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第5話、莉里那の思惑

莉里那視点です。




 ◆



 異世界は好き、だってそこには夢があるから。

 便利な魔法を使ってみたい。冒険者になって、小説の登場人物のように活躍をしたい、必要とされたい。


 だからお兄ちゃんに嫌われたと思ったとき、大好きな異世界に逃げ出したかった。

 でも私ももう中学二年生。学校では嫌と言うほど進路進路と言われ続け、ちょうど私もこのままではダメかなと思っていた。

 そんな風に思っていたのに、お母さんからも進路と言われて腹が立ち、言い合いの喧嘩になった。

 だからその時、私の鬱憤が言葉として外に出る。

 私は誰からも愛されていない、必要とされていない、と。

 そんな私に反論するお母さん。私のことを愛しているし、必要としていると。

 そして言った。お兄ちゃんも私のことを大切に思っていると。


 お兄ちゃんも?


 その言葉を信じられなかった私は、お兄ちゃんが中学生になってから無視され始めたことを言った。

 それに対してお母さんは、それはどこかで誤解をしている。現に今も私の成績を、私の今後を心配してくれていると言った。


 それを聞いて私は考える。

 本当に嫌っていないのならなぜ? なぜ急に距離を取ったのか?

 そこで閃き、お母さんに提案する。

 私とお兄ちゃんが元のように仲良くなる協力をしてと。それは私に勉強を教えるという名目での、お兄ちゃんの個人授業。


 お母さんとしてはギクシャクしている兄妹が仲良くなり、しかも私の学力が上がるのなら断る理由はない。

 もしお兄ちゃんがこの提案を受け入れるのなら、勉強を教わる中で聞いてみよう。

 私のことをどう思っているのか?


 そして今までが私の勘違いで、もし、もし好感触な答えが返ってきたら、その時はずっと好きだったこの気持ちを伝えたい。



 初めて私にお兄ちゃんが出来た時のことを思い出す。

 人と違った見た目なため稀有な目で見られ、対人恐怖症になっていた私は、優しいお兄ちゃんがすぐに好きになった。

 お兄ちゃんはいつも私の前を歩いて守ってくれるから、お兄ちゃんも私のことが好きなのかなとドキドキしてついて行った。

 そして暫くして、血の繋がらない兄妹なら結婚が出来ることを知って、もっともっと好きになった。


 でも突然、お兄ちゃんが中学生になったある日、お兄ちゃんは私から距離をとるようになった。


 そして現在、私の部屋に来てくれるお兄ちゃんは、お母さんが言うように昔と変わらない優しくて私のことをちゃんと考えてくれているお兄ちゃんだった。

 悪戯心で始めた催眠術も、わざと掛かっているフリをしてくれている。

 調子に乗りすぎて私の想いがバレてしまったかなと思った時もあったけど、にぶにぶなお兄ちゃんは全く気付いていない。


 それとお兄ちゃん、本当に催眠術に掛かってしまっていることがあることも気付いていないみたい。

 だから私に抱きつかれたり、頬っぺにだけどキスをされたことも覚えていない。

 そしてそして、無意識状態で私の質問に答えていることも。




 それは昨日のこと——


 お兄ちゃんが催眠術にかかったフリじゃなくて、また本当にボーとしだした。


「ニィーニ、ニィーニ」


 この状態になると、こちらからの呼びかけには応じないけど質問には答えてくれる。

 そして私は、意を決する。

 長年聞きたかった、あの質問をぶつけてみるのです。


「ニィーニ、どうしてリリィを無視しだしたの? 」


 答えてくれない。

 それは質問の仕方が悪かったから。

 私の質問の意味をお兄ちゃんが理解出来なかったから。

 なら色々と言いかたを変えて、何度も何度も質問を繰り返していく——


「ニィーニが中学生になった時、どうしてリリィから距離を取ったのですか? 」


 例えお兄ちゃんが覚えていなくても、質問が正確なら潜在意識の部分で答えてくれるはず。


「それは、意識してしまったから」


 お兄ちゃんが答えた!

 一気に私の手が震えてしまう。


「……なにを? 」


 絞り出すようにして質問をした。

 だってこの後に返ってくる言葉によって、私は天国か地獄のどちらかを味わうことになるのだから。


「私は莉里那を本当の妹だと思って接してきた。でも——」

「……でも? 」


 心臓が跳ねるように鳴り続けるため、身体が壊れそうになり、苦しさで前屈みになってしまう。


「私はたまたま脱衣所で見てしまった」

「それは、なにを? 」


 でもよほど言いにくいことなのか、そこで言葉が止まってしまった。

 だから、再度促す。


「ニィーニ、そこでなにがあったの? 」

「私は下着姿の莉里那を見て、興奮してしまった。欲情してしまったのだ」


 え?

 ……そう言えば私が小学校の高学年の時、お兄ちゃんが中学生になったばかりの時、お風呂に入る前にお兄ちゃんが来たみたいで、一瞬だけ扉が開いたのを思い出す。


「だから距離をとった。時間が経てばこの間違った気持ちも薄まると思ったから」


 間違った気持ち?

 私はゴクリと生唾を飲み込み、思い切って聞いてみる。


「その間違った気持ち……って? 」

「それは——」


 心臓の鼓動が、期待を込めてトクトク早くなっていくのがわかる。


「莉里那を異性としてみてしまう気持ち」


 お兄ちゃんが私を女性として見てくれていた。

 その事実が嬉しくて、嬉しくて、鼓動が早鐘を打ってしまい呼吸が荒くなる。お腹の奥がキュンキュンして、全身もじんわり暖かくなっていく。


「でもダメだった。時が経っても私は気がつけば、莉里那を異性として見てしまう。……私は駄目なニィーニなんだ」

「そうだったんだ、だから腕組みしようとした時、リリィから距離を取ったのですね? あの時は、とても悲しかったのですよ? 」

「……悪いことをした」

「ニィーニは悪くないです。それにニィーニはリリィを異性としてみていいのですよ? 」

「莉里那を……異性として? 」

「はい、そうなのです! 」


 むしろ異性として見て!

 そして私を見て、想って、ドキドキして!

 私はいけないことをしていると思いながらも、それから何度も何度も暗示をかけていった。

 お兄ちゃんが私のことを、異性として見るように。



 そして翌日である今、お兄ちゃんは私の前で椅子に座っている。

 今までは勉強を教えに来てくれる関係が心地よくて、この関係が壊れてしまうことを恐れて踏ん切りが付かなかった。

 でもお兄ちゃんが私の事を嫌っていない事を聞けた今なら、聞ける気がする。


 と、五円玉を目で追っていたお兄ちゃんがうつらうつらと催眠術にかかったフリをし出した。


 心音が高鳴る。

 手が震えてしまう。

 でも聞く、今から聞く。


 本当は起きているお兄ちゃんに、私の想いを伝えて、出来たら返事も、……これから貰う。

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