節約と上質が結びつかないわけでもない
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次回の更新は、1/2です。
一日目の探索は、これにて終了。
明日は今日見つけた洞窟に行って、破壊神に纏わる手がかりを探すことになった。
レグルスくん達が書き留めてくれたメモだけど、見れば見るほど絵と文字が一体化しているように思える。
例えば四角い石板があったとして、大きくドラゴンの頭が書かれているとすれば、その横に神聖文字の綴りで「ドラ」、その下に「ゴン」という神聖文字の綴りを書き、先のドラゴンの頭とセットで“ドラゴン”と読ませるというのか。
こういう文字って前世だと古代マヤ文明にあって、古典マヤ語とか言われてた……はず。
まあ、答えはノエくんに聞けば分かるだろう。
今日で王城にいる彼らも、マルフィーザ滞在二日目。
明日の夕方帰国予定だから、明後日には合流出来るだろう。
本日は河原でキャンプ予定。
思いのほか早く人探しの方が片付いたので、もう一つの目的であるアルチーナの谷へと足を延ばすことに。
この谷、現在はチョロチョロの小川が流れているんだけど、大昔はかなり深くて大きな川が流れていたらしく、時間をかけて対岸の地層が露出したらしい。そのお蔭で古生物の化石が掘り出されることなく、沢山残ったそうだ。
今も採掘出来るならすれば? って感じで放置されてるのは、掘り出したところで魔化石だったらいいけど、スケルトン系モンスターになってたら、採掘者の方が彼等の仲間入りを果たすからだったり。怖いね。
ラーラ先生からそんな説明を聞いて、反応が二手に分かれた。
「えぇ……スケルトンはちょっと……」
嫌な顔したのは私。私の言葉に青褪めつつ頷くニルスさんと爺やさん。それに対してレグルスくんや奏くん紡くんは「スケルトンなら殴ったら終わりじゃん」って感じ。
でもまあ、レグルスくんも紡くんもおめめがキラキラなんだ。それなら古生物のスケルトンくらい殴るよ。イニシャルGよりはきっと叩きやすいはず。
それに魔化石が出たら、ニルスさんの軍資金にもなる。
どんなに立派な志があったとしたって、食ってけなきゃ続かないんだ。武士は食わねど高楊枝なんて、本人は良くても家族は良くない。
ニルスさんの場合はユレンシェーナ伯爵家を支えてくれる領民を食わさなきゃ、彼の家自体が危うくなるんだ。
些少でも持って帰れる魔化石を!
そういうわけで採掘開始。いうて私達は素人なので小川の岸から、まずノジュールっていうのを探し始める。
ノジュールっていうのは団塊とかコンクリーションとも言い、堆積物や堆積岩の中の珪素や炭酸塩等化石や鉱物を核として固まった塊だったかな? 要は化石か鉱物が中にある塊のこと。
普通の石と見分けを付けるって、素人には無理な気がする。でもこっちにはヴィクトルさんがいるからね。
大きな塊や石を見つけてはヴィクトルさんに見せに行く。それで化石が入ってるか入ってないか見てもらうんだけど、これがなかなか。
対岸に聳えている壁のような地層には、何やらすごく長い触覚を持った巨大な蝦蛄っぽい化石や、長い巻貝からイカのげそが出てる化石とかが見える。
対岸の私達から見えるんだから、凄く大きいんだ。
そういう物を見ながら、私もレグルスくんも奏くん紡くんもニルスさんも爺やさんも、それぞれ両手の指の数ほどノジュールを集める。
ヴィクトルさんには何かが入っているのは確実だけど、何が入っているかは開けるまで分からない程度に視てもらった。
それから日も暮れて来たので、今日はここでお休み。
持って来た小さな模型を空に放り投げると、地面につく頃には大きな、それこそ大人も子供も十人ほどは眠れる仮設住宅になった。
中は広々としていて中央の囲炉裏を囲うようにベッドがあって、そのベッドも一つずつカーテンで仕切ってある。
更にこのベッド、防音仕様になっていて、カーテンを閉めてしまえば中の音は外に漏れない優れモノ。
