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白豚貴族だったどうしようもない私に前世の記憶が生えた件 (書籍:白豚貴族ですが前世の記憶が生えたのでひよこな弟育てます)  作者: やしろ


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異種族間ギャップ指数が結構上

いつも感想などなどありがとうございます。

大変励みになっております。

次回の更新は、5/27です。


 というわけで、ナジェズダさんのケーキとお茶代は接待費として計上することにしておいて、今回は私のお小遣いでお支払い。後日ヴァーサさんに清算してもらおう。

 私だって偶に初心者冒険者の依頼をやってたりするので、ケーキとお茶代くらいは出せる。それでなくたって、ロスマリウス様とご縁をいただくことになったクラーケン退治の報酬で貰った金貨が残ってるし。

 あんまり使わないというか、お小遣い使って豪遊するような暇がない。

 レグルスくんもそういうお金はあるんだけど、それは将来のために貯蓄に回してる。

 菊乃井家、爵位一つしかないから。

 将来、和嬢が嫁いできてくれるまでに、何らかの爵位を持ってないと詰んじゃう。ので、お金の出番なわけだよ。

 それまでに何かしらの功績を立てられたらいいだけなんだけど、功を立てるので一番手っ取り早いのは武功だ。

 だけど爵位を賜る程の武功って、それはやっぱり凄く大きな物になるわけで。

 ともすれば危険な任務を受けることになるんだから、それくらいならお金に物を言わせるほうがいい。

 それはおいといて。

 普段だったら転移魔術だけど、それが使える人が今全員出払ってる。

 なので馬車を示すと、奏くんが私に手を差し出した。


「え?」

「いや、馬車は若さまとひよさま、アンジェちゃんとナジェズダさんが乗りなよ。おれはグラニ、つむはタラちゃんに乗るから。アリス姉はもうヨーゼフさんと御者席にいるし」


 そう言うから周りを見ると、既に紡くんはタラちゃんに乗ってるし、宇都宮さんはちゃっかりヨーゼフの隣にいる。

 グラニは奏くんを乗せるのを嫌がらない。

 だから「解った」と手綱を奏くんに渡すと、私は手をナジェズダさんに差し出した。こういうとき女性をエスコートするのは紳士の務めだ。

 穏やかに微笑んでナジェズダさんは私の手を取って、馬車へと一緒に乗り込む。その後ろからレグルスくんがアンジェちゃんをエスコートして、馬車に乗り込んだ。

 その姿が堂々としているものだから、ナジェズダさんは「あらあら」と目を輝かせている。そうでしょ? うちのひよこちゃんは何処に出しても恥ずかしくない紳士なんだよ!

 全員乗り込んだことを確認してから、ヨーゼフが出発を知らせる。それに応えると、ぱかぱかと馬車が走り出す。

 サスペンションだっけ?

 とりあえず、お尻は痛くない。

 前世で「田中」が読ませてくれた異世界転生とか転移のラノベってやつだと、スプリングがなくてお尻が痛いとかあったけど、こっちはそうでもない。

 ただやっぱり内装を凝るとか、乗り心地をよくするとやっぱりお高くなるんだ。

 乗り心地はいいけど、無駄にお金が掛かっている内装を見て、ナジェズダさんが微妙な顔をする。

 解るよ、だって……。


「……趣味が、良くないのは承知してます」

「あら、あらあら。大丈夫よ、人の好みはそれぞれだもの」


 ナジェズダさんの目が泳ぐ。

 この馬車、外側は黒塗りなんだけど内側がちょっと……。

 なんか壁紙は毒々しい紫だし、金とか銀とかの飾りはあるけどそれが全然栄えないし、座席だって似たような色だし。

 なんだこれ?

 これ、あの人の趣味か? いや、確かめたことないけどもしかしたらレグルスくんのお母様のご趣味だったりするんだろうか? 怖くて宇都宮さんに聞けないでいる。

 だからって改装もなぁ。お金いるでしょ? 馬車なんてめったに乗らないものにお金をかけるなら、もっと別の物に使いたい。そう思って後回しにしてきたんだけど、こうやって「もしかして貴方のご趣味?」みたいな顔されるのは凄く嫌だ!

