温度差と周辺情報
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次回の更新は、9/30です。
シュタウフェン公爵領の方は、次男坊さんが指揮を執るようになってから劇的に色々良くなってるみたい。
皇子殿下方とは別口、現地からの大根先生とブラダマンテさんの報告からもそうあった。
ただやっぱり後手後手の印象は強くて、シュタウフェン公爵家への不満はかなり溜まってるっぽい。
次男坊さんは本人は隠してるつもりだったみたいだけど、下町の庶民達には結構素性が知られてるそうで。
現と次期の当主が揃って倒れたことで、皆ご存じ自称風来坊で退屈男な徳田主水之助くんがようやく本領を発揮できる状態になったと、もろ手を挙げて喜んでいるとか。
なんだその、暴れん坊な将軍と眉間に傷持つ旗本侍を合わせたような名前は。今度から徳田様とか主水之助様とか呼んでやろうか?
それはおいとくとして。
マンドラゴラ医療班も上手く機能しているそうだ。
魔物なので当初は怖がられたものの、大人より寧ろお子さんの心を掴んだみたいで、子どもが怖がっていないならと大人からも受け入れられていると聞く。
実際看病は菊乃井領でもやってるからお手の物。そのひんやりした野菜ボディを抱きしめて、氷嚢がわりにしながら闘病しているお子さんもいるそうだ。
これは隔離施設のこと。
それ以外にも隔離施設に入るほどでもないけど、症状の重い自宅療養患者には、楼蘭教皇国の巫女さんや司祭さんがお家まで派遣されている。
ここまでのことを次男坊さんは、彼の味方である孤児院の子達や職員さん、居候の魔物使いさんと調えたそうだ。
そんなだから中央の大人連中に目を付けられるんだよ……。
余程重篤な患者には疑似エリクサー飴を手配することになってるけど、今のところ使ったのは倒れられたら困る医療従事者だけだそうな。
この病に全力で当たることを条件に飴を配布したそうで、もしも逃げようなんてしたら即首が飛ぶっていう宣誓をさせたとか。破れば物理的に首が飛ぶやつ。
それくらい信用ならなくても、人材としては使わないと致し方ない。シュタウフェン公爵領も人材不足に泣かされている。
勿論そんなお医者ばっかりじゃなく、率先して病気に立ち向かうお医者さんもいて。そういう人には、切り札として疑似エリクサー飴を預けているそうだ。
問題はまだ色々あるみたいだけど、とりあえず今のところ状況は好転している。そういうことで良いだろう。
シュタウフェン公爵領のことばかりじゃなく、自領のことも忙しい。
続々と各地の冒険者ギルドから、菊乃井冒険者頂上決戦武闘会への出場決定者が決まったと連絡が来ている。
コーサラやシェヘラザード、他国の冒険者ギルドが自主的に地方予選と本戦をやったみたいで、各国一組の出場パーティーになってきた。
それで文句が出ないのかっていうと、コーサラで負けたパーティーが他の国でエントリーしたりと結構自由だし、どうしても出たいパーティーは菊乃井で参加希望を出す予定だそうな。
ただし菊乃井にはエストレージャがいるし、威龍さんやベルジュラックさんがいる。その他にも民間伝承級モンスター討伐の功がある識さん・ノエくんコンビや戦う巫女さん・ブラダマンテさんがいるから、結局のところ本戦出場難易度は吐きそうなほど高い。
それでもやってくる分には「頑張ってね?」としか。
闘技場の準備も出来て来ている。元々砦の運動場でやる予定だったので、そこを綺麗に補修してるんだよね。砦の方も草臥れてる部分を、職人さん達が補修してくれてて、結構カッコいい感じになってるそうだ。
偶に奏くんの鍛冶の師匠のモトおじいさんも手伝ってくれてるらしい。
いつの間にか歌劇団のお抱え絵師の旭さんと知り合いになってて、旭さんの描いたデザインを柱に彫刻してくれてるんだって。凄く見たい。
歌劇団の特別公演のほうも準備が進んでる。
マリアさんがあと半月もしたら菊乃井入りして、歌劇団との練習に参加なさるそうだ。結局ユウリさんが「マリアさんさえよければ」って声をかけて、菊乃井歌劇団のゲスト歌姫として参加することに相成った。
歌劇団の舞台だけでなくマリアさんのミニコンサートも聞けるとか、本当にお得すぎる。SS席に陣取りたい。そんな私は今回も影ソロ要員で裏方配備ですが、何か?
