表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

581/763

一年の総括は、その次へのステップに繋がる?

いつも感想などなどありがとうございます。

大変励みになっております。

次回の更新は、3/22です。


 森の氷の城は、レグルスくんと毎朝お散歩に出かけて歌を歌っている間に、隠しきれなくなってしまった。

 別に悪い事してた訳じゃないんだけど、秘密基地だから内緒にしてたんだよね。でも毎日歌ってレグルスくんやマンドラゴラ達と踊ってたせいか成長しちゃって……。

 凄く困った顔のロッテンマイヤーさんに「旦那様、美しいとは存じますが倒れる危険性も……」って言われちゃったら、放置しておくわけにもいかないよね。

 悪戯が見つかったみたいでちょっとバツが悪かったんだけど、先生方が「綺麗なんだから倒れても危なくない距離で鑑賞してもらえばいいんでは?」と、すたこらさっさと町に運んでっちゃった。

 そして運ばれたその氷の城は、大晦日に歌劇団がコンサートをする予定の特設ステージ横に飾られたそうな。

 しかも数日間飾られてたそうで、氷の城を見たお抱え画家の旭さんが「閣下はお歌だけでなく、彫刻にも才能が……!?」って感動してたらしい。

 情報元は奏くん。

 旭さんは私だけでなく、レグルスくんや奏くん紡くん兄弟もスケッチしてるそうだ。モデルを快く引き受けたときに、奏くんとそんな会話をしたと聞いた。

 どこで?

 大晦日当日のその私が作った氷の城の真ん前で。


「若様、こういうの特技なんだ?」

「いや、その、これは単に出来心……」

「雪樹ではコウテイペンギンだっけ? デカい氷の何か作ったんだろ? 解かる! デカい工作はそれだけでいいんだ! ああいうのは、男のロマンなんだよ!」

「えー……いやー……うん……大きいのは良いことなんだよ!」


 そう、大きいのはいいことなんだ、多分。

 ディテールに凝りすぎてちょっと色々細かく作りすぎた感は否めないけど、仕方ない。ジオラマとかは細かくて大きいほど燃えるんだ。

 だって仕方ないじゃないか。

 歌いながらイメージしたお城が意外に上手く作れちゃったんだもん。城の欄干もうちょっと精密に出来ないかなーなんてやってたら、物凄いのが出来ちゃったんだよ!

 壊すのも忍びなくって秘密基地だし、レグルスくんもかっこいいっていうから調子に乗って飾ってたら見つかっちゃったんだよね……。

 因みに先生達からは「楽しそうで何より」って、凄く生温かい笑顔で言われました!

 だって! 楽しくなっちゃったんだもん!


「今度はあれ、ドラゴン作ろうぜ?」

「えー……? ドラゴン?」

「そう、デカくて強そうなヤツ! そんで動かそうぜ!」


 ワクワクする奏くんに反応したのは私じゃなくてレグルスくんだ。


「のれるやつ! にぃに、のれるやつがいい!!」

「つむも! なかにのれるのがいい!」


 紡くんもほっぺを真っ赤にしながら、ブンブン握り込んだ両手を振ってる。

 乗れるやつか……。ちょっと考えてみよう。

 早めの軽い夕飯を食べて、コンサートに参加するために屋敷から出て来た私達兄弟は、奏くんと紡くん兄弟と合流。

 今年は夕方からコンサートが始まって、年越し前に解散の予定だ。それも今年だけでなく、私が大人って言える年までそういうことになるみたい。

 朝早くから皇居に行かなきゃなんないのに、日付が変わるまで起きてるって無理だろうっていう大人の皆さんの判断だそうだ。

 でもそれはコンサートだけの話で、年越し自体はいつも通り日付跨いで騒ぐんだってさ。変に私に気を遣わないで、領民皆楽しくやってくれたらそれでいい。

 コンサートの時間が前倒しにされたことによって、私が参加する第九の合唱は最後の曲目へと変更された。

 今年は歌える領民も参加するそうで、大合唱になるみたい。

 そういえば前世ではとあるホールに一万人集めて一斉に第九を歌うっていうイベントがあった。いつの日か、ああいう催し物が出来たらいいね。

 因みに今年のコンサートは帝都・梅渓公爵領・ロートリンゲン公爵領でも配信……っていってもいいのかな?……されるけど、時間が前倒しになったので菊乃井のコンサートの後で、帝国宮廷楽団のコンサートを繋げて配信するそうだ。

