笑うしかない門にも福はくるのか?
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次回の更新は、1/8です。
出ない。出ないったら絶対に出ない。
私は武闘会には絶対出ないんだからね!
これだけは誰が何を言おうと曲げない。
言い切った私に、ルイさんは真顔で、ローランさんは苦笑で頷いてくれた。
今回の「前回の王者枠」はバーバリアンに頼んであるんだから、それはそれで押し通す。ただロマノフ先生はちょっと残念そうで。
「君なら破壊の星を使っても、相手に当てないで、その周りに星を降らせるくらいは可能でしょうに」
「先生、そんなことしたら頂上決戦の本戦に使う砦の運動場が穴だらけになるじゃないですか。修繕費がどれだけ必要になるか!」
「あ、それはマズいですね。じゃあいつか何もない場所を見つけたら、破壊の星を披露してもらうこととして」
「そんな機会は要らないです……」
脳内で腰に付けた夢幻の王が『えぇ~、何でですかぁ?』とか言ってるけど、無視無視。
細かい話はまた会議で決めるとして、今回の話はこんな感じで終わった。
ふわっとしてるけど、実務レベルで詰めていくにはお役人さん達に頑張ってもらわないと。そこにあまり細かく口出しするのもよろしくないだろう。大枠だけ決めて、後はよろしく。責任については取るので、いい感じにやってください。説明は詳しくしてね? 菊乃井はそんな感じだ。
で、その日の私の仕事で大事な物は次男坊さんへの人材斡旋のお願い。
彼にも遠距離映像通信用の布を渡そうとしたんだけど、彼実家にお住まいなんだよね。皇子達と同年代って言ってたから、親元で暮してて当然だろう。
公爵家の次男なんだからスペアとしての教育は受けてるらしいけど、親は毛色の違う次男坊さんをちょっと持て余し気味。だからといって放置ってわけじゃないから、家に遠距離映像通信用の布を置いておくと、私と彼の繋がりがバレる恐れがあるんだよね。
持て余してはいるけれど、家族。そして次男坊さんは前世の価値観が根付いてる故に、差別意識バリバリで自分達以外を人間として扱わないような両親も兄も受け入れられない。なのにあちらは家族の情をもって、次男坊さんのことを放置しないそうだ。
私のように最初からお互いに相容れないのと、彼のように価値観があまりに違い過ぎるけど家族としての愛を持って接してくる相手とやり合うのと、どちらが不幸なんだろうか。
いうて私も次男坊さんも不幸比べをする気もなきゃ、不幸マウントの取り合いをする気もない。お互いやりたいことのために頑張ろうねってなもんだ。
だいたい彼がちょっとやり難いと思ってるのは母親に対してだけだもんな。次男坊さんにも長男にも惜しみなく愛情を注いでいるそうだ。だけどその一方で彼女は、次々と身分的に逆らえない階層の女性たちに手を出し、あちらこちらに無配慮極まりなく胤をまく夫でなく、愛人や生さぬ仲の子どもを怨んで害そうとする。そこが本当に理解できないそうだ。
閑話休題。
布が置けない以上やり取りはギルドを介しての手紙連絡が主だ。イゴール様が仲立ちしてくれることもあるけど、次男坊さんみたいにホイホイ神様を使い走りに出来ないよ。
サラサラと菊の透かしが入った便箋に、菊乃井では人材が足りないので、もしそちらの孤児院から独立する人がいるなら紹介してほしい。人材の枯渇はシュタウフェン公爵の力を遠巻きに弱めることになるとも思うと認める。
あて先は次男坊さんが指定した執事さんだ。
アンジェちゃんとエリーゼが町にお買い物に行くというので、ついでに出してくれるよう手紙を託した。
さてさて、どうなるかな?
