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31話 残された可能性

「………ぐ………!」

 

「こりャ、効いタねェ………」

 

 

 全員が何とか立ち上がると、ベリアルは称賛の拍手を送る。真の力を解放し本気を出した彼の前に手も足も出ない状況。だが、それでも………自分の国を守るため、敵を倒すために戦う以外に道は無い。

 

 アルレウが念力の腕を十数本伸ばして身体を拘束しようとするも、エネルギーを放出して掻き消されてしまう。そしてビーム攻撃が彼のもとに飛んでくるが、それを瞬間移動の能力でかわした。

 

 

「レーツェルさん!あの技を………!」

 

「そウダな」

 

 

 レーツェルは巨大な狼………フェンリルに変身した。そしてその巨大な口に球体の蒼い炎を生成し、チャージしていく。その炎をフォルトゥナに向かって放ち、彼はラーの目を炎に向かって発動。敵を焼き滅ぼすほどの熱量が全て炎に注がれていく。

 

 そしてフェンリルの腕でそれをレーツェルに投げ返すと、彼は口から超光熱を宿したエネルギーを発射し、それが炎球と融合しながらベリアルの元へと放たれた。

 

「「《フェンリル・フレア》!!!」」

 

 ベリアルは黒いエネルギーを自身の周囲に展開させ、自身を包み込むようにして防いだ。そして防御を解いた瞬間、彼の左腕が千切れ飛んだ。

 

「っ!?」 

 

 白蓮の手には、巨大な十字架を思わせる光の剣が握られていた。純粋な大悪魔級の者でないと防げない………つまり、半神半魔である自分には防げるかどうかわからないと判断した彼は、出来るだけ攻撃を避けることを選択した。

 

 ハクは自分の中を脈々と巡る神のエネルギーを杖の先端に集め放つも、避けられてしまう。

 

「まずは………テメェらから片付けてやるよ!」

 

 

 上空に赤黒いエネルギー球を形成させ、そこに様々な力を付与して雷撃として放つ。

 

「「「ぐあぁぁっっ!!!」」」

 

 

 アニマ、オリオン、フォルトゥナが一撃で戦闘不能になってしまった。身体の外だけでなく、内側からダメージを与えられてしまった為、最早戦闘は出来ない状態。

 

「次は………お前だ」

 

 

 指を差した先は、アルレウ。彼は侮辱されたと感じ、その端正な顔に怒りの表情を浮かべる。

 

 

「俺なら倒せるって?馬鹿にするなよ………!」

 

「アルレウさん、気をつけてくだ………」

 

「魔法しか能のないガキが!すっこんでろ!俺1人で足止めする間に………全員で戦局を変えてこい!相手はコイツだけじゃないってこと忘れるな!!!」

 

 

 

 ベリアルだけにリソースを割いていては、思わぬところから襲撃を食らい瓦解してしまう可能性がある。だからこそ、一旦彼らはバラバラに行動し、まだまだ大量にいる敵の殲滅に乗り出したのだ。

 

 

「皆、行くよ!」

 

 王城から飛び出した彼らを見届けたアルレウは、自分の周りに炎を展開させる。

 

「ここじゃやりづらいな、狭すぎる」

 

 

 炎を放ってベリアルの視界を遮ると、瓦礫だらけの場所にテレポートする。すぐに彼が追いつくことを確信した上で、戦場を変えたのだ。何より、王城を破壊するわけにはいかないという事情もあったのだが。

 

「別に逃げる気なんてないからね?勘違いすんなよ?ゴミクソが」

 

「テメェ1人でマジでやる気ってことか?そりゃ無理な話だな」

 

 

 アルレウの能力は、超能力を操るというものだった。テレパシー、発火能力(パイロキネシス)念力(サイコキネシス)、テレポート、サイコメトリー、千里眼、未来視、などなど、多岐に渡る。

 

 やろうと思えば超巨大竜巻やブリザードを起こし、雷の雨を降らせることも可能な、万能な能力だった。

 

 

 ベリアルは赤黒い雷をアルレウに向かって放つが、テレポートで避けられる。そして彼の周りが一瞬で大気ごと氷漬けにされ、絶対零度の氷の牢獄を作り上げる。だが彼の読み通りそれは簡単に破壊されてしまう。

 

 銀色の光がベリアルの手に集まると、それが複数に枝分かれして放たれる。テレポートして背後を取り、炎を纏わせた念力のムチで攻撃しようと画策する。だが、背後からの攻撃を察知していたベリアルの攻撃により、ビームがその身に迫る。

