準備楽しく、実行はロマン
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次回の更新は、7/21です。
ベルナール子爵家の御子息・ノアさんは、お茶会の招待状を恭しく受け取って帰られましたとも。
そんなこんなしているうちに、記念祭が始まった。
菊乃井歌劇団は鮮やかに初日の幕を開け、満員御礼の旗を城にはためかせることに。
帝国劇場の方では菊乃井歌劇団の公演のない時間帯に音楽コンテストが行われ、マリアさんは今年は演者でなく審査員の方でご活躍だそうな。マリアさん的には「審査より歌いたいですわ」と嘆いているらしい。
代りと言ってはなんだけど、今回の公演の大楽にも特別ゲストでマリアさんには出演してもらうことになってる。マリアさんはもう名誉団員で良い気がするな。
勿論武闘会の方も始まっている。
こちらはレグルスくんとラーラさんが毎度のことながら、公営のトトカルチョ的な賭けを楽しんでいた。
見てると大体勝つ方が解るらしく、洞察力の訓練になる。
その副産物としてお小遣いが手に入る感じだ。大体公営だしね。それもレグルスくんが意見を出して、ラーラさんが賭ける。儲かったお金はほぼ貯金という健全具合なので、目くじら立ててもね。
私の分も賭けてもらってるし、何なら次男坊さんもやってる。その分はEffet・Papillonの運転資金とか、設備投資の資金になっているので何も言えないんだよ。
で、希望の配達人パーティーだけど順当に勝ち上がっている。
初戦の相手はなんとネクロマンサーを擁するパーティーだった。
去年の武闘会を覚えている人はそれだけでピリついたみたいだけど、また煽るようにキマイラの死骸を持ってきてさ。
だけど希望の配達人パーティーにはお誂え向きだったわけだ。
シェリーさんたら屍キマイラの吐き出す毒のブレスを純正天与の大盾で防ぎきり、その巨体めがけて純正破壊の星をめり込ませてやったらしい。
ビリーさんやグレイさんも負けじと、レグルスくん仕込みの衝撃波を駆使して相手パーティーの盾持ちと剣士を場外に吹っ飛ばしたり、ナイフによる影縫いを駆使してネクロマンサーを行動不能にしたり。
トドメは識さんの教えた火炎系の上位魔術である双頭の蛇でこんがり焼いてさしあげたそうな。
一回戦敗退のネクロマンサー曰く「悪名も無名に勝る」をやりたかったらしい。実際は去年の武闘会のアレソレに関係ないネクロマンサーだったとか。
おめでとう、君の名前はシェリーさんの純正天与の大盾と純正破壊の星の最初の犠牲者として刻まれました。
とはいえ、シェリーさんは純正天与の大盾も純正破壊の星も、公には「修行中なのでこんな感じにしか使えません」とコメントしている。
これってシェリーさんが使った純正天与の大盾も純正破壊の星も、修行中だから不格好にしか使えないというミスリード狙いだ。
まー、ざわつくよね。
菊乃井冒険者頂上決戦でジャイアントキリングやって見せたパーティーが、少しの修行期間を経て遺失魔術を使えるようになってるんだから。
これに関しても希望の配達人パーティーは「私との約束があるから死ぬ気で修行した」で通している。実際そうだしね。
他の試合はというと、楼蘭からの衛士隊が一回戦を勝ち抜いた。
ジークさんの率いるウォークライと、コーサラのパーティーであるパイラヴァも参加して勝ち抜いている。
他にも見どころがあるパーティーが勝ち上がっているらしい。お蔭でひよこちゃんは結構儲けたそうな。
それだけじゃない。
出店だよ。
Effet・Papillon食品部の名の下、菫子さんとジュンタさんが共同で出した猩々酔わせのお菓子を売る出店が凄いことになっていると聞く。
初日の売り始めこそ客脚が疎らだったものの、ドワーフの声の大きなオジサンがお菓子を試食して「旨い!」と叫んだことで、お客さんが一気に集まったらしい。
お蔭で菫子さんやジュンタさんだけじゃ手が足りなくて、識さんやノエくんも手伝いに行っているとか。
その屋台でヴィンセントさんや浩然さんの作ったハンドクリームも売ってるし、待ってる人向けにハリシャさんが紙芝居を見せているそうだ。大根先生の学派の連携が凄い。
着実に帝都に「流行り物は菊乃井からやってくる」という意識が根付きつつある。
去年はセーラー服を真似て収益を出していた店があった。今年はレグルスくんが去年お茶会で着ていたデザインを流行らせて儲けている。デザインの使用料は払ってもらってるし、菊乃井由来のデザインってことはきちんと明記させていた。そのことも「流行りは菊乃井から」という意識を根付かせることに一役買ってくれている。
そういえば、空飛ぶ城のスケッチを何枚か見せてくれた流しの芸術家さんがいたな。
想像でひいたっていう図面も見せてもらったけど、概ねあっててビックリした。流石に隠し通路とかそういうのは解んなかったみたいだけど、劇場の構造もよくご存じだったんだよね。
美術館とか劇場の図面を作れる設計士さんとお知り合いだったそうで、菊乃井の町の区画整理と劇場構想を話すと「楽しそう!」ってはしゃいでたな。さて、あの人って誰だったんだろう?
