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女になるのを拒否る美少女(もと男)

「バグス、あの子……」


バグスが具合悪そうに目を逸らした。


「ああ」


「もしかして! バグスが?」


「妬くな」


妬いてない!


「また、あの罠か?」


「お前だけだ。一生大事にする」」


違う! なに勘違いしてんだ。


「あいつ、いつ来た?」


「一週間前に……心配するな。お前の方がかわいい。男だし」


私は女だ! え?男好き?


「だから、譲ったんだ」


譲った? てことは奴隷なのか?

やっぱ、奴隷なのか?


「違う、違う! マルランは親友で絶対大切にするからって言うから譲ったんだ! ただ、あの美少女が……タクマって名前なんだけど……ちょっと馴染みが悪くて」


タクマ……。男か。だろうなー。制服、ズボンだもん。


「何人目なんだっ」


「やー、まだ二人だよ。でも、リリカは馴染んだし」


それは、私が男みたいな女だったからすぐ馴染んだだけの話で、フツーは、ああだ。タクマみたいに反抗するに決まってる!


「あの子と話していい?」


「ダメだ」


あわてたようにバグスは言った。


あやしい。


「タクマ!」


大声で怒鳴った。


ラクダのマルランも、服屋の羊もヤギも、全員びっくりして私を見た。

タクマも涙目の顔をこちらに向けた。




美貌は罪だ。


こっちを見られた途端に、心臓を撃ち抜かれた。


長いまつげに涙がたまっている。なんて色っぽい目元だろう。


男も女も関係ない、バグスの言った言葉は真実だ。かわいいは最強。



こっちも固まったが、向こうも固まった。


そして、徐々に顔が赤くなっていく。


「ダメだ、ダメだ!」


我に返ったらしいバグスが割り込んだ。


「あーっ、ダメだ! お前ら異世界人はキレイすぎるんだ。お似合いかもしれないが……」


「待って! ちょっと話をさせて!」


「絶対ダメだ。話なんかしたら、オレの家に帰らなくなっちゃうんだ」


「帰るから」


「ダメだよ。それで向こうの世界に戻りたがるんだ。せっかく、手に入れたのに。大きく育つまで待っているのに」


バグスがなんか、怖いこと言いだした。


「あれ、食べるつもりじゃないよね?」


私はタクマに聞いてみた。


「物理的に食べるってことじゃないと思う。童貞を卒業させてくれるとか」


「あなた、今、女ですよ?」


一応、注意した。一週間前からずっと女になるのを頑強に拒否しているのか、なかなかやるな、タクマ。私なんか初日から馴染んだのに。かわいいな。


「お前、今、かわいいなとか、思ったろ?」


「う。その顔じゃ思わない方がおかしいよ。すごい美少女だよ。それより、あんた誰? おんなじ学校だろ。制服一緒だったもん。男の子だよね? タクマさん」


「ええ?」


美少女は驚いた様子でこっちを見た。ああ、グッとくる。


「私はリリカ。女の子だったんです」


なんだろう。この違和感ありまくりの自己紹介。


タクマは私を見て赤くなった。


「オレは男なのに、今、ずんばらしい美少女になってんの。狙われまくって。だけど非力だから、抵抗できなくて、ラクダの野郎の言いなりなんだ」


「あ、今、いいこと、思いついた!」


「何? 戻れるのか?」


「制服、交換しよう。スカートあるよ。私、今ならズボンでいいし」


殴られた。


「まじめにやれ! 帰りたいんだ!」


思うに鍵はバグスが握っている。

罠を張ったのはバグスだ。

どんな罠なんだろう。


私は大人しく服を買って、バグスに連れられて帰ることにした。


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