幸運はドラゴンのカタチをしているか、もしくはドラゴンが運んでくる
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菫の園には、フィナーレに際してその組を背負う男役トップスターとそれを支える娘役トップスター、男役の二番手にのみ背負うことが許される大きな羽飾りが存在する。
羽の重みは即ち責任の重み。
それを菊乃井歌劇団でも導入することになったんだけど、ラナーさんがご好意で素材探しを手伝ってくださってたんだよね。
お友達の翼を持つ魔物に声をかけていただいたそうで。
「迦陵頻伽はんとこは、この間お土産にもろた歌劇団の映像の見られる布見せたら『羽なんかすぐ抜けるもんでよかったら』言うて、ぎょうさんくれはったわ。その代わり公演の映像、もっと違うのあったら見たい言うてた」
「ああ、そうなんですね。でしたらいくつか公演の様子を収録した布をお渡ししますね」
「おおきに。それがあったら定期的に羽くれはると思うわ」
ラナーさん、ネゴシエーターにぴったりだな?
マジで大助かりだ。
でもラナーさんによると、本命は迦陵頻伽の羽ではないらしい。
というより、迦陵頻伽達が自分達より綺麗な羽を持っているからって推薦した存在があって。
そちらはまだこれから声をかけてくださるって。
「迦陵頻伽はん達、声には自信あるけど羽根はそうでもない言うて」
「人間から見たら十分美しいですけどね」
「迦陵頻伽はんは迦陵頻伽はんの美的センスいうのがあるさかい」
それはそうだ。種族によって価値観も違えば、美醜も違う。
それでも迦陵頻伽達は菊乃井歌劇団を受け入れ、その発展のために羽をくれるというのだから芸術という物の力は凄い。
一方でラナーさんはフェニックスや、ドラゴンだけど微妙に種族の違うフェザードラゴンにも声をかけてくださったそうな。
因みにフェザードラゴンというのは、羽根が鳥類のそれタイプのドラゴン。他にもかなり小型の種で、羽根が蝶のそれっぽいのもいる。そっちの名前はバタフライドラゴンとか。
ラナーさんの豆知識より。
フェニックスもフェザードラゴンもラナーさんのお友達だけあって、用途を説明すると「人間って変わったことするのねー」という反応と共に羽根を分けてくださったという。
で、問題は。
「大きいからいっぺんに全部運ばれへんねん」
「ああ、なるほど」
「フェザードラゴンはんの羽根は大丈夫やけど、フェニックスはんの羽根って変に落としたりしたら炎が出るよって。魔力抜いてしもたら出ぇへんから、それまでウチの隠れ家においとこ思うねん」
「そうなんですね、ありがとうございます」
「うぅん。ウチも歌劇団見たいし、かまへんよ」
朗らかに言ってくれる。ラナーさんは本当にいいドラゴンさんだ。
ラナーさん以外のドラゴンを知らないけど、暴れドラゴンの話とか嘘みたいに感じる。
恐らくこれがローランさんの恐れる誤解ってやつなんだろうな。
それは今後のやりよう次第でなんとか出来る方向に持って行こう。
羽根の件に関しては引き続きお任せしても良いそうで、今回は中間報告に来てくださったそうだ。
「帝都? そこでのお祭りも見せてもろたし、これからも歌劇団には頑張ってもらいたいし、ちょっと報告しとこか思て来てん」
「なるほど、そういうことでしたか」
頷けば、ラナーさんも仄かに笑う気配がする。
それにつられるようにヴァーサさんやグレタさんも笑った。
「それでしたら丁度良かったですね。商会長は来週あたりから暫く夏休みをおとりになるところでしたし」
「そうですね。ああ、折角ですから閣下がお留守の間の連絡担当者を決めておきましょうか? 実務的なことは、商会はヴァーサさんが、領地関連は私が、歌劇団関係はエリックさん、冒険者関連はローランさんが引き受けるとして、連絡窓口は一つの方が面倒がなくてよいのでは?」
「そうですな。では我が君が留守の間、連絡窓口は私が引き受けるとして、私から各方面に連絡でよろしいですか?」