季節は日々少しずつ秋から晩秋に向かっている。
次の日、私達兄弟は日課の奥庭詣りに来ていた。まだ花は季節の花が多く、無理をする花はいないように見える。
晩秋が迫ると、私はちょっと憂鬱になっちゃうんだ。だって姫君様が天上にお戻りになって春までいらっしゃらないんだもの。
だから庭に季節以外の花が咲いてないか、時々レグルスくんとお散歩がてら見回ってるんだよね。
源三さんが整えた薔薇のアーチを潜って、奥庭へ。
青いサルビアやサフラン、桔梗や竜胆。最近源三さんは青や紫の花に凝ってるみたい。ぼそっとそういうことを呟くと、レグルスくんが「ちがうよ~」とにっこり。
「え? 違うの?」
「うん。れーがね、にぃにとおなじいろのおはなをおせわしたいっていったから。げんぞうさんがなつのおはながおわったら、むらさきやあおのおはなをうえましょうねって」
「あー……そうなんだ。じゃあ、春や夏はレグルスくんみたいな元気なお花を植えてもらおうかな?」
「うん!」
お手々繋いでぽてぽてと。
紫や青の花の回廊を通って、姫君の御座所になってる最奥へ。
豪奢な牡丹からふんわりとした光が溢れて、やがて人形になると、姫君様のお姿に変わった。
「おはようございます」
「おはようございます!」
「うむ、今朝も息災のようじゃな?」
最近は三日に一回くらいの御目通りになっているんだけど、その度に姫君様は「息災か?」と尋ねて下さる。そして「何事も恙なく」と答えるまでが一通り。
歌を歌う前に最近は菊乃井であったことをお話してるんだけど、今日は先に姫君様から「話がある」と仰られる。
「お話、ですか?」
「うむ。前にそなたの元にあまりに災難が降りかかると話したであろう? それじゃ」
「あ、はい。憶えております」
ひらひらと薄絹の団扇を翻す姫君様のお言葉に頷く。
雪樹の揉め事の最中、姫君様はあまりに揉め事に巻き込まれる私に「少し考える故、しばし待て」と仰ってくださったのだ。
そういえば氷輪様も考えて下さってるって仰っていた。もしかして原因が解ったんだろうか?
期待を込めて姫君様のお言葉を待つ。すると姫君様は「う……」とわずかに呻かれて、私から視線をおそらしになって。
「そのな……」
言い淀んでいる。しかもいつも凛とした雰囲気の漂う姫君の眉が、困ったように八の字を描いていた。
どうも常ならざる姫君様の様子に、私もレグルスくんも握った手に力が入る。
「その……どうにもならん」
「へ?」
聞き間違いかな?
今、姫君様「どうにもならん」って仰った?
ぼんやりとレグルスくんと顔を見合わせて、それから揃って姫君様のお顔を見る。けれど姫君様は私達兄弟の視線から隠れるように、薄絹の団扇で顔を隠されてしまって。
「あの……?」
「どうにもならぬ。大事なことゆえ、重ねて言うぞ。どうにもならぬ!」
本当に重ねて仰ったけど、意味が飲み込めない。
レグルスくんもそうだったみたいで、二人で目を白黒させてしまう。けど、私よりレグルスくんの方が立ち直りが早かった。
姫君様に「なぜですか?」と可愛らしく、けれど困惑を隠せない声で尋ねる。
「うむ、今から説明するゆえ心して聞きやれ」
眉間にしわをよせた姫君様の仰ることには、ちょっと色々神様方がそれぞれでお調べになった結果、私の元に災難が異様に集中するのは皆様方のご加護が仕事をした結果だとか。
要するに私の元に何かいい結果を引き寄せる過程で、その対価のように災難を持ってくることでトントンにしている的な。これを解消しようとするなら、加護を外してしまえばいいみたい。だけど加護を外したら外したで、皆様方の加護が複雑に組み合わさったお蔭で、災難に対処できる人材や事柄との縁が薄くなってしまう可能性も出てくるそうだ。
つまり、どうにも出来ない。しない方がいい。そういう結論が皆様方の間で出たそうだ。
Oh……、もう言葉も出ないよね。
「そういうわけじゃから、これからも、その、励め……」
「あ、はい」
つまり、これからも災難は歩いてやって来るってことか。
「にぃにー! しっかりしてー!?」
ひよこちゃんが呼んでるけど、私の喉からは乾いた笑いしか出てこなかった。
お読みいただいてありがとうございました。
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活動報告にも色々書いておりますので、よろしければそちらもどうぞ。




