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序盤から波乱

いつも感想などなどありがとうございます。

大変励みになっております。

次回の更新は、12/13です。

 剣を構える美女二人。

 緊迫感が半端ない。

 睨み合う二人が動かないのでなく、迂闊に動くことが出来ないようだ。

 どちらかが隙を見せたら、この試合は終わる。

 誰もがそう認識する中、風が一陣通り過ぎ、二人の間に一枚の葉が。

 その葉が地面に落ちる一瞬、二人ともが動いた。

 剣閃が閃いた刹那、二人はリングの中央でぶつかり、そして動きを止める。

 誰もが固唾を呑んで見守る中、二人の身体が傾いだ。それから同時にリングに倒れ伏す。


「えー……?」

「あい、うち?」


 何が起こったんだか。

 たしかに晴さんの剣はアギレラさんを袈裟懸けにしたけど、アギレラさんはどうだったのか?

 アギレラさんの手元には風の魔術が渦巻いてたけど。

 もしかしてと首を捻ると、ロマノフ先生が頷いた。


「剣先から魔術を打ち出して、晴さんの鳩尾に入れてましたね。見事なものだ」

「あー、魔術剣ですね」

「ええ、レグルスくんがお得意のアレですね」


 なるほど、納得。

 リング上ではレフェリーがテンカウントに入る。

 二人ともどう見ても意識がない感じだから立ち上がれないだろう。となると勝負は、負傷はあれどまだ動ける威龍さんがいる「菊乃井成り上がり隊」の勝ちだ。

 試合終了のゴングが鳴って、「菊乃井成り上がり隊」の勝利をレフェリーが告げる。

 どっと沸き上がる観客の歓声を背中に浴びながら、衛生班が鷲の巣パーティーのメンバー達を運んで、麻痺がとれたベルジュラックさんも威龍さんと晴さんを担いで医務室に消えた。

 アレ、二回戦行けるんだろうか……。

 試合二つ見ただけだけど、正直もう私はお腹いっぱいになってきた。けど隣のひよこちゃんは目を輝かせていて。


「楽しい?」

「うん。でも、だれがあいてでも、おれはまけないよ!」

「いや、レグルスくんは戦わなくて大丈夫……」


 の、はず。……の、はずなんだけど。

 まあ、いいや。レグルスくんに挑みたい人が、必ずしも優勝するとは限らないしね。

 で、次の試合なんだけど。

 歓声に背を押されるように、リングにはもう二組のパーティーが立っていた。

 片方は海の向こうから参加してきた、あちらでは結構名前の知られたパーティーで「ウインドミル」というそうな。魔術師がいない、パワータイプの剣士と武闘家と弓使いのパーティーだ。

 対するは今日の付け襟はタッセルがついた豪華な感じのシェリーさんを守るような布陣を組んだ、菊乃井初心者冒険者講座期待のニューカマーパーティー「希望の配達人」の面々。

 若者vs.ベテランって感じの組み合わせに、僅かに観客がどよめく。

 ベテランの胸を借りる若人。私が武闘会で企図していた組み合わせはこれなんだよー!

 だけども。


「……レグルスくん、これどうなりそう?」

「シェリーさんたちがかつよ」

「あー……ねー……」


 小声だし防音に魔術を使って聞いたレグルスくんの評価に、げそっとする。思い通りにならないことばっかだ、ちくせう。

 でも観客にはそんなこと関係ないというか知らないから。そして戦う本人達も解ってないから。

 レフェリーが「始め!」と、手を振り下ろす。

 試合開始と同時に突っ込んだウインドミルの剣士と武闘家に、対応するように同じく前衛のビリーさんとグレイさんが飛び出す。

 でもそれ自体は相手の計算通りだったみたいで、空いた穴にねじ込むように弓使いがシェリーさんめがけて矢を射た。

 だけどそれも読んでの行動なわけだよ。

 だってシェリーさんは自分の前に物理障壁を展開しつつ、前衛の二人に防御力の底上げを目的とした魔術をかけてたんだから。

 びっくりしたのはウインドミルの面々。まさか初心者冒険者が同時に二つの魔術を展開してくるとは思わなかったらしく、虚を突かれて隙が生まれた。

 そこに続けて攻撃力増大と素早さ増大の付与魔術を重ねがけ。屈強なおじさん二人をまだ成長途中の少年二人が押し返す。それだけじゃなく、隙をぬったシェリーさんが放った雷の攻撃魔術が相手チームめがけて降り注いだ。