 

 テレポートで難を逃れると、周囲の瓦礫を巻き込んで強力な竜巻を発生させた。そこに更に電撃を加えてベリアルの周りを取り囲む。

 

「ハッ、サシで俺に挑むからどんなもんかと思えば………あんまガッカリさせんなよ」

 

 

 破壊神の力を使いあっという間にそれを消滅させると、今度は強力な瘴気を発生させる。

 

「チッ………!こいつ、まだこんな手を………!身体が重い………っ!」

 

「影響を受けないのは術者の俺だけだぜ。触れれば触れるほどお前の魔力を奪い取っていく………経皮毒みてえなもんだ」

 

「だったら凍らせるまでだ!調子に乗るなよクソカスが………!」

 

 指を鳴らすと瘴気が消え、そしてアルレウは再び未来視を使う。その読み通りのコースに攻撃が来たが、今度はあまりの速度故避けきれずに直撃してしまう。

 

「ぐっ………!」

 

「破壊の力を纏わせた雷撃………こいつにさっきの瘴気を混ぜてやったのさ」

 

「身体が動かな………ガハッ!?」

 

 血を吐くアルレウの身体が突如持ち上がった。全長20mほどの巨大なフェニックスが空から飛来し、脚で彼の身体を掴んだ。

 

 そして安全な場所で降ろされるとフェニックスの姿が変わった。その正体はやはりというべきか、レーツェルだった。

 

「大丈夫カ?」

 

「お前なんかに助けてもらう義理はないね、あんな奴俺1人で十分さ!」

 

「強ガりはヨせ。敵はあらかた片付ケたから、トッととアイツを倒スぞ」

 

「言われなくても分かってるさ!」 

 

 そして、ハク達も合流した。前線に復帰したアインも戦闘に参加し、ここで全てを懸ける。アルレウ、オリオン、逢魔、トロイメライは残党狩りを担当し、未だ動けないレイド、グラディウス以外でベリアルを相手にする。

 

 刹羅、白蓮、ハク、レーツェル、アイン、アニマ、フォルトゥナ。この7人に運命は託された。

 

 

「何度やっても無駄だぜ、とっとと諦めりゃまだ救いがあんのによ」

 

「絶対に倒してみせる!」 

 

「我が国を傷つけた報い、受けてもらうぞ………!」

 

 

 そう言いながら的確な連携で反撃の隙を与えさせずに攻撃する。

 

「チッ、概念礼装で一気に………!」

 

 地面から黒いエネルギーが突如湧き出し、一気に爆発して全員を巻き込む。吹っ飛ばされ地面に叩きつけられるも、大したダメージにはなっていないようだった。

 

「ぐあっ………」

 

「なんだこれは………!」

 

 彼らのその言葉にベリアルが余裕綽綽(しゃくしゃく)といったような態度で答える。

 

「概念礼装・爆襲(ばくしゅう)。こいつは使い勝手が良くてなあ。ククク、どう対抗する?まだまだ手札はあるぜ」

 

 ならばとアニマと白蓮は悪魔に対抗できる聖の力で攻撃し、それをサポートするかのように他の者たちは動き出す。刹羅は好きに攻撃してベリアルの集中を乱す役割を任された。

 

「虫けらどもが………抵抗しやがって!無駄無駄、全部無駄なんだよ!」

 

 黒いオーラを爆発的に増幅させると竜巻のようにそれを放出し、上空まで彼らを吹き飛ばした。そして幾百のも赤い雷撃を浴びせ、地面に叩き落とす。

 

「ぐっ!つ、強い………!」

 

「まずい、徐々に攻撃が苛烈になっている!早く手を打たないと………」

 

「どうすれば………!」

 

 レーツェルは巨大な鎖で拘束し、大きな棘がいくつも付いた像に彼を閉じ込めた。そしてフォルトゥナのラーの目で像は真っ赤に燃え上がり、激しく炎が上がる。

 

「《アイアン・メイデン・フレイム》!これなら逃げられないでしょう!」

 

「中々やるもんだなァ」

 

 破壊のオーラが漏れ出ると共にそれが破壊されると、ベリアルは翼を生やして空へと飛びさろうとした。

 

「まずい、逃げるつもりか!させないよ!」

 

「テメエの力は神には通用しねえ!良い加減理解しろよ!」

 

 白蓮は彼を飛べなくさせようとするも、ベリアルがすぐに破壊のオーラを身に纏い因果改変を防がれ、逆に攻撃を浴びて吹っ飛ばされてしまった。

 

