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白豚貴族だったどうしようもない私に前世の記憶が生えた件 (書籍:白豚貴族ですが前世の記憶が生えたのでひよこな弟育てます)  作者: やしろ


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大小の恋のメロディー

いつも感想などなどありがとうございます。

大変励みになっております。

次回の更新は、8/1です。



 カフェを兼ねる歌劇団の劇場では、去年の冬から公演記念メニューなるものが発売されたり、歌劇団員の好きな焼き菓子が詰められた小さなボックスが発売されている。

 そういうお土産は公演終了後も、併設のお土産屋さんで買えるので、後で覗きに行くとして。

 リートベルク隊長には劇場の入退場口に立ってもらって、そこで警護。

 私達は客席についた訳だけど、警備の都合上四方の席を一つか二つ使用停止にしているもんだから、周りの観客からは少し嫌そうな顔をされた。それでもそこに座るのが私だと気づいた人から「ああ、そういうこと……」的な視線に変わって行く。

 はい、そう言う事なんです。私は今お忍びなんで、よろしくお願いしますね?

 背中にそんな雰囲気が乗せられたか解んないけど、観客の目線が随分和らいだのは確かだ。

 ざわつきが少し薄れたころ、支配人のエリックさんと演出家のユウリさんが二人揃って挨拶に来てくれた。

 お忍びなのであまり仰々しくせずっていう言葉通り、「お楽しみください」「ありがとう」くらいの会話で終わったけど、なんと公演が終わった後お茶の用意をしてくれてるそうな。

 これに喜んだのがゾフィー嬢だ。公演記念メニューを歌劇団のファンとして食べてみたかったんだって。

 しかも今回の公演記念メニューはゾフィー嬢の推し・シエルさんが好きなイチゴの載ったプリンなのだ。ゾフィー嬢の喜びようよ……。

 そんないつになくはしゃぐゾフィー嬢に統理殿下は「可愛いなぁ」って呟くんだよ。蟻が集りに来そうなほど甘い。

 私の表情に思うところがあったのか、シオン殿下から「岩塩あげようか?」って聞かれたけど丁重にお断りした。

 っていうか、なんでシオン殿下岩塩持ってるんだろう?

 レグルスくんと和嬢は隣り合って座って、歌劇団の説明をしてるみたい。

 時々「シエルくんが……」とか「みそらさんが……」とか、劇団員の名前が聞こえて来て、それに和嬢が「まあ! すてきですね!」とか「キラキラのおいしょうもとてもきれいですね!」とか、そう言うドキワクしたような声が上がる。

 おお、良い感じじゃん? やだー、いつの間にデートで女の子をリードするなんて出来るようになっちゃったのー!? あー! 弟とお友達の女の子が尊いんじゃー!

 こっちがムズムズドキドキしちゃうったら。

 私がなんかドキドキしながら見ていると、それに気づいたのかレグルスくんがこちらを見る。そしてにぱぁっと笑ったかと思うと、和嬢も私に気が付いて同じく少しはにかんでにこっとしてくれた。

 はう、可愛い……!

 そんな二人に「もうすぐ始まるからね」と声をかけて、私はぐいっと視線を二人から舞台に向ける。仲良くやってるんだから、お邪魔するのよくない。後は若い二人でって感じ。

 舞台の幕が開いて、照明が徐々に落ちていく。隣のシオン殿下が、ほうっとため息を吐いた。

 小さな劇場でも、ここには魔術が掛けられていて、帝国劇場の舞台と変わらず豪華なセットがあるように見える。それだけでなく生演奏だし、演奏家の腕も帝国劇場の抱える楽団と遜色ない。

