会議DEブレインストーミング!
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次回の更新は、12/25です。
菊乃井の経営は私がワンマンでやってるって思われてるかどうかは知らないけど、実際そんなことは全くなくて。
多いときには十日に一回、少なくても月に一回は必ず全体会議をする。そうなると全体会議に出る議題に関連する人達は、それに対して各所で意見をまとめるミーティングなんかをしなくちゃいけない。結果、菊乃井は会議が多いことになる。
役所は勿論、菊乃井の商店街、その他関連施設では、私は会議好きってことになってるらしい。
そんなわけない。
足りない情報と知識と周辺状況を擦り合わせしようとすると、一番状況が解る各人から吸い上げなきゃいけないだけなんだ。
識さんとノエくんが来てくれた翌日が、丁度全体会議の日。
かねてよりの案件、町の区画整理なんかは現行の商店街の人達からの意見を募ってる。ようはどの辺に学区を置いて、どの辺に商業施設街があれば便利か、そういう意見を纏めてもらってる。
ただ小さい子たちの通う基礎学校は、冬温かく夏涼しい場所を用意してやりたい。その話は一応ローランさんを通じて、商店街の人には話してもらってる。菊乃井の未来を担ってくれる子ども達の集まる場所。ひいては菊乃井の未来がかかってるんだから、これにはあまり否やは出てないらしい。
まあ、私が「そうしたいんだけど」っていえば公然と反対は出来ないよね。個人的に納得できるかどうかは別として。
空飛ぶ城には大人数が集まって会議できる部屋、即ち晩餐会用の広間がある。
そこに城に備えられてるテーブルを移動させて、お話合いだ。
参加者はルイさん、町の商店街代表のローランさん、歌劇団からはエリックさんと別件でユウリさん、Effet・Papillon商会代表はヴァーサさんで、学校関係代表が大根先生、雪樹の移民代表のラシードさん、宗教関係代表のブラダマンテさん、後はロマノフ先生と私の秘書としてロッテンマイヤーさん。多いな。
議題は春の感謝祭の件だ。
けど、その前に菊乃井の衛兵の制服をレクス・ソムニウムの衣装の廉価版にしたいって言うと。
「あー、俺はいいと思うけどな。衛兵相手に喧嘩売るアホが減りそうだし」
ローランさんが頷く。
なんか、菊乃井で一定過ごせばそうでもなくなるらしいけど、他所から移って来たばっかりの人って、一旗揚げたい感じの興奮状態でくることがあって、それなりに衛兵さんにちょっかいかける人がいるんだそうだ。その度に衛兵は簡単にあしらっているんだそうだけど、それであしらわれていると思わずに態度をエスカレートするのもいるんだってさ。
衛兵さんは私の「冒険者含む一般市民に暴力は絶許」をちゃんと守って、手荒いことをされてもある程度までは口頭注意ですませている。それを見てると、ローランさんは申し訳なくなるらしい。
勿論冒険者ギルドでもそういう態度の悪いのはビシバシ取り締まってるそうだけど、人がい過ぎて対処が追い付かなくなるときがあるんだそうな。
うーん、人の流入の増加の弊害が出て来てしまっている。
ただこれに難色を示したのがヴァーサさんだ。レクスの衣装がEffet・Papillonの主戦力になるから、ではなく、単に生産が追い付かないっていう。
それは同感ではあるんだ。
デザイン画は読み解いたから単なる服としてなら、もう量産は出来る。だけど同じような付与効果を考えるとござる丸の葉っぱから取れる布だけじゃきつい。
衛兵の人数がちょっとずつ増えてるのもある。菊乃井の衛兵、今近隣の青年に人気の就職先になっているからだ。
そりゃ大発生の危険性はあるけども、今現在は全然そんな危うくはないし、何より待遇が結構いい。
でも、布はなんとか出来る当てがあるんだよなー。ただ、どっちを優先させるか。
「疑似エリクサーを作りながら、マンドラゴラ布って出来んの?」
ラシードさんの言葉に、大きくため息を吐く。