 言い訳がましく「元父の趣味……だと思います」と答えると、レグルスくんが額に汗を浮かべているのに気付く。


「どうしたの、レグルスくん?」

「これ、あの、とうさまだったひとのしゅみだよね!? れ、おれの、かあさまのしゅみじゃないよね!?」

「え!? た、多分?」

「たぶん!?」


 ショックを受けたような顔でレグルスくんが「たぶん!?」ともう一度呻く。

 いや、うん。この内装を見たとき、私も密かにショックを受けた。そしてレグルスくんもショックだったんだろう。だけどひよこちゃんの場合、私よりショックが強そうなのは、きっとこの内装の趣味が元父のものじゃなく、実母のマーガレットさんのものかもしれないのに気が付いたからだろう。

 幸いなことに、母の調度品や内装の趣味は菊乃井の家格に合う物だったしな……。

 だけど一度だけお邪魔したレグルスくんの生家はそれなりに趣のある感じだったし、それを貸している次男坊さんからは改装の申し出とかはない。それを思えば、マーガレットさんの趣味は悪くない、はず。

 そういうことを説明すると、若干レグルスくんの顔からこわばりが取れた。

 これはあれだな。

 侯爵家に陞爵したんだから、馬車も家格に合うように改装しないといけないんだろう。

 体面も考えないといけないとこにきちゃったんだろうな。

 こういうのは誰に相談したらいいんだっけか?

 とりあえず家のことだから、ロッテンマイヤーさんに相談してみよう。

 ぽくぽくと歩く颯の横に、奏くんを乗せたグラニが並ぶ。

 長閑な光景の中、不意に奏くんが誰かに手を振るのが見えた。かと思うと、グラニを下がらせて馬車の窓近くまでやってくる。

 窓を開けると、手を振った理由を教えてくれた。


「識姉とノエ兄がいたぞ?」

「あ、本当? 屋敷に来てもらえるように伝えてもらえる?」

「うん? おお、あの件だな。分った、ちょっと行って来る。追いかけるから先に帰っといて」


 軽く頷くと、グラニを軽やかに操って識さんやノエくんを見かけた方向へと奏くんが向かう。その後ろをタラちゃんに乗った紡くんが追いかけて行った。

 私達の会話の内容が解ったのか、レグルスくんの目がキラキラする。


「シェリーさんのこと、きくの?」

「そうだよ」


 ニコニコだ。今日もひよこちゃんは可愛い。

 その可愛い笑顔のまま、ナジェズダさんに話しかける。


「ナジェズダさん、シェリーさんにあいにきたんでしょ?」

「私にお手紙くれた女の子ね? そうね、遠目から一目見るだけでいいの。だけど皆ダメっていうのよ。人間なんて、ロクなもんじゃないって」

「皆って、ソーニャさんは違うでしょう?」

「ソーネチカは『いきなり会いにいくと驚かせるでしょ?』って。でも遠目から一目見るだけだったら、別に構わないんじゃないかしら?」

「それは……」


 うーん、微妙だな。

 至近距離でじっと見られてたら、それはそれで気になるよね。だからって魔術で勝手にのぞき見されるのも、ちょっと。

 それくらいなら堂々と会いに来たって言われた方がいいんじゃないかな?

 黙って聞いていたアンジェちゃんが首を小鳥のように傾げて、私が考えていたようなことを口にする。


「あいにきたっていわれたほうが、わたくしはうれしいとおもう、じゃなくて、おもいます!」

「そう? でも、こんな見ず知らずのおばあちゃんにいきなり話しかけられたら、驚いたりしない?」


 おばあちゃん。

 その単語に頭の中で疑問符が生えること多数。

 だからさー、エルフってさー、外見で年齢が分かんないんだってばー。

 ロマノフ先生でさえ二百歳はとうに超えている。そのお母様のソーニャさんは帝国建国に携わっていて、さらにそのソーニャさんからしても「お年寄り」って幾つさ。

 解かんなくなったのは私だけじゃなくてレグルスくんやアンジェちゃんもそうなんだろう。思いっきりきょとんとしてる。


「あの、見ず知らずの人にいきなり話しかけられるのは驚きますが、お婆さんとかは正直解らないです」

「あらぁ?」

「人間はエルフの美醜は多分解っても、その老若はよほどのことがないと解らないです。背丈が私くらいなら、同じくらいの歳かなって感じですね」

「まあまあ、そうなの?」

「はい」


 同じような外見なのに、生きてる年月が違う。

 それはエルフと人間が袂を分かつことになった理由の一つなんじゃなかろうか?

お読みいただいてありがとうございました。

感想などなどいただけましたら幸いです。

活動報告にも色々書いておりますので、よろしければそちらもどうぞ。

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― 新着の感想 ―
[一言] そーいやアゲハ君達、下剋上する前は保護者同伴でなければ外出できない年齢でしたね。 しかも放置児だったアゲハ君が馬車に乗ったことがなくても不思議ではない。 中の人が覚醒してからは近場はポニ子さ…
[一言] 人間はどうしても見た目で判断しちゃいますからね エルフたちは人間には感じ取れないものも見ていそうですね
[一言] ナジェズダさんの「あらあら」はきっと御当主自身も含まれると思うんですけど、きっと本人は気づいてないんだろうなぁーと
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