 

「「「うおおおおおおお!!!」」」

 

 取り囲み、一斉に白蓮の元へと突っ込んでいく。遠距離攻撃を出来る個体は各々の攻撃を繰り出した。

 

「………やはり戦いは避けられないか」

 

 白蓮が指を鳴らしたその瞬間。魔族が放った攻撃は味方へと曲がり直撃したり、心臓辺りを抑えて苦しみだした後絶命し、突然ブレーカーが落ちたように倒れ、死に至る魔族も。

 

「くそっ、どうなってやがる………!」

 

「俺達精鋭部隊を触れもせず………何なんだお前はっ………!」

 

「悪いが、君達の力では僕に触れることすら叶わないよ」

 

 その言葉に激昂した生き残りの魔族が、全力の攻撃を放つ。

 

 赤黒いブレス、巨大な火の球、斧を振り回しての近接攻撃などを一斉に白蓮に向けて放つ。

 

「悪いが僕には通用しない」

 

 目を閉じた白蓮を見て魔族達は勝機を確信したが、攻撃は彼の周囲1mのところで不可視の障壁に阻まれ、霧散した。近接攻撃を仕掛けた魔族は突然身体が爆発するように弾けた。それと同時に、連鎖するように魔族達の身体が弾け勝負は決した。

 

「………主戦力をたかが1人にこんなに割くとは………もしかして魔王はバカなのかな?」

 

 彼が指を鳴らすと、汚れがまるで元から無かったかのごとく消え去った。

 

「さあ、後は残党狩りかな」

 

 冒険者にはAランクからランキングがつく。それは半年毎に変わるが、彼は現在第2位の位置にいた。

 

 2週間後に行われる冒険者のみで行われる武闘大会、全闘戦に向けて………彼は密かに爪を研ぐ。ランキング1位にして世界最強の冒険者、《全能》のユイルを今度こそ倒すために。

 

 

 

 

 

感想、評価、お気に入り登録宜しくお願いします。かなり早いですが、ここで第1章は終了です。ここからは冒険者による武闘大会、全闘戦編が開幕です!

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