それなんだよな。どちらもマンドラゴラに協力してもらわなきゃ出来ないんだ。
因みに、布は葉っぱから紡ぐんだけど、疑似エリクサーはマンドラゴラの皮から作られる。死んだマンドラゴラなら身も磨り潰すんだけど、生きてるマンドラゴラは皮でいいそうだ。
マンドラゴラは十分な栄養を身のうちに貯えると、まず皮が分厚くなり、葉っぱがフサフサになる。つまり脱皮しなけりゃいけないほどの分厚い皮に、フッサフサの物凄い長く伸びた葉っぱは、沢山栄養を蓄えた強くて生命力にあふれたイケマンドラゴラの証なのだ。
これがマンドラゴラ布を作る際、ござる丸が葉っぱを切っておハゲになるのにショックを受けた理由だったりする。
流石に葉っぱも皮も一度に両方提供してもらうってなると、私も彼らにあげる魔力がちょっと不安だしなぁ。
ブラダマンテさんがそっと挙手する。
「魔力に関しては私もお手伝いできますわ。その他の皆さんにもお手伝い願えばどうでしょう? 代わりに魔力を下さった方に、何かお礼品を差し上げるとか……」
「あー……?」
なんか、そう言うのあった気がする。
前世だ。
たしか何か歴史的な資料の保存や、建物の改修で、国や自治体から出る補助金や予算だけでは賄えないのを大きく寄付を募って賄うんだけど、記念品付か無しかを選べたり、寄付した額によって記念品のグレードが変わったり……。
「クラウドファンディングだな」
「それだ!」
そう! それ! そういうやつ!
前世で聞いたことのある資金調達方法の名前に、思わず飛びつく。
でも声を上げた私に、発案者のユウリさんを始め、皆さんの視線が刺さった。やべぇ。私が何でそれを知ってるんだって話になるな、これ。
テーブルに置かれた紅茶を誤魔化すように飲むと、案の定ロマノフ先生がにこっと笑った。これは「何で知ってるんです?」の顔だ。
「その、姫君様が歌劇団を作るにあたって教えてくださった方法に、寄付を募るとかがありまして。異世界では寄付の対価に、その、記念品を渡す方法もあるって……。それが、クラウドなんとかって名前で、はい」
「寄付の対価っていうか、記念品を言い値で買ってもらうって感じだけどな」
ユウリさんがヘロッとクラウドファンディングの説明をしてくれる。
要は企画を立ちあげて、その企画に対する賛同者と出資者を募るってことなんだけど、今回の場合資金じゃないんだよ。
疑似エリクサーに関しての資金は公爵家が大半を担ってくれることになっている。代わりに菊乃井はマンドラゴラの栽培を請け負う。
マンドラゴラ布に関してもかなりの値段が付けられるし、その値段でも欲しいって人がかなりいるので元は取れる。
今回入用なのはお金より、寧ろマンドラゴラに与える魔力なわけだ。
と、すれば。
「魔力を融通してくれた量によって、疑似エリクサー一つをお礼に差し上げる、とか?」
「Effet・Papillonの商品を一つ差し上げるなどでもいいのでは?」
「歌劇団の一番いい席を確保するなど、色々考えられることはあるかと」
ロッテンマイヤーさんやルイさん、エリックさんからも意見が出て来た。
初心者冒険者のためにほんの少しの魔力で、スキルアップ研修が受けられるようにするって案も。
「それならば鳳蝶殿の魔力は菊乃井領の兵士のために使い、公益性の高い疑似エリクサーに関して、そのクラウドファンディングなる制度を使用すればよいのでは? 疑似エリクサーは研究と備蓄が進めば、菊乃井領や帝国だけでなく世界を救うことになる。その研究に協力したと公に口に出来るのは、名誉が欲しい者には願ってもないことでは?」
ちょっと皮肉な感じだけど、大根先生の言葉はそれなりに名誉が欲しい人達の心も擽るだろう。モノはともかく名誉程度で色んなものが釣れるなら、易いし安いと言えばそうだな。
そういう訳で、一つ議題が前に進んだ。
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