第一話 はじまり
「はあ…」
ため息をつきながら僕は街を歩く。
僕の名前はオーディナリー・パーソン。どこにでもいそうな男だ。
最近まではただのニートだったのだが…
「オーディナリー!いい加減に働きなさい!」
と母さんにキレられて、今は仕事を探している身だ。
あと2年は行けると思ったんだけどなぁ…
そんなことを考えながら歩いていた。
「ようオーディナリ!」
そうしていたら僕の良き相談役と出会った。
彼の名前はフレンディー・ソップ、喫茶店ブレンディーの店主だ。
「フレンディーさん!ぎっくり腰で魔法治療医院で治療をしていたんじゃあ…」
「こっそり抜け出してきたんだよ、店の営業しねえと店がつぶれるからな、おかげで腰がいてえよ…いてて」
「大丈夫ですか!」
「心配すんな、少し腰が痛くなっただけだ…あぁクソ…!」
そういいながらフレンディーさんは自身の店に向かって歩く。
「肩担ぎますよ」
「ああ…助かる」
そうして肩を担ぎながら喫茶店ブレンディーに着き、一息つく。
「助かったよ…無茶するんじゃなかったな…はぁ…はぁ…」
「次からは無茶しないでくださいよ…ゼェ…ゼェ…」
店の中でそんな話をしている時にフレンディーさんから質問がくる。
「ところでオーディナリー、お前あんなところで何してたんだ?」
「え?仕事探しですよ、母に働けって怒られて…」
「なるほど…確かにお前んちの母さんコワそうだもんな、ハハハ!!」
「そんな笑わないでくださいよ」
少しイラつき、フレンディーさんにすこし笑いを止めるよう促す。
「わりいわりい!少し面白かったもんでよぉ!」
「そうそう仕事だろ?仕事だったら紹介できるぜ」
「あなたに紹介できる仕事なんてあったんですね」
仕返しといわんばかりに嫌味を言う。
「まあまあそんなこと言うなよ。ちゃんとした仕事だぜ?」
「本当ですか?」
「ああ、貴族の家の執事だぜ?リッチ家は知ってるだろ?」
「知ってますよ、あの有名貴族でしょ?僕にそんなところの執事の仕事を紹介しないでくださいよ」
リッチ家は貴族の中の貴族であり、かなり大きい領地を持ちそれでいてまだ金を持っているという貴族のお手本みたいな連中だ。それゆえ下っ端執事になるだけでも大変であり、僕がそこの執事になるなんて到底無理な話だ。
「そういうなって、俺がいいこと教えてやるよ」
「いいこと?」
「そうだ、実は俺、そこの推薦状を持ってる」
あまりに突然のことだったため、驚けず、口をポカーンと開けたまま困惑していた。
「へへ、驚いてんだろ?入手した方法は秘密だけどな、くれてやるよ」
「い…いいんですか?」
フレンディーさんが今手にしているのは、売り飛ばせば100万ゴルド(金の単位)はくだらない執事推薦状。それをただでやると、フレンディーさんは言っている。
「気でも狂ったんですか?それを売れば100万ゴルドはくだらないんですよ!!」
「オーディナリー、お前は俺のコーヒーの淹れ方だとか、掃除の仕方だとか、そんなのをずっと聞き続けていただろ?だから俺はお前にこいつをお前にやるっつってんだ、大丈夫だ、お前ならできる」
僕はこの人に将来絶対役に立つといわれコーヒーの淹れ方や掃除の仕方などを10歳のころから教えられていた、しかしこの人の指導受けただけでリッチ家の執事になれるとは到底思えない。
「でも…」
「絶対に大丈夫だ、俺を信じろ」
そういわれ、僕は推薦状を押し付けられるような形で渡された。
「…わかりました、頑張ってきます!」
そういい、僕は自分の家に帰る、絶対にその推薦状を無駄にしないという決意をもって。
数日後
「ついにこの日が来てしまったか…」
今僕は自分が住んでいた王都キャオスのアルファストリートの対角線に存在する別のストリート、オメガストリートのリッチ家の前に来ている。来てすぐに見えたのはエラソーな奴や、嫌味を言ってきそうなやつばかりの行列であった。
「要件をお申し付けください」
並ぼうとした瞬間、リッチ家の騎士と思われる人にそう言われる。
「執事の募集があると聞いたので来たのですが…」
「それでは100万ゴルドか、推薦状をお渡しください」
そう言われ、僕は推薦状を渡す。
「これは…!ありがとうございます、それではあちらの列に並んでください」
中身を確認した後、兵士はそう言い、また元の仕事に戻っていった。
そうして、僕が列で待っていると
「それでは時間になりましたので、面接を開始します、一人目のお方はお越しください」
そう執事らしき人が言うと列の一番目の人が屋敷の中に入っていく。ようやく面接が始まったのかと安心のような、不安のような気持ちになる。
そして自分の順番が来て、僕は屋敷のドアを開ける。
続く…