大丈夫か大丈夫じゃないかで言えばだいじょうばない
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次回の更新は、2/9です。
とりあえず梅渓公爵家の跡取り小僧については、保留。
なにか仕掛けてくるなら、子ども同士のいざこざで済む範囲で相手をすればいいという、皇子殿下方のアドバイスの通りにさせてもらうとして。
本題のシュタウフェン公爵家とバーンシュタイン家の繋がりの方だ。
そっちの狙いはあからさまに過ぎる。
菊乃井家は親戚筋が少ない。いや、いない。
祖母方の家は祖母が菊乃井家に嫁して遠縁から養子をもらったらしいけど、この養子が事業に失敗して爵位を返上。色々整理して「ちょっと小金持ちの平民」になったらしいから、こちらの家の復権だの復興だのはなし。
曾祖母の家とも付き合いがないし、母の代から付き合ってないんだから今更だ。
そして元父のバーンシュタイン家だけど、本来元父の責任で縁切りになってるんだから恥って言葉を知ってるなら近寄ってもこれないはずだけど。さて。
因みに菊乃井は代々子どもが少ない家だったみたいで、曽祖父・祖父ともに兄弟はない。
兄弟がい過ぎて揉めるのも困るけど、いなさ過ぎて一族の基盤が脆弱なのも困りものだ。
ほどほどっていうのは何にしても難しい。
閑話休題。
付き合いがなかった親戚が、いきなり挨拶にやって来るなんてロクなことはないのがセオリー。そしてうちは親戚が少ない。
シュタウフェン公爵家の狙いはその辺かな。
皇子殿下方も私と同意見ということで、新年のパーティーではなるべく目を光らせていてくれるそうだ。
その代わりと言ってはなんだけど。
「レバーペーストですか?」
『ああ。リュウモドキのレバーとは言わないから、父上に内緒で母上に差し上げたいんだ』
「また、どうして?」
凄く渋い顔の統理殿下とシオン殿下に訳を尋ねる。
レバーペーストくらい、皇居の料理人さん達にいくらでも作ってもらえるだろうに。
そんな疑問が思い切り顔に書いてあったんだろう、統理殿下とシオン殿下が大きくため息を吐いた。
『前にリュウモドキのレバーペーストを持って帰ったろ?』
「はい。お渡ししましたね」
『それ、美味しかったからきっちり家族で四等分したんだよ』
「はぁ」
たしかにレバーペーストの瓶は四つ渡した。
それをきっちり一瓶ずつ、家族で分けたそうな。しかし、思いのほか美味しかったので陛下がハマっちゃったらしい。
それで妃殿下にちょっと分けてもらったらしいんだけど、「ちょっと」って言ったのに凄く食べたとか。
妃殿下、めっちゃ怒ったそうで。
『あんなにふくれっ面した母上、初めて見た』
『僕もです。父上もらしいですよ』
「えー……?」
『でも、気持ちは解るよ。今回は父上が悪い。全面的に悪い』
『母上も少しずつ楽しみながら食べていたそうですしね。僕らの分も狙われたし』
「はぁ……」
平和だな、帝国。
そんな感想が浮かんだせいか、お二人を見る視線がちょっと温くなる。
それを察したのか、統理殿下が唇を尖らせた。
『家内安全は世界平和の第一歩だぞ?』
『そうだよ。家庭がぎすぎすしてると、色々影響が出るんだから』
「出てるんですか?」
『……母上がしょんぼりしてるから、父上もちょっとしょんぼりしてる』
『ロートリンゲン公爵と宰相が、レバーペーストを奪われないように遠巻きにしてるよ』
肩をすくめるシオン殿下に、視線が明後日に飛んでいく。
うん、まあ、平和なのはいいことだ。
でも私だって世界平和の第一歩は家内安全からだと思うよ。
ぽりっと頬を掻くと、画面の向こうの殿下方に頷いて見せた。
「リュウモドキのレバーが残ってるか聞いてみます。あればまたお裾分けしますね。なければ料理長に普通のレバーペーストを作ってもらいます」
『ありがとう、よろしく頼む!』
『助かるよ、ありがとう!』
そんなわけで、新年パーティーに持っていくものが増えた。
会談の後、料理長に確認を取ったら、まだ少しリュウモドキのレバーは残っていたみたい。なのでそれをレバーペーストにしてもらって、うちと妃殿下で半分こだ。
細々とした報告が色々執務の合間に入って来る。
大根先生の疑似エリクサー飴のお蔭で体調がよくなってきた美奈子先生が、和嬢の家庭教師として本格的に始動なさったとか。
レグルスくんが和嬢と交換している絵日記にあったと見せてくれた。
絵日記に描かれた美奈子先生はグレイヘアーをシニヨンにした上品な老婦人で、彼女のお弟子さんが助手として授業についてくれるそうな。
ピヨ丸も美奈子先生と大根先生の研究に協力してくれるそうで、早速和嬢と一緒に美奈子先生の授業を受けたんだって。
マンドラゴラコミュニティーについては、これからの研究になるかな?
