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5-1.ジ・エンド・オブ・離れ離れ

「おかえりー!大丈夫だった?大丈夫だった?」

「ただいま戻りました、サラ」

 サラは玄関のポーチで出迎えてくれた。ああ、外で待ってくれていたのか。

 申し訳ないなと思いはしたが、それはそれとしてなんだか心が温まる。


「今お茶入れるから。薔薇の実(ローズヒップ)のハーブティーは平気?」

「ええ、好きです。ありがとうございます」

「よかった。叔父さんは一緒に飲んでくれないのよね」

 そういえば、私の知る限り男性でローズヒップティーが好きだと言う人はいなかった気がする。

 あの酸っぱいビタミンC感は、飲み続けるとクセになるのだがなあ。

「サラ。こちら、りんごです。ロス君が、エミネ農園でしたか、教えてくださいました」

 袋ごと、りんごとびわを渡す。

「わーありがと。いくらだった? …あら、びわも買ったのね」

「おまけしていただきまして。200銅貨でした」

 厳密にはりんごの方が一つおまけなのだが、まあよかろう。

「じゃあ、はい」

 サラがキッチンの引き出しから100銅貨を2枚取り出し、私に握らせる。

「重曹のほうもちゃんと、叔父さんからお代もらうのよ」

「はい」

 食材だったり生活用品だったりするのだから、私の財布からで構わなかったのだが。

 主人の言うことは聞くことにした。


「それで、どうだったのかしら?」

「まず、サラの方には特に影響はありませんでしたか」

 先にそれを確認したい。

「何も変わったことはなかったのだわ」

「それは安心しました。――私の方は、やはり違いが出ましたよ」

「大丈夫じゃなかったのね」

「ああ、倒れたりはしていません。実はこれまでサラといた間、疲労を感じることがなかったのですが、今日は違った、というだけです」

「街で何してたの?」

「自警団の訓練場をお借りして、少し…自主練を。とはいえ、息が多少上がった程度で、それもすぐに回復しました」

「はぁ、なるほどねえ」

「この身体は元々がそもそも耐久力や持久力が高めのようです。それが、サラの使い魔としてサラの傍にいることで、増しているのではないでしょうか」

「へぇ…」

 私の腕や肩をぐにぐにと指圧してくる。

「サラ、何を?」

「いやあ、乳酸が溜まらないってことなら、筋肉痛にも悩まされないんだな、この筋肉め…と思って」

「鹿狩りの翌朝、サラは筋肉痛で大変でしたからね」

「そうよ。いいなあ、私の使い魔だからミャーノは疲れないというのなら、使役してる私の方は普通に疲れるのは理不尽なのだわ」

 気持ちはわからなくもないから、筋肉いじめは好きにさせた。

 今日は誰に会ったか、何を食べたか、なんていう何でもない話を、お茶を飲みながらする。

 大したオチもない、ありふれた日常の話。


 元の世界では、家に帰ると一人だったので、家の中でこんな話をするのは――小学生以来かもしれない。

 そんなの、大人なら当たり前のことなのに、泣きたくなる。

 この身体(ひと)が涙もろくなくて、本当に助かった。

 ……この身体(ひと)の人生が騎士として()ったのなら、泣きたくても泣いてはいけなかっただけなのかもしれないけれど。


 お茶を飲みきって、窓の外が夕焼けに染まるころ、ベフルーズが帰宅した。

「お帰りなさいませ、お疲れさまでした」

「おかえりー」

「おー、ただいま。おまえらー、今晩は鹿のフィレステーキだぞ~」

「ついに!よっしゃああああッ」

「うわっびっくりした」

「なんじゃお前突然、びっくりした」

「すみません、私もびっくりしました」

 思わず「ミャーノ」に似つかわしくないガッツポーズと気合の声が出てしまった。

鹿肉のフィレステーキのソースってどんなのがあるかな、と思って検索してみたところ

ハスカップソースが美味しそうでした。(レシピはエゾ鹿のものだったけど)


なお、別に次回は鹿肉料理番組は始まったりしません。単に僕が美味しそうなものを検索したかっただけです。


僕はローズヒップティーのストレートは好きじゃないですが、蜂蜜をたっぷり入れたものははちみつレモンっぽくて美味しかったです。

ストレートだと酸っぱいんだもの……。

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