表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

753/753

対策はお茶会で進むもの

いつも感想などなどありがとうございます。

大変励みになっております。

次回の更新は、10/17です。

 幼年学校でのご令嬢達への風当たりは、当面ゾフィー嬢が壁となるそうで。

 物語が流行れば、人心は移ろいやすいものだから、思うように流れるだろう。

 それにしても幼年学校に通う令嬢令息には、お花畑な話が流行るほどに娯楽が少ないのだろうか?

 皆、菊乃井歌劇団観ればいいじゃん……。

 零せばレーア嬢や小春嬢がそわっとした。


「菊乃井歌劇団は逆に夢中になりすぎて! 試験前に観てしまうと勉強が疎かになってしまう気がして封印しているのです」

「私もです! 学業が疎かになれば観劇を禁じられてしまうので必死なのですよ!」

「それはそれは」


 思わぬ副作用だな。でも解る。前世の「俺」も試験前は禁止してた。だってじっと見ちゃうから、息抜きに本腰が入っちゃうんだ。だから試験前は泣く泣く観劇や映像を見るのを禁じてた。


「それにシュタウフェン公爵家の取り巻き、失礼、関りにある家ですと菊乃井歌劇団は恐らく見られないはず」

「アルマン君はそれが原因で今回も劇場には行けなかったそうです」


 アルマンさんの補足情報にノアさんが労わるように話す。

 でもアルマンさん的には広場であったパブリックビューイングで観劇できたし、偶々その場にいた人たちと感想を言いあえて、それはそれで楽しかったそうな。

 家の確執がこんなところにまで及んでいる。

 それは今どうこう出来ることじゃないから、一先ず置いて。

 ノアさんやアルマンさんに物語を書いてもらって、じゃあそれをゾフィー嬢が広めて流行るかというと……。


「流行ります。だって私でなく皇子殿下方が絶賛なさるのですから」

「なるほど」


 ノアさんやアルマンさんだけでなく、レーア嬢や小春嬢も首を上下させた。

 だけど、ゾフィー嬢は一つ条件を付ける。それは「本当に面白い物語であること」だとか。

 まあね、面白くない物を褒めるのはちょっと無理だろう。私もそう思うし、一定の面白さがないものを褒めると、殿下方の趣味が疑われちゃうし。

 仮に二人の趣味が良くないとなれば、その二人が絶賛する物も実はそんなに……という先入観を持たせることになる。

 残念だけど人の上に立つ人間は趣味もある程度洗練されていないと、それが攻撃材料になってしまうのだ。野暮とか無粋とか、そういう人格攻撃的な。

 でもそれに関しては二人とも乗り気。

 特にアルマンさんはやる気だ。潔癖気味な彼だから嫌がるかと思いきや、そういうことじゃないそうで。


「物語として面白い題材だと思うのもあるのですけど、なんというか……。ご令嬢方に不利益を(こうむ)らせているのが主筋の人間だというのが、申し訳なく。それに卑しくも男だというのであれば、女性に拒まれれば潔く引くのが当然では? 僕はそういう男が好かんのです」

「僕も。嫌だという人に無理を強いるのは、男女関係なく良くないことです。物語の力が何処まで及ぶか解りませんが、僕の筆が誰かのお為になるなら書き甲斐があるという物。それに風刺も文学の手法ですしね」


 ノアさんも乗り気。

 そもそもノアさんは物語を書くことには野心的なんだから、これは然もあらん。

 年長連中のやり取りを見ていたレグルスくんと和嬢の視線が、興味深そうに行ったり来たり。

 和嬢が小さな声でレグルスくんに問う。


「これは、わたくしやれーさまもあたらしいおはなしがよめるということですか?」

「菊乃井歌劇団のげきになるかもしれないよ?」

「まあ、すてき。わたくし、おにいさまのおうたがまたききたいですわ」

「あにうえのブロマイド、あたらしいのでたからあげるね?」

「ありがとうございます!」


 何で私のブロマイドの種類が増えてるのかは謎だけど、レグルスくんと和嬢の会話自体は和む。

 ほわんとしていると、レーア嬢や小春嬢がそっとゾフィー嬢へと頭を下げた。


「ゾフィー様にご相談申し上げてよかったです」

「本当に」

「いえいえ、私は何も。解決の手段を講じてくださったのは鳳蝶様でしてよ?」

「はい、それは重々」

「閣下のご恩、決して忘れはいたしません」


 改めてご令嬢二人に頭を下げられるのに、首を緩く振る。するとゾフィー嬢が艶やかな唇をほころばせた。


「私の言ったとおりでしょう? 閣下は菊乃井歌劇団を愛する乙女を、決してお見捨てにはならないわ。それが菊乃井歌劇団のファンサという物なのですから!」


 違うが!?