ソーニャさんから今年のお正月に貰った冒険セットの一つだけど、本当に凄い。
中央にある囲炉裏に火を起こして、備え付けの大鍋に水を入れて吊るす。火力は魔力で調整できるから、調理も出来るのだ。
火にかけた鍋に、今年も料理長がリュウモドキの燻製肉で作ってくれたペミカンを放り込む。
料理長が準備してくれたのはそれだけじゃなく、リュウモドキのハムやクルミパン。溶かしてパンに塗れるチーズやザワークラウト、炉端で焼けるように玉ねぎやキノコを串に刺したもの、オマケにマシュマロとビスケットもあって。
ハムやチーズ、ザワークラウトはニルスさんも解ったみたいだけど、野菜串を見て首を傾げる。
「あの、閣下は普段の食事はどんなものを?」
「うん? 料理長が色々作ってくれてますよ」
その答えにニルスさんがきょとんとした。私もだけど。
爺やさんが私達の様子を見て、あわあわと口を挟んだ。
「あの、ルマーニュ王国では麒凰帝国の貴族の食卓は非常に華美だと伝え聞いておりまして」
「ああ、なるほど。意外に質素でビックリしたと」
「いえ、その……」
なんかこう、そういう小さなことを積み重ねて妬み嫉みを怨みに変えるプロバガンダ的なアレがあるんだな。
内心でげそッとしたけど、誤解は解いておかないと。
ひよこちゃんがニルスさんににこっと笑った。
「おうちでつかうおやさいは、おれやあにうえやかなやつむたちでそだてたんだよ。かなのおじいちゃんのげんぞうさんからおそわったり、きんじょののうかのひとにコツをきいたりしながら。マンドラゴラたちもてつだってくれるし」
「そうだぜ。ほかは知らないけど、若様んちは基本野菜はおれ達で手作りしてるぞ」
「つむ、あにでしさんとあねでしさんといっしょに、ひりょうつくってるよ!」
奏くんも紡くんも笑う。
うち、今年に入って菜園拡げたんだよね。マンドラゴラ村が大きくなったから、空飛ぶ城の中庭を改装したんだ。日当たりがいいから、結構いい感じの畑だよ。
話を聞いていたニルスさんも爺やさんも、何かを考えるように俯く。
「野菜、育ててみようかな……」
ニルスさんのか細い呟きが耳に入った。その肩に柔く触れる。
「野菜をもぎれない皇子より、野菜をもぎれる皇子の方がきっといい」
「え?」
「我が国の皇子殿下方が言ってました。野菜をもぎる必要のある人生じゃなくても、それを知っている・出来る皇子の方がきっといいって。学ぶことは、今必要じゃなくても、無駄にはならないから」
「皇子殿下方が……」
私は何だかんだ、あの二人のこういう姿勢は好きなんだ。
翻って、ルマーニュ王国の王太子殿下の姿を思い出そうとしたんだけど……無理だった。ぴーちくぱーちく煩かった程度の印象しかない。そういえば、北アマルナ王国の国王陛下に言葉でボコられてたな、くらい。
次のルマーニュ王国はあの人が継ぐのか……。継げるんだろうか?
首のすげ替えで済ますにしても、今の王族は良くて断種の上幽閉とか?
いずれにせよ、ご飯食べてるときに考えることでもないな。
ことこと煮込まれたスープから、ペミカンに使った上質なバターの匂いがふんわり漂って来た。
串に刺した野菜もいい具合に火が通り始めて、じゅわじゅわと美味しい音を立てている。
炙ったハムもチーズもいい具合で、それを渡せばニルスさんはクルミパンに挟んでかぶりついた。
普段の食卓だとかぶりつくってお行儀悪いって言われるけど、キャンプ中はそういうのも無し。
ハムとチーズをむぐむぐと咀嚼すると、ニルスさんがぱぁっと表情を明るくした。
「このハム、凄く美味しいです! 素朴で慎ましやかなのに、凄く贅沢をしているような……!」
それ、リュウモドキの……ドラゴンのお肉やねん。
これはきっと言わぬが花なんだろうなって、その場の全員が思ったに違いない。
お読みいただいてありがとうございました。
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活動報告にも色々書いておりますので、よろしければそちらもどうぞ。




