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想定内と想定外のアレソレ

いつも感想などなどありがとうございます。

大変励みになっております。

次回の更新は、4/4です。

 げんなりしたのが顔に思いっきり出たのか、皇子殿下方が苦笑いする。

 本当は感情はなるべく隠したほうがいいんだろうけど、このお二人に対しては今更のような気がして。

 それにお二方だって、私には遠慮会釈なく色々仕掛けてくるんだもん。ある程度隠してても読み取れるしね。

 それもあってジト目でお二人を見ていると、画面の向こうで統理殿下が口を開いた。


『まず良いことからにしようか?』

『えー、でも先に悪いことを聞いて、後で良いことを聞いた方が気が楽になりません?』

『そうか、そうだな……じゃあ悪い方から』


 シオン殿下の意見は間違ってないけど、それって良いことが悪いことを上回ってたらっていう前提条件があるんだが?

 といっても、どうせ両方聞かないといけないんだからあまり変わりないかもね。

 頷くと、シオン殿下が告げた。


『ルマーニュ王国で流行り病に新しい症状出たらしいよ』

『なんでも今までのに加えて、記憶がなくなるんだそうだ』

「それは……」

『お前の恐れていた病の変異が起こったようだな』


 なんてこった。

 とはいえ帝国はまず大丈夫じゃないかな。シュタウフェン以外は姫君様やえんちゃん様が厄払いしてくださったし。

 あの厄払いは神殿とかで、神官さんにやってもらうような物じゃない。私やレグルスくんが冬に姫君様に施していただいた花鈿かでんと同じような物。その効き目は人の作った呪い如きがどうこうできるものじゃない。

 そんな話をすると、画面の向こうで統理殿下が『なんだ』と拍子抜けしたような声を出された。


『良い報せというのは、祭りの後北アマルナから重症患者が一斉に回復したっていう報せがきたという話だったんだが』

『それだけでなくシェヘラザードやコーサラからも似たような話が届いてるよ』

「ああ、それは今朝姫君様にお伺いしたので」


 そう返せば両殿下ともご納得されたのか、頷かれる。

 お二人もえんちゃん様から、宴の褒美に天上のお方々の総意で厄払いに古龍を地上に赴かせたとお話があったそうだ。

 ただえんちゃん様からシュタウフェン領を除外した話は聞いてなかったそうな。


『多分忘れてたんだろうな。目が腫れぼったかったし、凄く御喜びだったから』

『ええ、僕達も褒められましたしね。イシュト様が「中々の強者ではないか」って仰ってくださったそうだよ』

「良かったですね。これで『月のない夜に出歩けると思うなよ?』は達成できたんでは?」


 だからもう武闘会に参加とか止めてくださいね。

 そういう意図を込めて爽やかな笑顔を浮かべると、シオン殿下も爽やか笑顔になる。


『いやぁ、まだシュタ何とか家の息の根が止まってないからぁ』

「そっちは次男坊さんがやるからお任せしたらいいんでは?」

『それに宰相のところの跡継ぎもいるしぃ?』

「そっちの息の根は止めないでくださいね。嫌な予感がするから」


 そっとため息を吐く。

 ソーニャさんがお祭りのどさくさに紛れて教えてくれたんだけど、最近社交界には変な噂が出ているとか。

 それは宰相閣下が宰相位を譲る相手を変えようとしている、というもので。

 一見私には関係ない話に思えるだろ?

 その相手が私だってことになってるんだよ。

 本当に迷惑。

 噂の出所が何処なのか、オブライエンに探るように指示をだしたけどさ。

 これで何が困るかって、菊乃井家と梅渓家の関係が悪くなること。それだけだよ。

 話のついでだから、ソーニャさんに教わった噂話を両殿下にご報告すると、お二人とも微妙な顔になった。


「え? なんです?」

『うーん。確信があるわけじゃないが、その噂の出所は梅渓のじいじゃないかな』

「へ?」

『ああ、あるかもしれませんね』


 統理殿下の言葉に驚ていると、シオン殿下も首を上下に振る。

 ちょっと意味が解りませんね?

