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白豚貴族だったどうしようもない私に前世の記憶が生えた件 (書籍:白豚貴族ですが前世の記憶が生えたのでひよこな弟育てます)  作者: やしろ


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平和な光景なんだけど、普通の範囲かと言われると謎。

いつも感想などなどありがとうございます。

大変励みになっております。

次回の更新は、5/17です。


 間の悪いことに、今日も先生達はお留守。

 大根先生は梅渓領へとお弟子さんを連れて出張中だ。

 っていうか、そのエルフのお年寄りさんは菊乃井に来たことがあるんだろうか?

 転移魔術は便利ではあるけど、行ったことのない場所にはいけない。だからラーラさんもヴィクトルさんも最初はロマノフ先生に連れて来てもらったそうだし、大根先生は近くまで転移してからラーラさんに連絡を取って菊乃井に転移してもらったとか。

 引きこもりだったって聞いたけどな?

 引っ掛かることはあるものの、それは今から会うんだから本人に聞けばいいだろう。

 アンジェちゃんに手を引かれて階段を下りていくと、エントランスでロッテンマイヤーさんが待っていた。


「馬車の用意も出来ております」

「馬車?」

「はい。お客様をお連れになるかと思いまして」

「ああ、そうだね」


 普段は先生方の何方かが付いて来てくださって、帰りは転移魔術でばびゅんっと一瞬で帰って来られるけど、今日はそうじゃないもんね。

 私も一応転移魔術が使えるんだけど、複数人を一度に運ぶってなるとコントロールに若干不安があるんだよね。

 別のところに飛んじゃうまでは行かないんだけど、当着地点が想定より若干ズレる。例えば外から私の部屋へ転移する予定が、廊下になるくらい。

 だけどそのズレが致命的な場合もあるから、きちんとした精度になるまでは使わない。練習はするけど、ズレたと判ったら修正できる人がいるとき、即ち先生方と一緒のときだけ。

 そんなわけで私はグラニに乗って、いつの間にか玄関にやって来ていたタラちゃんがアンジェちゃんを乗せ、その後ろからヨーゼフが御者を務める馬車が付いて来る団体様仕様で町に向かう。

 因みにこの馬車、黒塗りで中は座り心地の良さげなシートでかなりお金かかってる感じなんだけど、勿論私が作らせた物じゃない。

 帝都の別邸を元父から取り上げたときに、同じく取り上げた物だ。

 それを颯に曳かせるんだけど、これが速い。

 うち、他にも馬がいるんだけど颯やグラニが、私やレグルスくんがポニ子さんと自分達以外の馬や動物に乗るの嫌みたいなんだよね。

 ヨーゼフが申し訳なさそうに言ってきたんだけど、どうも拗ねるらしい。一匹だけなら「そういうこともあるべ」で済ませるそうなんだけど、父子して落ち込むそうでポニ子さんが「鬱陶し、じゃなく、困ります~」って顔でヨーゼフを見るんだそうな。

 ヨーゼフとポニ子さんには菊乃井動物ヒエラルキーを守ってもらってる。そのお役目をはたしてもらうためにも、秩序ある行動をとるのは上司の務めだよね。

 閑話休題。

「いってらっしゃいませ」と送り出してくれるロッテンマイヤーさんを背に、アンジェちゃんを乗せたタラちゃんが凄いスピードで走るのを追いかける。

 ちょっとすると町を守る衛兵が見えてきたので、タラちゃんもグラニもスピードを落とした。衛兵が私を認めて敬礼するのに手を上げて応えると、そのまま町中へ。

 人が多いからここから先はゆっくり。

 町中は区画整備が進んでいて、ある程度道も舗装されている。

 普段から町中を見回っているせいか、私がグラニに乗って歩いていても菊乃井の住民たちは騒いだりしない。

 偶に菊乃井についたばかりの旅人か冒険者が、びっくりしたような顔をするくらいか。でもその人達も一か月ほど菊乃井にいたら慣れるんだよね。

 だって今まで珍しいとされてたエルフがホイホイ歩いてるし、獣人や魔族もウロウロしてる。希少種のドラゴニュートの少年が、初心者冒険者用の依頼を果たしにお使いしてるなんてことだってあるし。