魔物使いとしての授業ももうしばらくしたら始まるらしい。こちらはラーラさんから、アーディラさんの準備が整ったって連絡があった。
着々と色んなことが進んでいる。
で、姫君との面会日の朝。
レグルスくんといつものように奥庭へ。
まだ季節外れの花は咲いていない。
ほっとしつつ、いつものように姫君様の牡丹へご挨拶申し上げる。
牡丹から柔らかな光と花の優しい香りが溢れて、やがてしゅるんと人の形に。
いつも通りのご挨拶をして、そこからだ。
姫君様がひらりと薄絹の団扇を翻す。
「盤古の鱗やら牙やら爪……諸々、好きに使うがよい。妾の庭の敷石にするにしても数が多すぎるゆえな」
「は、ありがとうございます……」
ぺこんと頭を下げると、レグルスくんも同じく「ありがとうございます!」とお辞儀する。
でも好きに使えって言われても、実は問題があるんですよねー……。それはこちらの問題なんだけど。
「なんじゃ、問題とは?」
考えていることは相変わらず駄々洩れ。なのでご相談申し上げよう。
「その、古龍の鱗なら私でもなんとかなるんですけれど、逆鱗となると加工できる人が少なくて……」
「む? どういうことじゃ?」
「逆鱗に籠る魔力が高すぎて、上手く砕いたり割ったりが出来ないんです。私も先生方に手伝っていただいて、漸く一枚逆鱗が砕けるというありさまで」
「なんと。そこまで其方弱くはないじゃろうが?」
「多分なんですけど、敷石にしている間にも魔力や神威を吸収して、逆鱗自体の防御力が上がってしまってるのかと」
私の言葉に姫君様が一瞬怪訝そうな顔をなさったかと思うと「暫し待て」と仰る。
お言葉に従ってレグルスくんと大人しく待っていると、姫君様が「なるほどのう」と呟かれた。
「今、イゴールに念話で聞いたが其方の言う通り、月日を経たモノは地上のような魔素や神威の薄い場所では劣化するが、天界では逆にそういった物を吸収して硬くなるそうじゃ。地上にも名工と呼ばれるものがおるのであろう? その者であれば難なく砕けると申しておるぞ」
「でも、砕くためだけにその名工さんのお手を煩わせるわけには……」
「ふむ」
姫君様が僅かに首を傾げられる。
それからややあって、片眉をひょいっと上げられた。
「イゴールが其方の友人兄弟に加護を授けておる。その二人に逆鱗を砕く技を授けておくそうじゃ」
「え? 友人兄弟って……?」
私の友人兄弟っていえば、皇子殿下方かさもなきゃ奏くんと紡くんなんだけど?
そう言えば奏くんはイゴール様からご加護をいただいていたと思うけど、まさか紡くんも? え? いつ?
戸惑っていると、ぽんっとレグルスくんが手を打った。
「あー……そういえばつむもイゴールさまにごかごもらってました」
「へ? レグルスくん、知ってるの?」
「うん。あれ? れー、にぃににいわなかった?」
「え? 聞いたのかな? え?」
多分聞いてないと思う。思うけど、ちょっと自信がない。
そうなのかと感心していると、不意にドキッとした。
加護って重なるといいこともあるけど、試練とか来ちゃう筈だ。
レグルスくんもだけど奏くんも紡くんも、ロスマリウス様やえんちゃん様からもご加護をいただいていたはず。
ハッとした私に、姫君様がそっと目を逸らす。まさか……!
そう思っていると、姫君様が首を横に振られた。
「ひよこや其方の友人に関して言えば大丈夫じゃ」
「え? そうなんですか?」
「うむ。其方の周りの者の分の試練も、結局其方が引き受けておるからの」
……それ、なんにもだいじょうばない気がしますけど?
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