更になんでも市のほうも着々と進んでる。
広場に配置できるテーブルや椅子なんかも、シェヘラザードの組み立て式建物の工房が貸し出ししてくれることになった。
うちが組み立て式建物建築を導入したことで、各所から申し込みが沢山あったんだって。その還元として超格安、タダみたいな値段で一杯お借りすることが出来た。
それからお店配置が一目でわかるような看板も設置したし、簡易な配置図も準備してる。これは旅するエルフのキリルさんからご紹介いただいた印刷屋さんが頑張ってくれた。
私の肖像画集もそこで出すそうなんで、そのお礼って言われたんだけど、お礼とは……?
因みに旭さんから献本を受けたけど、レグルスくんが超可愛く描かれてて読む用・保存用・布教用がほしい。
しかも画集に小説も付いててさぁ。
あれだよ、天地の礎石での討伐の話がノベライズされてた。主人公が私なのに納得いかない。そこが解釈違いなこと以外は凄く面白かった。
雪樹の一族からも出店希望の人達が引っ越して来た。
ラシードさんに連れられて挨拶に来てくれたけど、年齢も性別も様々だし角の有無とか髪の毛やら肌の色も様々。
共通して下級の魔物使いで、早速蜘蛛蜘蛛ネットワーク構成員の子達とマッチングしてくれたそうだ。
売り物の魔物の皮や毛を使った絨毯や衣服を見せてもらった。まあ、素敵な刺繍だったり織物だったりで最高だった。
うちの馬車の内装を何とかするときに、敷物とかの相談に乗ってもらおうかな?
他にも大根先生のお弟子さん達のお店も色々形になってきている。
マヌス・キュアのヴィンセントさんは、アレをお洒落と安全面の方向性に進化させてた。前世でいうところのネイルアートの方面というのか、爪に細かなレースや可愛い花を描くことでカムフラージュしつつ、防御障壁を張ったり呪いをレジストする魔術を起動できる術式を仕込む感じで。
魔力がない人には砕いた魔石をビーズとして付けることで、それを補う技術も確立できたそうだ。ただし攻撃魔術への魔力転用は、これを拒絶する術式も組んでいるので、悪用も防げるよう対策してる。
防具の研究をしてる浩然さんと協力して、付け替えできる爪……所謂付け爪の研究もしているそうだ。今度の市場でちょっとだけ出品してみるんだって。
菫子さんは今まで食べてきた中で気に入った物をちょっとずつ色々出すみたい。試食させてもらったけど、魔物のお肉のサラミは感動するほど美味しかった。
識さんとノエくんは董子さんのお手伝いもするそうだけど、彼らは彼らで武闘会に参加するという。
「メンバー、大体三人だけど二人で出るの?」
丁度空飛ぶ城の図書館に虫干しに来ていた二人に聞いてみると、二人は首を横に振った。
「三人目いるよ」
「え? そうなの?」
意外ってわけじゃないけど、二人は一組って感じだったからてっきり二人だと思い込んでた。でも違うと言われて首を傾げると、識さんが抱えていた本を棚に戻しつつきょとんとした。
「あれ? ラシード君から聞いてません? 私達三人で組んでエントリーしたんですけど」
「えー……初耳。っていうか、ラシードさんは出るならイフラースさんと組むと思ってたけど」
識さんの言葉に何となく意外さを感じてそう言えば、ノエくんが「イフラースさんに振られたんだって」と補足してくれる。
振られたとはこれいかに?
お読みいただいてありがとうございました。
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活動報告にも色々書いておりますので、よろしければそちらもどうぞ。




