古都の不思議物語
私は、古い街と呼ばれる所に住んでいる。
古い街とはどんな街かを具体的に説明すると。
同級生のお家は、景観保護条例に引っかかり外装のリニューアルが難しいと嘆いていたり。
宅地予定だった場所が数年以上放置され、挙げ句に周りをぐるりと鉄条網で覆われ、「この土地は文化財保護課の管轄地です」という立て札が立つような街だ。
こういう街に住んでいると、不思議なものをよく見かける。
靴が片方落ちていた。
子供の靴だ。
ここは、住宅地の生活道。
親御さんが子供を車に乗せる時に道に落としたのだろう。
納得できた。
靴のソールが落ちていた。
しかも一枚べろりと。
不思議だ。
踵が取れる事は、たまにある。だけど、ソールは自然には落ちないと思う。
想像する。
歩いているあいだにソールがはがれ、べろんべろんして歩きにくい。
ここはバス停を降りた人が通勤に使うような生活道。
靴は後で捨てるつもりで、ソールだけ剥がしたのだろう。
そういう短気な人もいるかも知れない。
納得できた。
靴が片方落ちていた。
大人の靴だ。
不思議だ。
ちゃんと上を向いて、まるで脱いだように落ちていた。
ここは、公園に近い生活道。
犬の散歩をする人も多い。
古い街には、モラルが足りない飼い主も多いのか。これには景観保護条例は適応できないのか。
文化財保護課よ、あなたの管轄地のすぐ側なのに。
私が踏んだわけではないが。
犬のうんこがついた靴をそれ以上履いていられなかった人の事を思うと、胸が痛い。
靴が落ちていた。
私の靴だ。
ここは駅の階段。
雪の日に手すりに捕まりながら階段を下りていた私は滑った。
転んだ拍子に脱げてしまった私の靴だ。
それは階段から転げ落ち、人々の失笑を誘った。
私は冷たい雪を踏みしめて靴を取りに行った。
拾ってくれた人の優しさが身にしみた。
「何故、雪の日に脱げやすい靴を履いてるのかが一番不思議やわ」
友人が告げた。
古都の人間は、雪にはあまり慣れていない。
しまった。
別に古い街が舞台じゃなくても良かったのか。