 シオン殿下のため息はそう言う事なのだろう。

 開幕のアナウンスが、劇団員の声で──華やかで元気のある声はステラさんかな? 劇場の中に響き渡る。そして拍手と共に完全に照明は消え、舞台の幕が上がった。



「劇団員さん全員で踊るダンスですけれど、何故あんなに一糸乱れぬ動きができるのかしら?」

「そうだねぇ。でも僕としてはあの……ラインダンス? 一直線に並ぶやつ。あれも揃ってて素敵だったと思うよ」

「俺は男役全員の合唱が良かったかな。あまりに勇壮なダンスだったから、全員女の子だというのを忘れてしまってたくらいだ」

「わたくしは、あの、さいごのおふたりのダンスがすばらしかったとおもいます! おとぎばなしのきしさまとおひめさまのようでした……!」


 そうだろうそうだろう。

 ゾフィー嬢やシオン殿下、統理殿下に和嬢のそれぞれの賞賛に、私も鼻が高いってもんだよ。

 公演はつつがなく終わった。

 ダンスと歌中心ということで、いつもより公演時間が短かった分、カフェとお土産屋さんの開店時間は少し長めにしてあるそうな。

 私達はエリックさんとユウリさんの好意のお茶会で、現在公演の感想を言いつつ盛り上がってる。

 今回は異世界の曲だけでなく、帝国やその他の国の音楽や流行り歌を取り入れての舞台に仕上がっていた。

 ダンスも歌も、もう帝都公演の頃より切れ味が上がってる気がする。それは私だけの実感じゃなく、帝都公演を観ていた殿下方やゾフィー嬢、和嬢も想ったらしい。


「来年の帝都公演も楽しみだな!」

「本当ですねぇ。いやー、マリーも見たがるだろうな」


 ニコニコと皇子殿下二人が笑い合ってる。

 ちょっと前まではそれが出来ないくらい緊張があったというか、無理に強いられていたけれど、今やそんなもの見る影もない。そうなったのは私が話を聞いたからかもしれないけど、切っ掛けはマリアさんやゾフィー嬢の勇気と二人の皇子に対する気持ちなんだ。

 友愛も親愛も、愛は愛。

 愛は世界を救えないけど、世界を救わんとする切っ掛けにはなるんだ。

 ぼんやりとそんな事を考えていると、レグルスくんがバラのジャムが中央に配されたジャムクッキーを和嬢に、大皿から取り分けてあげている。

 それを少し齧った和嬢の白い頬っぺたが、ふわっとピンクに染まった。美味しかったのだろう。黙々と食べて、それからグラスの中のアイスフルーツティーを一口。

 一連の動作もとても可愛らしく、滲み出る上品さにこっちまで頬が弛む。

 微笑ましい光景に、ついて来てくれていたヴィクトルさんもラーラさんもほっこりしていた。

 そしてグラスを優雅にテーブルに置いた彼女は、ほうっと感嘆の息を吐く。


「あもうておいしおす」


 んん?

 全員が何かしら動きを止める。

 今、可愛い声で訛らなかった?

 そんな皆の反応に、和嬢の思わず言っちゃったという顔からさっと血の気が引いて行く。


「わ、わたくし、おぎょうぎのわるいことを……」


 慌てて泣きそうになる和嬢だったけど、別に訛ったくらいどうってことない。

 それを伝えようと口を開く前に、レグルスくんがにっこり笑って和嬢の小さくて華奢な手を取った。


「いまの、すごくかわいかった! なごちゃん、もういっかいいって?」


 そう言われて、和嬢の目に溜まってた涙が引っ込む。驚いたのか瞬きを繰り返すと、こてりと可愛く令嬢は首を傾げた。


「かわいい……? なごちゃん?」

「なごちゃん、いまのかわいかった!」

「なごちゃんとは、わたくしのことですか?」


 和嬢が驚いたようにきょとんと瞬きを繰り返す。


「うん。れー、いつもこんなはなしかたで、なごみじょうのことも、なごちゃんってよびたいなっておもってるよ。だめ?」

「いままでのは……」

「なごちゃんとなかよくなりたいから、かっこつけてた!」

「そうなのですね……。わたくしも、いまのレグルスさまのおはなしのされかた、かわいいとおもいます……」


 ぽっと和嬢の頬っぺたが赤く染まる。

 ヤバい、エモい、尊い。和嬢も可愛いけど、うちのひよこちゃんときたら!

 レグルスくんと和嬢がにっこり笑顔で手を取り合ってるとか、なんのご褒美なんだろう?


「やるなぁ、レグルス」

「本当に……。まるでお芝居に出てきそうな紳士ですわね」

「俺も常々ゾフィーを可愛いと思っているし、ゾフィーに良く思われたくて格好つけているが?」

「まあ! 私も殿下に見合うよう可愛く美しくありたいですわ」


 感動に打ち震えている私の傍で、未来の皇帝陛下とその奥方様が盛り上がってる。

 シオン殿下がジト目で呟いた。


「……ねぇ、僕ら何見せられてるの?」

「…………さぁ?」


 レグルスくんと和嬢の可愛さしか、私、見えてませんので。

お読みいただいてありがとうございました。

感想などなどいただけましたら幸いです。

活動報告にも色々書いておりますので、よろしければそちらもどうぞ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 兄→弟、弟→兄の目線の差ですよシオン殿下... 普段から可愛がってる子の可愛さがマシマシだったらきゅんきゅんするだけで岩塩はいらないですねぇ(笑)
[一言] ちびっこたちがただただかわいい回だった…。
[一言] なごちゃん嬢、かいらしおすなぁ…(*´ω`*)
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