 人間の子どもが馬に乗って、デカい蜘蛛を連れてたりするなんて、普通の範囲内に収まるんだ。多様性万歳。

 アンジェちゃんが「みぎにまがって」などなど、指示をタラちゃんに出しているのが聞こえる。

 頭の中に町の地図を思い浮かべると、アンジェちゃんが案内する先にはたしかフィオレさんの宿屋があるはずだ。

 あそこは宿屋だけでなくレストランも兼ねている。エルフさん、お茶でも飲んでるのかもしれないな。

 アンジェちゃんに声をかける。


「アンジェちゃん、そのエルフさんだけど何してる感じだった?」

「えぇっと、アンジェ、じゃなくて、わたくしとひよさまとかなおにいちゃんとつむちゃんで、しょしんしゃぼうけんしゃのいらいをしてたんです」

「そうなんだ」


 おお、アンジェちゃんも頑張ってる。

 私も位階上げしたいんだけど、ローランさんが困った顔するんだよね。

 何でも私が位階を上げるのに初心者用の依頼のお使いとか、薬草採取とかを引き受けると、依頼人が「ご領主様が来てビックリした!」って真っ青になって言って来るそうだ。

 位階を上げるのに依頼をこなさないといけないのは冒険者ギルドの当然のルールだし、それは身分出自貧富関係なく皆が守らなきゃいけないこと。私だけ例外は無いんだよ。

 それに依頼者だって特別なことがない限り、依頼を受ける冒険者を指定できない。そういう規則で、私は規則に従っているだけだ。依頼者さんには諦めてもろて。

 それは置いとく。

 アンジェちゃん達は皆でお使い業務をしてたそうだ。

 菊乃井は衛兵もそうだけど冒険者達も気を配ってくれてるから、子ども達が一人で歩こうが何しようが安全。微笑ましく町の人達に見守られ、時にはお菓子を渡されながら依頼を遂行していた。

 その中に宿屋さんへのお使い依頼があったそうで、四人はフィオレさんのお宿に向かった。それでテラスでお茶をしているエルフの女の人を見たんだそうな。

 そして話し合った結果、紡くんが身体強化の魔術をかけたアンジェちゃんが全力疾走で私に知らせることとあいなった。

 それで今ここ。

 残った四人はエルフさんが何処かに行かないよう、そっと物陰で見守っているそうだ。

 待て、四人?


「え? 一人多くない?」

「うつのみやちゃんせんぱいが、こっそりついてきてるの」

「ああ、なるほど」


 そういえば宇都宮さんの姿を見ないと思ったら。

 エリーゼもお忍びで一人で出歩きたいときは、影から付いて来るっていってくれてたもんね。今日の宇都宮さんの業務は、初心者冒険者の依頼をこなすレグルスくんを陰ながら見守ることか。お疲れ様だね。

 だけどアンジェちゃんに知られてるんなら、レグルスくんにもバレてそうだな……。

 ともかく、四人はエルフさんから目を放さないようにしているそうだ。

 そういうことなら、早く行った方がいいだろう。

 アンジェちゃんの案内通り、大通りを右に回って暫く行くとフィオレさんの宿屋が設置しているカフェのオープンスペースが見えてくる。

 が。


「あれぇ?」

「おや?」


 アンジェちゃんと二人同時に驚く。

 何か、カフェの辺りに人垣が出来ていたからだ。

 ピクピクとグラニの耳が揺れる。そして僅かに「ヒン」と鳴いた。


「だ、旦那様!」

「はい?」

「レ、レレ、レグルス様のお声だってグラニが!」


 ヨーゼフが後ろの馬車から少し大きめの声で告げる。

 グラニの耳にはレグルスくんの声が届いたみたいだ。それにタラちゃんが尻尾で看板を掲げる。


「……揉めてるみたい、って?」


 怒鳴り声が聞こえて来るわけじゃないんだけどな。

 よく解らないから人垣の手前でグラニを止めると、ちょっと聞き耳を立ててみる。

 するとフィオレさんの声が聞こえてきた。困惑しているようで「ご領主様、まだっすかね?」とか尋ねている。

 それに「もうすぐだとおもうよ、そうしたらもうだいじょうぶ!」って答えたのがレグルスくんだ。

 そっかー、私が来たら大丈夫なのかー。

 ニコニコしちゃうね、ひよこちゃんの期待に応えなきゃ。


「もし、何かありましたか?」


 思いっきり笑顔を浮かべて声をかける。

 すると人垣が一斉に私を振り返った。

お読みいただいてありがとうございました。

感想などなどいただけましたら幸いです。

活動報告にも色々書いておりますので、よろしければそちらもどうぞ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 領民の皆様! 恐れ多い気持ちもわかるけど、 そこはほら、 「うちはご領主様の冒険者位階上げに貢献したんだよ!」 って後々自慢語りするネタにしましょうよ!
[一言] たしかに脱走猫の捜索依頼とかで新人冒険者として御領主様がやってきたら驚くわね。 プップクプ〜。 こういうほのぼの回からのトラブル。 また次回が楽しみ。
[一言] 駆け出し冒険者が担当しているであろう街中でのお仕事を頼んだら御領主様が来ました、って依頼した領民からしたら心臓に悪いサプライズでしかないよね これが毎日のように依頼受けてて、領民に広く知れ渡…
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