 アレ、全体攻撃魔術だわー……。私がフレンドリーファイア怖すぎで使えないやつ。

 シェリーさんもフレンドリーファイアを恐れてか、かなり範囲を絞ってるけどね。

 ただ私としては全体攻撃を範囲指定で使うよりは、初級魔術を同時複数射出の方が楽でいいけどな。

 そこは人それぞれってことで。

 魔術は魔術師が健在な限り続く。攻撃魔術を止めるには魔術師を討つのが定石だ。

 それに則ってウインドミルのメンバーもシェリーさんを優先的に狙うことにしたみたいだけど、残念。

 前衛がその機能……後衛を守るっていう役割をきっちり果たしている魔術師混合チームはマジで強いんだ。

 シェリーさんに相手の武闘家や剣士を少しも近寄らせないために、ビリーさんとグレイさんは前線を押し上げる。あっちの弓使いの攻撃はシェリーさんに少しも届かないから、前衛を崩すべくビリーさんやグレイさんに向けられた。

 しかし。


「させない!」


 気合を込めたシェリーさんの声は、魔術という力をもってウインドミルの弓使いに襲い掛かる。巨大な炎の塊が弓使いの身体を覆い、一気に全身を包んだ。とはいえ試合。弓使いは悲鳴をあげて気絶すると、すぐに炎から解放された。

 残るは二人。

 一人がやられたことで士気が落ちるかと思いきや、そうならないのがベテランなんだよなぁ。

 身体強化を使ったのか、武闘家さんがビリーさんを吹っ飛ばす。その拳を剣士と切り結んでいたグレイさんにも向けたんだけど、ここはシェリーさんのナイスアシスト。物理障壁でグレイさんをガードしつつ、自身の影から伸ばした触手の猫の舌で武闘家さんを捕まえる。


「あにうえ、あれ」

「アレ使っちゃうかぁ……」


 いや、いいんだよ。別に私の固有魔術ってわけじゃないし。だけどアレ、うら若いお嬢さんが使うのどうかな……?

 名前は猫の舌って可愛い……可愛い? いや、無害そうなんだけど、見た目がタコの足みたいな触手からイソギンチャクみたいなのとか、歯ブラシみたいなのが付いたやつとか、ちょっとグロいんだよ。オマケに肌に感じるのが猫の舌のザラザラ感だし。

 私がアレを使うのは、使われる相手への嫌がらせも込みだ。

 アレに捕まえられた武闘家さんはと言えば気持ち悪いやら痛いやらで、阿鼻叫喚だしな。厳ついおじさんが触手に絡まれてひぃひぃ泣かされてるのは、目のやりどころに困る。

 エルフ先生達もなんやかんやシェリーさん達の評価をしてたけど、いつの間にか静かになって明後日の方向を見てるし。

 そうこうしているうちに、武闘家のおじさんも気絶。残る剣士のおじさんはいつの間にかビリーさんとグレイさんの二人に制圧されていて。


「勝者・希望の配達人チーム!」


 レフェリーの宣言に会場がどっと沸いた。誰も予想しえない……こともなかったんだけど、番狂わせの勝利に大きな声援がシェリーさん達のチームへと投げられる。

 敗れたウインドミルチームは医務室に運ばれ、シェリーさん達は声援を受けながらリングを下りて。

 此方に気が付いたのか、シェリーさん達がペコっと頭を下げた。

 レグルスくんが大きく彼女達に手を振る。


「つぎもがんばってねー!」

「はい!」

「勿論っス!」

「頑張ります!」


 元気よく三人が返して、颯爽と控室に戻っていく。その背中にはやる気がみなぎってる感じ。

 さてさて次の対戦カードはなんだろな。

 尋ねようとすると、どよっと観客が揺れる。みればバーバリアンがリングの向こうから、こっちに近付いてきた。


「よっす!」

「あ、皆さんお久しぶりです」

「ジャヤンタ、ひさしぶり! カマラさんもウパトラさんもげんきだった?」

「ああ、元気だよ」

「ええ、アナタ達も元気そうね?」


 ニコニコと笑う三人に、こちらもにこやかに返す。先生達も軽く手を挙げて応じて、どうしたのかと問うた。


「ああ、次のチームが馴染みの奴らでさ」

「ちょっと変わった趣味してるのよねェ。それで失礼なことしないように見に来たのよ」

「なるべく止めるから、勘弁してやってくれ」


 何事よ?

お読みいただいてありがとうございました。

感想などなどいただけましたら幸いです。

活動報告にも色々書いておりますので、よろしければそちらもどうぞ。

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― 新着の感想 ―
 うわぁ〜触手プレイは見る分には良いけど、やられる分には最悪だろうな…おっさんお疲れ。  凄い的外れかも知れませんが、猫の舌って触手プレイしたい/されたい人が習得してる魔術師に頼むから面倒くさ過ぎて…
アゲハ君の場合全体攻撃が1個隊で済むわけないよね1個大隊相当よね絞ったと言っても本気出せば小国の半分ぐらい消し飛ばせそうだし
おっさんに触手プレイする変態より更に厄介な変態が出るのか(スットボケ
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