まあ私もそのときにはレクスの服じゃなくて普段着だったから、誰か分かんなかったろう。
それで子どもだけのお茶会だけど、これは昼公演……マチネっていうんだけど、歌劇団がマチネしかない日を選んで行うことになった。
大人のお食事会の三日前。次の日に何とかいう貴族のお家でちょっとしたパーティーがあるんだけど、そこに艶子夫人とゾフィー嬢、乙女閣下が招かれているんだよねー……。
私? 忙しいからね!
大人のお食事会の予行演習も兼ねて、帝都の屋敷の家令さんとメイド長、宇都宮さんとオブライエンが空飛ぶ城に入ってお手伝いしてくれるそうだ。
参加者も菊乃井からは奏くん紡くん兄弟とアンジェちゃんにラシードさん、識さんとノエくん。帝都側からは皇子殿下方にゾフィー嬢、乙女閣下に艶子夫人、エマさんに和嬢、それからベルナール子爵家のノアさんだったんだけど。
「くそ、皇子殿下方には手回ししてなかった……!」
手元にある綺麗な便箋には、麒凰帝国の皇室に属する方しか使えない印があってだな。
中には「うちの息子達がお世話になっています。楽しそうな催しをされるそうで、是非参加させていただきたいのですけれど。やっぱりご迷惑かしら?(意訳)」ってさ。
差出人は鷹司シシィさんだ。そう何度も断れると思うか? 無理(反語表現)
まあ、良いか。
帝都住みのご令嬢は妃殿下のお茶会に招かれることがあるそうだ。だから妃殿下のご尊顔を拝したことがある人が多い。でも令息は男同士の付き合いが優先されるから、妃殿下に直接お会いすることは少ない。
ノアさんが妃殿下の顔を御存じなきゃ、それでいいかな。ご存じでも皇子殿下方が来る会だしな。そこは諦めてもろて。
書斎で私が鷹司シシィさんからの手紙に返事を書いている間に、レグルスくんがソファーで見ていたのはレクスの伴侶のレシピノートだ。
大人のお食事会のメニューはもう決まっていて、調味料云々も揃っている。なにせキッチンのお手伝い人形のテディが「レクスの食べていた料理の再現が見事に出来てます!」って、料理長の腕前に太鼓判を押してくれた。心配はしてなかったけどね。
なのでそっちはお任せ。私が決めてるのはお茶会のケーキだよ。
「あにうえ、これがいいな!」
「うーん? どれかなぁ?」
デスクから立ち上がって、ひよこちゃんが示すノートを覗く。
「え? これがいいの?」
「うん! これだったら、おれもなごちゃんにつくってあげられるし、なごちゃんにもつくってもらえるから!」
「まあ、たしかにこれなら果物沢山乗せられる……かな?」
「それとね、バケツプリン? それがいいな! おっきいのはロマンだから」
「解る。バケツプリンはロマン!」
二人して顔を見合わせてハイタッチすると、気分が一気に盛り上がった。
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