オイデ…
頭の中に響いた声。
それは、オレを導いてくれる、天からの声。
オレの恨みを晴らしてくれる、
たった一つの鍵…
さあ、扉を開けよう。
オレの恨みを…
晴らして…っ!!
不思議な声によって導かれてきた、あるサイト。
そこに書いてあるのは、メールアドレス。
その説明書きを読んだ。
[このアドレス宛てに消してほしい人の名前を書いて送れば
その人はいなくなります]
え…
いなくなる?
最後に小さく書いてあった。
[この世から…]
それでもいい…
もうどうでもいい…
弟なんていらないっ!
こんな弟なんか…
愛を奪った弟なんか…
イラナイッ!!!
『オイデ…』
「今行くよ…」
そこを見つけるのは簡単だった。
このあたりでただ一つの幼稚園。
そこで、親が迎えに来た時、子供の名前を、アナウンスで呼ぶのだ。
来た…
母さんが。
「大村卓也君〜。お母さんが…
え…
うそ…
だろ…
オレと…
同じ名前…
母さん…
茂みの中から見上げる。
懐かしい、母さんの顔。
そして…
幸せそうに笑う…
「大村卓也」っ…
《ユルサナイ…》
頭の中で響く、声。
この間の声とは違う…
怒り狂った…
自分の声。
件名
本文 大村卓也を殺してください。
送信
「やった…」
やった…
消した…
憎かった弟…
愛を奪った
オレの弟を…!!
「サヨナラ…
…くっはははは…
…はっははははは!!!!」
オレからの罰だ…
報いを受けろ…
いい気味だ!!!
「話を聞いて…。」
オレはよく家に行くようになった。
気がついたら、足が動いていた。
弟は…まだいるらしい。
「…記憶が…なかったんだ…」
母さんの話…は…こうだ…
母さんは、弟の病気にショックを受けて、そのショックの大きさから、記憶障害になった。
父さんと弟は、一緒に居たから思い出した。
でも、オレはいなかった。
記憶障害になったとき、オレはもうすでにいなかったのだ。
いなかったから、思い出せなかった。
でも、『子供に《卓也》という名前をつけたい』という記憶…
いや、願いは覚えていた。
それで、弟は「卓也」になった。
役所にそれを出してから、父さんは気付いたらしい。
「父さん…昔っから忘れっぽくて…さ…
すぐなくしものするんだ…昔っから…うっ…」
泣いた…
涙があふれてきた…
しょうがないじゃん…
しょうがなかったんだよ…っ!
だれも責められない…
《責められるのは、自分だけ…だね?》
え…
あ…
「ど…うしよ…
どうしよう…っ!」
殺してしまう!
何の罪もない人を…
殺してしまうよっ!!
「あのっ、たく…
オレの弟は、今どこ!?」
「えっ、え?よ、幼稚園だと…
最後まで聞かずに飛び出した。
心の中でアイツに話しかけた。
《あのメール、取り消して!たのむよ!オレの勘違いだったんだ!!》
『一度送ッタメールハ、削除デキナイ…』
「やだよっ…頼むよ!!」
言葉に出していた。
ナンノツミモナイヒトヲ
コロシテシマウマエニ!!
「卓也っ!!!!」
シンダ…
死んだ…
弟は…
死んだ…っ!?
「急にせきが出て、止まらなくなったの…
発作が起きて…ぜんそく持ちだったのよ…そしてすぐに…うっ…うぅ…」
先生は泣きながら話した。
目の前には
動かなくなった
オトウト…
「うわあああああああああああああああ!!!!!!!!!」
運命はきまっていた。
このことに責任を感じた少年は、
自らを包丁で…
少年は気付いていなかった。
自分も
「大村卓也」
だということを…
〜完〜
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