 それで私達がいるのは貴賓席。といっても、去年と同じくユウリさんとエリックさん宅のお二階。

 去年の暮れとは比べ物にならない人混みが予想されてるそうなので、エリックさんが今年も二階を空けてくれたんだよね。それでアンジェちゃんも一緒に見るのかと思ったら、今年はブラダマンテさんと一緒に見るんだって。

 ブラダマンテさんはえんちゃん様から「アンジェとブラダマンテと年越ししている気分が味わいたい」とお願いされ、遠距離映像通信魔術で遠くにいるえんちゃん様と一緒に見ているように装うんだそうな。勿論えんちゃん様は姫君様達と空から直接ご覧になるんだけど、神様としてじゃなくアンジェちゃんやブラダマンテさんの友達として行動したいえんちゃん様のご希望を、ブラダマンテさんが汲んだ形だ。

 あとこのコンサート、人材派遣の一環で董子さんを始めとして大根先生のお弟子さん達が魔術で協力するとも。

 菊乃井の一大イベントの舞台は、菊乃井に生きる人皆の努力と協力で出来ている。

 夕方完全に日が沈んでしまうと広場に敷き詰められたタイルが仄かな光を放ちだした。

 それに合わせるように舞台に光が集まって、そこだけ真昼のような明るさになる。

 それだけじゃなく花が降ってるようにも、蝶が舞っているようにも、星が煌めくようにも見える映像が建物の壁に美しく映った。

 そして歌劇団の団員達の「特別コンサートにようこそ!」という言葉とともに、コンサートを楽しむための諸注意──前の人を押さない、後の人も見えるようにお互い気遣って楽しんでほしい等々が広場に響く。

 そして歌劇団の団員達が舞台に出てくると、一際大きな拍手が起こった。

 くるりとバルコニーから階下を見下ろせば、見知った顔がいくつもあることに気が付く。

 例えば晴さんと旭さんや、エストレージャの三人、バーバリアンの三人もいれば、威龍さんやベルジュラックさんもいる。


「裏方はばっちりのようだな」

「はい。先生のお弟子さん達のお蔭で、凄く華やかですね」

「こういうことに協力することで、町に溶け込むのは良いことだと思うよ」


 大根先生が穏やかに笑う。

 お弟子さんに手伝いを勧めたのは大根先生だそうな。大根先生は菊乃井を本格的に本拠地に定めたから、お弟子さんにも定住を視野に入れて領民と溶け込むように言ってるんだって。仲良くなるには何かを一緒にするのが一番だから。

 この辺りは武神山派もやってることで、その武神山派の人達こそがお弟子さん達に頻繁に声掛けしてくれてるそうだ。同じ境遇だから、協力しよう。そういうことみたい。

 その地道な活動のゆえか、武神山派の人達は困ったときに力になってくれる頼れる隣人として領民たちに受け入れられている。お弟子さん達もその人達が「いい若者たち」っていうなら……と、そんな感じ。上から「良い人達だから受け入れて」って言っても、こればっかりは一緒に過ごしてる人達の肌感のが強いもんね。

 そんなことを考えている間に、音楽が鳴り始めた。

 最初の曲はラ・ピュセルのメンバー達がリードする、彼女達の代名詞になっている歌。

 貴方は貴方。貴方という花は世界に一つで、それだけで世界で一番。

 その精神が菊乃井に根付いて、お互いを尊重して認め合って生きられる土壌になればいい。領歌というものがあるなら、多分これだ。


「ねえ、にぃに」


 サイリウム振りながら、レグルスくんが私を呼ぶ。


「なぁに?」

「えぇっとね、れーちょっときめたことがあるんだ」

「そうなんだ?」

「うん。しんねんのほーふ? そういうってうつのみやからきいたんだけど、それ」


 何だろう?

 そう思って隣のレグルスくんの顔を見る。

 するとひよこちゃんは笑って。


「あした! おたんじょうびのとき、いうね!」


 その顔が、やけに大人びて見えたのは何故なんだろう……?

お読みいただいてありがとうございました。

感想などなどいただけましたら幸いです。

活動報告にも色々書いておりますので、よろしければそちらもどうぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 某戦隊にロボとか出て来ませんよね?(*´ω`*)
[一言] 子供の頃、大きい風船?の怪獣で中に入って遊べる奴に憧れたなー、その手のが流行る時期には自分が入れる歳じゃ無くて地味に悔しかった記憶…w(ーwー
[一言] 作者様の描くほのぼのシーンは自分の幼少期の記憶を呼び覚まさせるものが多いです。 忘れかけてた懐かしい思い出が甦って幸せな気持ちになれました。 ありがとうございます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