 とは、ゾフィー嬢の手前、言えるはずもなく。

 

 「歌劇団を愛してくださる方々のためですからね」


 なんて、営業スマイルを浮かべて対応するのだった。

 それでお茶会自体は凄くスムーズに終わった。

 去年のシュタ何とか家の失態を、あのお茶会に参加していた子達は覚えていたようだし、今年初参加の子達は親からいい含められて来ているのだろう。皆お行儀が良かった。

 皇子殿下方も和やかに色々会話して、相変わらず統理殿下はゾフィー嬢といちゃいちゃ。レーア嬢や小春嬢はなんかうっとりしてて。いつも通りシオン殿下に岩塩をすすめられたけど、今年はノアさんやアルマンさんもだ。

 シオン殿下にはアルマンさんの評判を聞かれたけど、ノアさんの類友だし肝の据わり具合も類友と回答。シオン殿下の目がきらりんと光ったから、アルマンさんには後で労りの何かを送っておこう。

 甲高い声で何かしていたアルマンさんの主筋のご令嬢も静かにしていたようだから、これといった問題も起こらずに済んだ。

 お茶会が終わった後、皇居のサロンに招かれて。

 ゾフィー嬢は勿論だけど、私とレグルスくんと和嬢はゆったりとしたソファーで皇子殿下方に向かい合っている。

 歌劇団の千穐楽で言われた「大事な相談」の件で。

 複雑そうな顔で統理殿下が「話というのは」と切り出した。


「件の病の対処で、ロックダウンや隔離政策があったろう? お蔭で幼年学校の授業に遅れが出た。その影響で今年卒業の生徒たちの卒業時期がずれるそうだ。それに伴って、今年の入学者の入学時期がズレることになる」

「そこで飛び級制度を導入しようということになったんだ」

「飛び級……?」


 シオン殿下の補足に首を傾げる。

 飛び級といえば、学力が一定以上あれば通常の進級順をすっ飛ばして、上の学年へと進級する制度だ。

 そもそも幼年学校に飛び級制度を導入する議論はあったらしい。その議論がこの疫病騒ぎで一挙に進んで、学習の停滞を解消するのと有用な人材を早く社会へと送り出そうという機運が高まったそうな。


「オマケに幼年学校に新課程を創設するそうだ。これは幼年学校の上級学校の課程に相当するらしい。つまり就学年数が人によって伸びる」

「新設課程を選んでも、飛び級の適用で通常の就学年数で卒業も可能だけどね」


 そして飛び級の影響は入学時年齢にも及ぶらしく。


「導入は二年後を目指して、法の見直しや諸機関からの意見調整を行っている。ついでに入学年齢は十歳をめどに考えているらしい」

「二年後で、十歳ですか……って、んん?」


 何とはなしに呟いて、脳で言葉の意味を咀嚼し押し黙る。

 二年後十歳って、それそのまま私ですが……?

 なんか嬉しくない流れに眉間にしわを寄せていると、まだ話は続くようで統理殿下が顎を擦った。


「まあ、この話も大分前から出ていたんだが、この期に盛り上がったのはお前や次男坊をどうあっても俺かシオンの学友、或いは近い後輩にしたいっていう大人の思惑だろうな」

「はあ……」


 飛び級だけなら歓迎するけどな。

 幼年学校に通う年数が少なくなるなら、その分領主としての仕事をする時間が増える。

 しかし、これが相談の内容なら決まってしまったら従うくらいのことだけれど?

 そう言えば統理殿下もシオン殿下もゾフィー嬢も首を横に振った。

お読みいただいてありがとうございました。

感想などなどいただけましたら幸いです。

活動報告にも色々書いておりますので、よろしければそちらもどうぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
なんというか、鳳蝶くん一般教養と領地運営はとっくに履修済みで他にも色々終了してそうですけど、学業と並行して領地運営ってなるともう…… シゴデキ幼児だったとはいえ、集まる人材の種類が若干偏り過ぎのような…
飛び級制度と年齢Only制度 どっちにもメリットとデメリットがあるから一概に結論出ないけど鳳蝶君みたいな特殊な例外を除けば経験不足な子供を親族や国家が便利使いできそうで恐いわ できる子って勉強覚えて…
……いったい何人巻き込まれて早期入学と飛び級させられるのやら( *´艸`) それ以前に入学取り消しとか許可がでない貴族令息令嬢がでないといいですねー
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