プラチナブロンドの美少女、来ました
「まずいなあ。どうしてあの子に会っちゃたんだろう」
バグスがぶつぶつ言っていた。
「まあ、いいか。やっと、ちゃんとした服が買えたしな。お前のために」
イチイチ「お前のために」とか強調するの、やめてもらえませんかね?
だが、戻ると、家の扉の前で、以前に会った馬女が興奮した様子で待ち構えていた。
「バグス!」
女は大声でバグスの名前を怒鳴った。
「また捕まえたわよ? 今度は女の子よ!」
よく見ると、馬女のそばに、ウチの学校の制服を着た美少女が打ちひしがれて座っていた。
「すごいわ、バグス! 大ヒットだわ!」
だが、バグスは困った表情になっていた。
今度の子はプラチナブロンドのストレートだった。制服には、1年生のバッジが付いていて、そしてまだ幼い顔立ちなのに、男子制服のボタンがはち切れんばかりの胸だった。
ああもう、これ、どうしよう……
「とりあえず、家にいれよう」
「そうよ! 入れないと……ねえ、こんなにヒットしてたら……」
馬女は声をひそめた。
「まずくない?」
プラチナブロンドが顔をあげて私を見て言った。
「あんた誰だ? うっ、美少年……」
「いや、こっちの世界に来たら、みんな美少年か美少女になるらしいから」
私はもう不愛想に答えた。
隣の居間兼食堂兼客間では、バグスと馬女がこそこそ話している。チャンスだ。
「まず、手を洗おう? あと、お茶でもどう?」
私は彼を台所に連れ込んだ。一体、どうなってるんだ?
「僕は、タクマ先輩のあとをついて行ったんです」
「タクマ先輩?」
「あ、僕、野球部なんです。スズキ・ジュンロウって言います。タクマ先輩は野球部のキャプテンで、背が高くてたくましくて僕らには憧れでした」
そのタクマ、今は美少女だけどな。
「それで?」
「僕は先輩を見かけたんで、ついて行きました」
ストーカーですね。
「先輩は、階段下の掃除用具入れの中に、えーと、場所は……」
スズキ・ジュンロウは掃除用具入れの場所を説明したがったが、私はその話をショートカットした。
「先輩が中に入って行くじゃありませんか。1時間待っても戻ってこないので、僕も入ってみることにしたんです」
ストーカーですね。
「で、このざまです。僕、どうしたらいいんでしょう」
それは私も聞きたい。
「ちなみにあなたが掃除用具入れに入っていったことを知っている人はいるの?」
「1年の野球部員全員が……」
なにか悪夢の予感がした。