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9-4.転生チート

「まあ、あの都子さんがまるで死ぬ前のオレとタメくらいの、しかもオレよりマッチョな男になってたのはビックリしたけど。それは、僕だって女の子に転生してるわけだしね。人のこと言えないワケだよ」

 カラカラと笑っている。


 何とも言えなくて私が黙っていると、サラが口をそっと挟んだ。

「アークとアキラ…どっちで呼べばいいのかしら」

「アークでいいです。明は僕の一部ですが、今はアークとして生きているので。――まあ前世の人格がそのままなおかげで、女の子の友達はうまく作れないし、男の友達はすぐ僕に恋愛感情抱いてくるから逃げなきゃで、ものすごい不自由してますけど」


「――わ、わかる……大変だな、キミも」

「ミャーノ、あなた男友達はちゃんと作れてるわよ?」


「都子さんは元々女の人にモテて、男には全然だったけど。戦友ってカンジの男連中とは連携すごい取れてたもんね。ミーネさんやビラールさんの感じだと今でも変わらなさそうだ」


 だからそれどんな都子だよ。30代に何があった、都子(わたし)

 ――しかしその人物像、ガラシモスが語っていた鈴蘭の騎士の方が近くはないか?


「都子さんは、ミヤコさんて名前はたぶん、伏せてんだよね?」

「ああ。サラがつけてくれた使い魔としての名前、『ミャーノ』が、この身体と魂を統括している」


 名付けの効果については使い魔の目録にそう記述があった。

 使い魔は召喚された時に、主人に名を与えられる。

 その名は、影法師のごとく存在が曖昧な使い魔にとっては、この世界に定着するための(くさび)なのだ。

 と。


「じゃあ、僕もミャーノさんって呼ぶよ。アークと同じ世界に来てくれたのは、ミャーノさんだから」


「アーク、あなたも王都へ行くのよね。王都へ着いたら私たちは王軍に入る試験を受けにいくのだけれど、あなたは? 私が訊いていいのかわからないけど、ご家族は……ご実家はあるの?」

「アークの生みの親と兄弟は普通に生きてます。僕は五人兄弟の次女で、上と下に男女一人ずついるんですが、そんな感じなんで僕は気ままに旅に出たのです。定期的に手紙は実家に送っていますから、心配はしてないと思いますよ」

「心配そのものはしているでしょうけれど――そうね。手紙を受け取れれば、その時は安心できていると思うのだわ」

「王都についたら、(いち)で錬金術で錬成したアイテムを売って商売でもしようかなと思ってました。僕、転生チートで錬金技能がべらぼうに高いのです」

「転生ちーと?」


 アークは少なくともサラと話してる時はファールシー語を使っているようだが、その中にちょいちょい日本語や英語を混ぜて喋っている。

 普段はそんなことはしないのだろうが、つい私向けに喋ってしまっているのだろうか。


「我々の世界の都市伝説にある概念でして。異世界に転生した者は、その世界において他の同種の生命体よりも優れた能力を持つことになる……と楽しいよね……という考え方です。そのケースを端的に俗語で『転生チート』と表します。『チート』自体は本来、世界の(ことわり)を歪めて己の都合のいいように処理をすることを指す言葉です。転じて――世界を司る神的存在から、(ちょう)を受けている状況を指すわけですね」

「へぇー」

「相変わらず、都子さ……ミャーノさんが解説すると物凄く大仰なことに思えるけど……僕の、そんな大袈裟なチートじゃないからね?」

「いや、割と大袈裟なチートでは? キミのあの行李(こうり)も、きっとその錬金術アイテムなんだろう? サラやベフルーズも大概――あ、ベフルーズというのはサラの叔父でな――国でトップクラスの魔術士だと思われるが、あの行李はメシキの森由来(彼ら)の魔術では実現出来ないのではないかな。――そうですよね、サラ?」

「そう……! それね! 圧縮とは根本的な理論が異なるわ。時空間を固定する魔術も錬金術も、完全に未知よ。あなたの流派は――あなたはどこでそれを学んだの?」

 私は、彼がチートだと言った時点で何となく予想がついていた。


「えっと……最初から、知ってたというか。『こういうものがほしいな~』と思ったら、それを実現する術式理論が検索されて答えが出てくるっていうか……あ、でも、僕が明の時に知っていたものしか引っ張ってこれないですよ?」


「はあ?」


 サラが「何言ってんのこの子」という胡乱な瞳でこちらを見てくる。

「アーク。2030年代には、あっちにこの『異次元行李』があったんだな? 仕組みも公開されていた?」

「うん。もちろん、オレはそんな高いモノ触ったことないんだけどね」

「なるほど、22世紀を待たずに誰かがやらかしてしまったと……いや、22世紀には庶民が手にできるほど製造コストが下がったのかもしれないなあ……」

 潜水艦にしろ巨大ロボにしろ、初出が空想科学だったものが後にファンによって実現することは珍しくない。

「ミャーノ、どういうこと?」

「あっちの世界――明や都子がいた宇宙のほうですね。そちらの、我々がいた時代には、えっとですね…仮想空間というものがありまして。世界中から、その空間に、色んな情報が投入されていたのです。その中には特許などの詳細もあったでしょう。我々は、自分が覚えきれないことや、知らないことを、仮想空間の記録を併せて己の記憶に準ずるものとして扱うことができたのです。もちろん、閲覧権限は人によってレベルが違うのですが」

「ああ、そうそう。あっちのネットで検索して結果をカンニングする感じです。だから探し方が曖昧だと、間違った結果が出ることもあるんですよ」


神智文殿(アカシック・レコード)――」


 サラの呟いた、耳に覚えのあるワードに、今度は私とアークが顔を見合わせる番だった。

 そしてほぼ同時に、苦笑いする。


「いや、仮想空間(ネット)に関してはそんな神秘的なものではないのですがね?」

「僕のは違うと思うけど、あるはあるんですね、アカシック・レコード……ホントすごいな、剣と魔法の世界ってやつは」


「――あなたたち、血は繋がってないし、この世界では会ったばかりなのに、その表情そっくりね。しっかり義理の親子やってたんじゃない? ミャーノ」


 神秘に震えていたサラは、我々を見て毒気を抜かれたように、そうコメントした。

行李の解説というか

アークくんの説明回ここまでです。


わりと急展開なんですが大丈夫ですか。

これくらいなら全然許容範囲とか範囲じゃないとか色々参考にさせていただきたく たく


2019/3/24 19:20ごろ 最初の方のサラのセリフ内の「明」表記を「アキラ」に修正しました。

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