ダンジョン経営は順調です?
みじかめ
あれから1週間もしないうちに冒険者が来るようになった。俺の目から見ても初心者だと分かる彼らは迷宮区の浅い方でスライムやゴブリンを狩り、設置された罠を解除して帰っていく。どうやってこのダンジョンを知ったのかは分からないが、このダンジョンは初心者の練習用ダンジョンとして認知されているらしい。
「マスター、今日の侵入者は18名でした。また増えましたね。」
可愛い…。いや、そうじゃない。そろそろ暗黒魔狼王にも慣れないといけないだろ。
「ああ、獲得出来るDPも右肩上がりだな。今日は800DPくらいだったよな。」
「はい。倒された魔物や罠の修理代を差し引いても黒字ですね。」
1週間の間に新たな魔物を追加した。迷宮の浅い層には10DPで召喚できるゴブリン、深い層には100DPで召喚できるオークだ。
ゴブリンの恩恵スキルについてはスライムと同じで、ほとんどがステータス強化系のスキルだった。あまり多くは召喚していないためレアスキルは2体で、投擲と初級回復魔法だ。
投擲はものを投げた時の命中率と威力が向上、初級回復魔法は浅い切り傷程度を治すといったものだ。この2体は割と使えそうなため深い層でオークと共に行動させている。
オークの恩恵スキルはスライムやゴブリンと違い、ステータス強化系スキルの割合が半分程に減った。その代わりに出てきたスキルが武器スキルと呼ばれる種類のものだ。剣や棍棒、斧などのスキルがあり、その武器の使用時に補正が掛かるスキルだ。武器は1番安いものでも100DPほどするが一応スキル保持者分は購入した。
残りDPは4万程あるが、近いうちにダンジョン外調査をしたいからなるべく残しておきたい。
「順調だな!更に発展させるには中堅以降の冒険者を呼ぶことになるだろうが、流石にそれだと攻略される可能性が出てくるからな。しばらくは少しずつDPを貯めるしかないか。」
「魔王様、宝箱を設置するのがおすすめですよ。初心者相手なら初級ポーション類を入れておけば、わらわらと虫のように集まって来るはずです。」
黒い笑みを浮かべているが手のひらサイズの幼女がしても怖くないんだよな…
「初級ポーションなら20DPで買えるやつだよな。それなら十分ありだな。浅い方に1つ、深い方に2つぐらい設置してみるか。」
◇
〈ダンジョン第2層ボスの間〉
「あなた達の力はそんなものですか!?立ちなさい。マスターの配下を名乗るのであれば、それ相応の力を示しなさい!」
豚頭の巨体が木の葉のように吹き飛ばされ、遠距離から投擲する礫は弾き返され、発射元であるゴブリンの体に命中する。一人、また一人と倒れていく。死屍累々、そんな言葉が思い浮かぶ景色だ。
思いつきでやってみたけど、悲惨な状況になったなぁ。暗黒魔狼王舐めてたわ。何がやばいって戦闘になった瞬間から人が変わったように暴れまわってるぞ。そろそろ止めた方が…って言ったらすごい顔で「マスターは黙っていて下さい。」って言われた…怖くて何も言えないわ。
結局、全員が気を失うまで行われた。
オークやゴブリンたちには申し訳ないが、定期的にやることにする。効果がてきめん過ぎるからしょうがない。
経験値は基本的に相手を倒すことで得る。鍛錬等の効率はあまり良くない(フェアペディア情報)はずだが鍛錬の度合いが激しかったからか、命の危険があったからかは分からないが参加した殆どの魔物のレベルが5~10くらいまで上がったのだ。もちろんレベルが低く、必要経験値が少ないことも要因だろうが鍛錬効果は凄まじい。
「おつかれ、暗黒魔狼王。スポーツドリンクがDPで買えたけど飲むか?」
そう、買えたのだ。現世のものが。
スポドリは有名なメーカーのもので、味も全く同じだった。どういう仕組みなのかは知らないが嬉しい誤算だ。それ以外でも、日用雑貨などはほとんど揃う。家電なんかもカタログに載っていたがDPの桁がぶっ飛んでいたため今は関係ない。
「ありがとうございます、マスター。それと、先程はすみませんでした。戦闘となると夢中になってしまい、マスターにあの様な失礼な態度を…」
顔面蒼白にして謝罪をしてくるが、大袈裟だなぁ。
「気にしなくて良いぞ、戦闘に関して夢中になることは悪いことじゃない。それに、あの鍛錬のお陰で魔物達のレベルも上がったしな。それでも気が済まないっていうなら、また鍛錬をする予定だからその時もしっかりやってくれ。」
「…はい!マスター。誠心誠意お勤めを果たします!」
…流れで適当なこと言っちゃったけど、完全に火に油を注いでる。配下たちの冥福を祈っておこう。
今回鍛錬を受けていたのは武器スキルを持つオークとレアスキルのゴブリンで作ったパーティだ。オークはある程度の知能を持っているようでそれなりの連帯ができるようになった。ゴブリンはバカだが、言葉は分かるようなので「遠くから石を投げろ」と「怪我人を治せ」という命令を出している。
このパーティは既に何度か冒険者とも戦い、危なげなく追い返していた。暗黒魔狼王を抜いた今の最大戦力だ。
そろそろ、ダンジョン外の調査をする必要があるな。このダンジョンがどう言った扱いになっているかが気になる。それとダンジョンが出来て1週間もしないうちに冒険者が来るようになったが、どうやってダンジョンがバレたのかも調べなくてはならないだろう。
そんな事を考えていると勝手にメニューが開き、頭の中でけたたましくアラームの音がなる。
「魔王様、侵入者です!深層部まで攻略されました!!」