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ファルネイア図書館

芽、出さしむる日

作者: 草屋 伝

 本日は、国際情勢まだ収まらぬ中、各位お集まり頂き、誠に御礼申し上げます。

 ただいまご紹介に預かりました、ハインリ・フランツァルト・フォン・リウトブルグであります。


 我がリウトブルグ家は、かの伝説の「学徒同盟」の本拠地となりました、ファルネイア図書館の最後の当主、ソフィア・ラ・デュケッサ・ダ・ファルネイアとガルマニアの公爵、フランツ・フォン・リウトブルグの流れを汲み、今回の会の発足は、両者の長年の悲願でもありました。


 思い起こせば、文化文明が花と開いた古代ラティーナ帝国の崩壊後、この地の人々は、生き延びるための日々に身を投じることとなりました。

 その後各地に国家が建設され、身の安寧をそれなりに取り戻した時には、帝国の恩恵たる知恵と技術は半ば失われていたのであります。


 そんな中、帝国の貴重な書物を保管し続けたファルネイア図書館の発見はまさに福音とも言うべきものでありました。

 それを成し遂げた公子フランツは、「祖国一国でこれを独占すべきではない」と周辺諸国の力添えを得て、かの「学徒同盟」を発足させたのであります。


 時は、血で血を洗う群雄割拠の時代。国と国との間に横たわるものは、陰謀と不信しかありませんでした。

 そんな中、ファルネイア図書館を中心とする「学徒同盟」では、真実の探求と学問の推進、お互いの協力と信頼が、世界から見れば微々たるなるものながらも育まれていったのであります。


 そんな中ファルネイア図書館もかの過酷な時代おいて心無い人々による焼き討ちに遭い、所蔵する書物を守るため、当主ソフィアは同盟に参加した各国への「分散保管」と言う苦渋の決断をしたことは、皆様ご存知のことでありましょう。


 各国の学問はそれ以降花開き、それぞれの研鑽により、より高度に発展したものへと成長して行きました。

そして陰謀と不信の時代を超え、平和と学問の名のもとに協調の流れが世に現れ出した今、各国での学問の成果をここ一堂に会し発表をする場としての世界研究学会がここに発足することは、この流れを世の理とした先人たちの想いをまさしく正しいものとするものであります。


 ……この会発足にあたり、いまだかつての不信に囚われた人々の間奔走してくださった方々には、感謝の念しかありません。ここに謹んで、かの方々への謝意を表したいと思います。


 この先にも、かつての悲劇や苦難による恨みが行く手を遮ることがあるやもしれません。その際に私は、我が祖先、フランツ・フォン・リウトブルグの言葉を引用したいと思います。



”年月を超えた日々の雨は、固き土壌にすら、芽を出さしむる”



 ……ここに、「世界研究学会」の、発足を宣言いたします!


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