 そんな意味を込めて首を傾げると、統理殿下もシオン殿下も肩をすくめた。


『仕置きにでたんじゃないか?』

『うん。いい加減にしないと、お前の地位は安泰ではないぞってさ』

「それって、跡継ぎの戒めに私を引き合いに出したってことです?」

『それもあるかも知れないが、この噂をどう収めるかでアイツの力量を計る試験なのかもしれないし。お前が動く前に片付けたら、アイツには見込みがある……みたいな?』

「いやいや、そんなのお家の中でやってくださいよ」


 呆れたように返せば、お二方とも苦笑いだ。

 つか、そういうのは止めてよ。

 そんな思いが伝わったのか、統理殿下が真面目な顔で首を左右に振った。


『梅渓の爺は普段から「宰相位は能力ある者に渡す。血筋でなくとも選択肢には入る」と公言しているしな。爺は父上の代で引退。となれば俺を支えてくれるのは次代の宰相だ。それなら俺は優秀な人材がほしい。見込みのないヤツに宰相位を継がせるわけにはいかない。それはお前だって解るし、宰相が有能なほうが都合がいいのもそうだろう?』

「う、いや、そうですけど」

『なんならお前がやってくれても、俺は全然構わないぞ』

「私が構いますけど!?」


 私は菊乃井で手一杯だってば!

 因みに宰相にシオン殿下の名前が上がらないのは、シオン殿下が将来臣籍降下するにしても出が皇家なのが良くないから。

 宰相は皇帝陛下のストッパーでもあって、普段仲が良くても駄目なことには駄目と言えないと務まらない。

 それが血縁だと難しいだろうってことで、皇族出身や近い縁があると宰相にはなれない決まりがあるんだよ。

 梅渓家も一応何代か前までは皇族の血が入ってたんだけど、今の宰相閣下の先々代から許されたんだってさ。

 ついでに言えば、将来ゾフィー嬢が国母におなりになった暁には、ロートリンゲン公爵閣下も除外される。

 そういう関係があって梅渓は皇家と婚姻関係を求めてない。

 和嬢が自由に結婚相手を選べるのは、この辺の事情もあるみたいだね。

 だからって私を巻き込むの止めてよ。


「見込みはあるんですか?」

『収められなくても、態度を改めるなりなんなりがあれば、見捨てられはしないだろうが……』

『僕はそのまま見捨てられた方がいいけどね』


 シオン殿下のは若干私怨がある気がするなぁ。

 宰相家の跡取りが皇宮にくると、シオン殿下は統理殿下との時間をそいつに奪われるから気に食わないらしい。跡取りのほうも、気性がちょっと似てるシオン殿下のことはあんまりだそうな。

 この辺はソーニャさんの情報だけど、それとなく近衛の隊長や副隊長からも聞いてるから間違いないっぽいな。

 私が直接聞いた訳じゃなく、ひよこちゃんが聞いたんだけどね。

 うちのひよこちゃん、統理殿下の剣術に付き合う間に、そういう話を二人から聞き出してたとか。流石ひよこちゃん、コミュ強! 超天才! 素晴らしい!

 心の中でレグルスくんに団扇を振っていると、統理殿下が画面の向こうでシオン殿下を宥めているのが見える。

 ぶすくれてるシオン殿下は、お兄ちゃんに構ってもらって嬉しいんだろう。

 まあ、宰相閣下の謀【はかりごと】なら関係が拗れるとか、今現在は気にしなくていいかなぁ。

 迷惑なのはたしかだから、噂の出所を確認してからちょっとだけウニウニ言わせてもらうことにはなるか。そのときはヴィクトルさんにお願いしよう。

 色々面倒ごとに眉間にシワが寄る。

 そんな私に、画面の向こうで皇子殿下方が顔を見合わせた。

 それから表情を真面目な物にして。


『北アマルナのネフェルティティ王女殿下のことだが』


 来たな、と身構える。

 空気が変わったのを察した統理殿下が、慌てたように手を横に動かした。


『どういう関係とか、そういうことを詮索する気はないんだ。ロートリンゲン公爵からもロマノフ卿からも説明は受けているし、父上もご納得されているから』

「ああ、はい」


 そうか、そうだな。

 この件に関してはロートリンゲン公爵には随分動いていただいているし、ロマノフ先生と色々ご連絡を取っていただいていた。それをお二人が知らないはずもない。

 だとすると、何だろうな?

 続きを視線で促すと、統理殿下と顔を見合わせたシオン殿下がこてりと首を傾げた。


『あのさ、もしも、だよ? もしも、ネフェルティティ王女が君とお見合いを望んだら、その……受けるかい?』


 なんて?

お読みいただいてありがとうございました。

感想などなどいただけましたら幸いです。

活動報告にも色々書いておりますので、よろしければそちらもどうぞ。

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― 新着の感想 ―
姫様がご用意してくださいますので〜 を通しそう
鳳蝶君の場合、 「貴族特有の政略結婚ですかね?」 と言いかねないのが~f(^ー^;
ネフェルティティ嬢とお見合い! ついにこの話題が… 鳳蝶がなんて答えるか、とても気になります。 今は自分の恋愛なんて考えてなさそうですが、将来的には分からないですよね… 出来れば鳳蝶は恋愛より親愛、信…
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