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4-9.トライ・離れ離れ

 朝食はフライドポテトとハムステーキ、スクランブルエッグだった。

 今回の調味料は塩だけだが、このメニューに関して言えば外れがない。


 どうやらバニーアティーエ家では、朝食はサラ、夕食はベフルーズという担当のようだ。


「少々試したいことがあるのですが、二人とも」

 何?というきょとんとした顔だけを無言で向けられた。

「使い魔というのは、主人と離れた場所にいっても活動できるものなのか、なのですが…」

 そう。実はこれまでサラとはまず50メートルを超えて離れた実績がない。

「せめてこの家から街までの距離くらいは、試しておきたくてですな…もちろんサラを街まで単独で往復させるのは危険ですから、移動するのは私です」

「あー、じゃあ俺と一緒に街に行って、しばらく滞在してから帰ってくればいいんじゃないかね」

「え~、その間私一人じゃないのよぅ…」

 サラは「仕方ないか」と呟くと、承諾してくれた。


「では行ってきます、サラ」

「戸締りはしとけよー」

「わかってるって。行ってらっしゃい」

 エプロンを着けたままのサラに見送られると、気分は新婚だ。ベフルーズも一緒に見送られてるけど、それはそれ。

「使い魔と主人の間には、テレパシーのような便利機能はないのでしょうか」

「専用のは知らんが、通信はやれないこともないぞ。ただ、受信する側も魔術で術式組んでおかないといけないから、お前には使えないな」

「アップル殿が使えなかっただけで、私が使えないと決まったわけではありますまいに…」

「……昨日の講義じゃあ解説しきれてなかったけど、魔法で構成された存在が魔術の術式組むことは不可能だって言われてるんだってば。やめておこうぜ……? な…?」

「…でも理論を知るのは構わないでしょう?」

「知ったら試したくなるのがヒトのサガだぞ」

「…………むぅ」

 男性の身体がどこまで男性の身体なのか自分でこっそり確認していた私は、それに反論するのはやめた。

「なんだ、最近何かに興味本位で手を出して失敗したりしたのか?」

「……まぁね。でもこんなお天道様の下でするような話でも思い出す内容でもないのでほうっておいてくださいませ…」

「……なぁもしかして、()()の調子悪いんか」

「え? いえ、すこぶる栄養状態も良く…?」

「違う違う、――シモの話だよ。使い魔の身体じゃ、いつもの調子でやってもヌケなかった、とか?」

 冗談めかして、訊いてくる。心配そうな口調でもあったが、私にしてみたらとんでもない確認が降ってきた。ベフルーズは何でもないような顔で、サラはいないしいいだろ、と続けている。

 何一つ良くない。

「えっ…なんでわか…じゃない、私何か不審な挙動か何かしてましたか…?」

 口が滑ったと思った時には手遅れ。

 訂正させてもらえるなら「いつもの調子」じゃなくて「はじめて」だけど、そんなことはもっと言えない。元々男だったからやってみた、なら真面(まとも)である。

「図星かよ? いや、バレてない、バレてない。でもわかるよ、ヌこうと思った時にヌケなかったらストレスまで溜まるもんなあ」

 うっ…おやめください! 男同士だと思ってるベフルーズに罪はないんだけれど、そんな話を男の人から聞きたくないの!

 何とリアクションすればよいのか困って黙ってしまった私を、落ち込んでいると勘違いしたのか、さらにフォローを入れてくる。

「えーっと、勃ちはしてただろ? 出そうで出ないのか?」

「…………出そうな感覚まで到達できなかったのです」

 もうどうにでもなれ……。精一杯言葉を選ぶ。

「じゃあ、たしか性感調整の魔術があったはずだから、こっそり調べといてやるよ」

「なんですかそのいやらしい魔術は」

「一応治癒魔術な。ガキみたいな反応してんじゃねーよ」

 残念ながら、男としての人生は一週間未満だから、ガキにも劣るんですよ!


 サラから、「元が女であること」は他の誰にもベフルーズにも秘密にしろと厳命されているけれど。

 もはやベフルーズには、別の意味で絶対にバレたくない段になってしまった。


 街に着いた。歩行運動には支障は出ていない。

 学校までベフルーズを送っていき、自警団の詰所へ向かった。

 訓練場を使わせてもらえないかなという期待、そして、有事の際に協力すると言っている手前、明日から二、三日留守にすることの報告である。


 詰所の受付には、予想通りミーネがいた。

「ご不在の旨、承りましたわ。教えてくださり、ありがとうございます」

「いえ、元々お手伝いできていない身ですが」

「ご協力をお願いしないといけない事態が再来していないのはよいことなのですわ。…今日はお一人ですのね?」

「ええ。私はおつかいで」


 方便だ。何か名目が欲しいから(つか)(ごと)はないか、とサラとベフルーズに訊いたら「りんご3つ」「んじゃ俺からは重曹1500gを頼む」と実に適当かつ地味に重たい用事をもらった。特にベフルーズ、アンタだよ。


「ところでミーネ、訓練場を少し使わせていただけませんか? 少し身体を動かしたくて」

「もちろん構いませんわ。ご案内しますわね」

「すみません」

 今日はアリーやサイードはおろか、人がそもそもいないから、ということでミーネについてきてもらった。

 街の警備も、人手足りてないんだろうなあ。


「どうぞ、掛けてある木剣なども自由にご利用ください。私は受付におりますから、いつでもお声掛けくださいね」

「ありがとうございます」

 人手不足のところ申し訳ないが、人目がないのは都合が良い。


「……では、試してみますか」

主人公の事情が事情のため、男性キャラ女性キャラいずれと関わっても怒られないように、と

〔ボーイズラブ要素〕〔ガールズラブ要素〕の注意書きを入れさせていただいていますが、

聞いたところによるとBL界隈では男体化した女性と男性キャラが関わるのはBL案件と認められないとかなんとか(どうなんでしょう?)。


継続して読んでくださってる方は、はたしていずれも大丈夫なんでしょうか?この小説…

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