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ハニワまつり

作者: 木倉兵馬

 日本、某県X町。人口五千人程度の町。Y地区の人々は、いつも祭りを楽しみにしている。

 二〇一六年、八月八日、午後三時。今年も「ハニワまつり」が始まった。

「ハニワ! ハニワ! ハニワ! ハニワ! ハニワ!」

 町の人々はハニワの御輿を威勢よく担ぎ、Y地区を練り歩く。

 掛け声は「ハニワ!」のみ。この時間、この場所で許された言葉はそれだけである。

 二時間ほど地区内を練り歩いたあと、御輿はY地区の歴史ある神社、土師神社へと向かう。

「ハニワ! ハニワ! ハニワ! ハニワ! ハニワ!」

 御輿は境内でひたすらに回転する。グルグルグルリ。人々も御輿の周囲を駆け、回る。グルグルグルリ。

 威勢のよい声が響く。テンポが速くなる。どんどん、どんどん。回る速度も。走る速度も。

 虎がバターになるようなスピードで人々は駆け、回る。そして叫ぶ。

「ハニワ! ハニワ! ハニワ! ハニワ! ハニワ!」

「ハニワまつり」の由来は知られていない。けれども、これが神聖な祭りであることは確かだ。何故か?

 おお、見よ! 回転が止まった。いや見るべきはそこではない。人々を見よ、今変身する人々を見よ!

 人は変わった。ハニワへと変わった。誰も動かない。ハニワだから。

「ハニワまつり」はこれで終わる。いや、あと一日は続くと考える研究者もいる。

 とまれ、祭りののち、静かな、死を感じるほど静かな一日が過ぎたあと、Y地区は再び動き出す。

 ハニワは人間へと戻り、人間は生業へと戻る。

 八百屋には野菜が並び、肉屋には肉が並び、魚屋には魚が並ぶ。

 決して八百屋に肉が並び、肉屋に魚が並び、魚屋に野菜が並ぶことはない。

 それが平穏というものだ。


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