「兄さん………!」

 

「クハハ、メインディッシュは最後に食べるのが俺の主義でなあ」

 

「あっ!」

 

 ハクは突如足元から展開された黒い障壁に閉じ込められ、出られなくなってしまう。

 

「ハク!すぐに出してやる!」

 

「相手が誰だか忘れたか?よそ見してんじゃねえよ」

 

 後ろに一瞬で移動すると、黄金のオーラを纏った蹴りで彼を吹き飛ばす。アインは壁に激突しうめいて動けなくなってしまった。

 

「バカな、彼を一撃で………!?」

 

 

 

 

 

 

 

「もう遊びは終わりにしてやる。………グ、ガガ………!グオオオオオオオァァッァァァァァァァァッッッ!!!!!!!!!!!!!」

 

 雄叫びを上げ始めたと思えば、更に彼の身体が変化していく。白と黒の光が彼の身体を包み、混ざり合い彼をバケモノへと変えていく。

 

 強さだけを求め続け、自分自身すら捨てた男の末路………と言えば聞こえは良いかもしれない。だが彼も余裕そうに見えて、最後の手段を使わなければならないほどに追い詰められていたのだ。

 

 いつの間にかハクを閉じ込めていたものも解け、動けるようになっていた。

 

「兄さん………!」

 

「あの怪物がお前の兄貴か?俺にはそうは思えねえけどな」

 

「あれはもう最早………神でも魔族でもなくなっているね」

 

 涙目で杖を握りしめ、手を震わせるハクを見たレーツェルは、彼のことを思い切り殴り飛ばした。

 

「ハク!?テメェ、何してんだ………!」

 

「レーツェルさん、一体何を!?」

 

 アインとフォルトゥナが抗議の声を上げるも、レーツェルは憮然とした表情でハクに語り掛ける。

 

「覚悟を決めロ、クソガキ。今ここデアイツを殺サないト、多分大陸が沈ム。最悪理性すら失ナって、世界を滅ぼシカねないゼ」

 

 怪物のようになったその身体からは、神力と悪魔の力の密度が限界を超えた末に結晶のような状態で身体から突き出ており、まさに異形と言える。

 

「一切の容赦はしないぜ。ここからだ………!」

 

 一瞬で空高く身体を浮かせたかと思うと、白と黒のエネルギーを1つにしたものを地面に向けて発射した。眩い光と共に爆裂し、全員が吹き飛ばされ大ダメージを負ってしまった。

 

「今までとは比較にならないほどの威力だ………!」

 

「………クソ、動け………ねえ………!」

 

 直前の戦闘のダメージが尾を引いたのか、アイン、アニマ、そして刹羅までもが動けなくなってしまった。力を使い果たしてしまった時に追撃のようにダメージを受けてしまったため、先頭の続行が不可能になってしまったのだ。

 

「ハア、ハア………!ダメだ、守り切るのに力を使い過ぎた………長時間戦闘する余力が残っていない!」

 

「俺モ、正直後4回が限度カも………しれナイ」

 

「ぐうっ………!」

 

 白蓮までもが膝を着き、息を荒くしていた。戦いが長引けば長引くほどに力を奪われていき、その上圧倒的な攻撃から身を守るために防御にリソースを割かなければならない現状が仇となり、消耗が激しくなってしまったのだ。

 

 だがハクだけは力を奪われずに済んでいる。彼の取り戻した力をベリアルが無理に奪おうとすれば、それは彼の身体にある悪魔の力を浄化させてしまい、ベリアルが瞬く間に弱体化することになりかねないからだ。

 

「そ、そんな………僕1人で、今の兄さんの相手を………!?そ、そんなの無理だよ………僕に、出来ないよ………!」

 

 そう言いながらハクは杖を落としてしまい、四肢を付いて目の前の惨状を茫然と見つめる。それに待ったをかけるのは、レーツェルだった。

 

「なラ諦めルか?………今ノ言葉、もう一度言ったラお前をブチ殺ス」

 

「………レーツェル、さん………」

 

「ハク君!!!君だけが今まともに戦えるんだ!諦めるようなことを言うな!!!!!」

 

 白蓮が血を吐きながら立ち上がり、そう叫ぶ。その言葉に気圧され、彼は再び杖を手に取り立ち上がった。

 

「怖いなら僕達がそばにいます。だから、戦おう」

 

「………はい!」

 

 

 

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