段取りをさっと決めてルイさんがラナーさんに尋ねる。
ラナーさんはそれに「ええよ、お役所に行ったらええねんな?」と返し、それから私に視線を移す。
「鳳蝶はん、夏休みなん? 夏休みってなにすんの?」
「ああ、はい。それは……」
きらっと目を輝かせて興味津々の様子なラナーさんに、夏休みがどういう物か説明する。
夏の暑い間、一定期間仕事をお休みしてお出かけしたり遊んだり。
そんな感じで、私が今回の夏休みで海の向こうの大陸に行くことを話せば、ラナーさんはちょっと考える仕草を見せた。
「海の向こうなぁ。ウチのオカンの縄張りやってんけど、オカンも寿命で逝んでからどないなってんのやろ?」
「帰ってないんですか?」
「用事あれへんもん」
あっけらかんとした言い方だ。
でもちょっと思うところはあるみたいで、むーんっと唸る。
「ドラゴンって基本アンデッド化せぇへん生き物やねんけど、オカンが絡まれた前例があるよってちょっと気にはなってるねん。もしその辺寄ることがあったら、見て来てくれる?」
「え? いいですけど、場所って解ります?」
「ああ、うん。えぇっと、人間の国があって……なんやったっけ、マル、マルなんとか……?」
さっと室内の雰囲気が変わる。
マルと付くと言われたら、アッチの大陸ではマルフィーザくらいしかなかったはず。そしてこの室内にいる人達は、皆私の災難引き寄せ体質を知っているわけで。
いち早く立ち直ったブラダマンテさんが「それは何年くらい前の話ですか?」と、ラナーさんに尋ねてくれた。
三百年くらい前なら、今のマルフィーザじゃない可能性もある。
しかし、現実は無情で。
「いや、そんな昔とちゃうよ。たしか十年くらい前。そんだけ経ってたらアンデッド化の兆しも見えるんちゃうかなぁ。ドラゴンは強ければ強いほど、恨みがないならアンデッド化しにくいし」
「あら、まあ……」
おふ。
いや、でもラナーさんのお母様がアンデッド化してるとは限らない。
ラナーさんもアンデッド化はないだろうとは思っているそうで、寧ろ別のことが気になっているそうだ。
それはラナーさんのお母様が集められた金銀財宝のことだとか。
ドラゴンってやっぱり光る物とか宝石が好きな個体が多いらしく、ラナーさんのお母様もお好きなほうだったんだって。
でも娘のラナーさんは、そっち方面はあんまり。
なのでお母様が巣にしていた山の洞窟に放置しているそうだ。盗まれるならそれでもいいけど、イワクツキのやつがあったと思うから……っていう?
アンデッド化もそのイワクツキのやつの影響があればそうなるかも、という心配のほうが強いみたい。
「アレやったら売り払ってええよ?」
「いやいや、そんな……」
首を横に振ると、ラナーさん「そう?」とだけ。本当に宝物に関心がないようだ。
場所はマルフィーザの相当山奥だから、モンスターも多いらしい。でも私やレグルスくん達には気になるほどじゃないともお墨付きをもらった。
それならラナーさんにはお世話になっているし、お墓参りの一つもしておこうか。
そういうわけで様子を見に行くことを承知すると、ラナーさんが何かを思い出したようで「あ」と声を上げた。
「そういえば、たまにオカンの山で人間見かけたことがあったわ。オカンに聞いたら、オカンの魔力で変質した薬草が採れるよって、危ないのを承知で山に入ってくるんやて。でも、普段はそこに住んでるわけやのうて、色々あっちこっち旅してるらしいねん」
「え……?」
「オカンが気まぐれに魔物に襲われてる薬草集めしてた人間助けて、こんな危ない場所にくる理由を聞いたんやて。そしたらそう言うてたらしいわ。普段は馬車で生活してるけど自分らは医者で薬を作るために薬草がいるんや、いうて」
マジか。
ざわっと背中を何かが撫でていったような気がした。
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