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1-3.主従、街へ向かう

 気が付いたら文字通り裸一貫で見知らぬ少女の目の前にいた自分はあれよあれよと言う間に服と靴を貸し与えられたけれど、このままだとごはんまでご馳走にならざるを得ない件について、その少女に問うたのだが、彼女にはおかしそうに笑い飛ばされた。

「当たり前でしょう、使い魔の生活費は主人持ちに決まってるわ。」

「サラ、そもそも使い魔がどうとかいうのが私にはよくわかっていないのです。」

「あれ、そうなの?じゃあ歩きながら説明しよっか。ああでもそれならまず言っとかないといけないことがあるわ、ミャーノ」

「はい」

「さっきは叔父さん――ベフルーズには普通にあなたを使い魔として紹介したけれど、身内だから、だからね。せっかく人間の形なのだし、対外的にはウチの居候…いいえ、私の又従兄(はとこ)ってことにしましょう」

「すみません、サラの姓はなんでしたっけ」

「バニーアティーエ。叔父さんもベフルーズ・バニーアティーエだし、あなたも“ミャーノ・バニーアティーエ”と名乗っていいわよ。まあ街の人には『ミャーノです』だけでいいと思うけど」

「わかりました」

 それでもバニーアティーエという姓を反芻する。

 先ほどの石蔵ではなぜ私は彼女の名前を知っていたのだろう。


「使い魔は、さっきも言ったけど、人間ではないわ」

 小さな門から出て、道に出る。コンクリートではなく、石の道が伸びていた。

「あなたがいた世界はここではないのでしょう?元の肉体と違う分子で再構成されているはずよ」

 手を見る。元々の自分の肉体でないことだけはわかっていたが。世界?再構成?

「私も驚いているのよ。あなた人間にしか見えないもの。皮膚も瞳もまるで私たちと同じ本物みたい。でも違うはず。魔物みたいに動植物とは根本的に異なる物質で構成されているらしいわ」

「魔物と言いましたか」

「あら、気に障った?うーん、『魔』って世界によってはいい印象じゃないという話を聞いたことがあるけれど、あなたの世界はそうだったのかな?」

 変な表情をしていたのだろうか。

「そうですね…あの、サラ。さっきから少し気になっていたのですが」

「なぁに?何でも聞いて!」

「私が話しているのは“()()”でしょうか…?」

 ああ、とサラがニッコリとする。

「そうよね、さすがに気がついたわよね。あなたの母語がどんなものかわからないけど、その『再構成』された時点で召喚された世界の言語はすべて翻訳されて聞こえるし、翻訳されて私たちに届いてるからちゃんと通じるのよ。」

「翻訳コン○ャク…」

 思わず22世紀のひみつ道具の名前を口にしてしまったが、サラはきょとんとしていた。

「いいえ、なんでもないです。――だから口の動きと音がズレるのですね」

「私は機会がないからあんまり使ったことがないけれど、翻訳の術は割と一般的に使われているから悪目立ちはしないと思うわ。翻訳の術では本とかの文字は読めないのだけど、使い魔はその辺も変換されて読めるはずよ」

「なんとなく理解しました」

「ちなみにこの国の言語は――というか周辺諸国の共通語はファールシー語というのよ。覚えておいてね」

「はい」

「さて話がずれちゃったけど、ちょっと元に戻すわね」

「あ、すみません」

「いいのいいの。えっと、あなたの身体は『魔素』で構成されているの」

「魔素…」

「だから、お腹が空いたり喉が渇いたりはするけど、食べても飲んでもそれは魔素の維持に費やされるだけ。排泄とか分泌とかはしないのですって。」

「え、ええ」

 つまりトイレと風呂が不要…?トイレは便利設定万歳だけど、お風呂は好きなんだよなあ。

「内臓とかどうなってるんでしょう…」

「食道の先にはフラスコみたいな器官があるはずよ。解剖しないとわからないけれど」

「えっ?」

 サラが自身の喉をトントンと示している。

「切られたら表面の血は流れるでしょうけど、目の涙とか口内の唾液みたいな、外気に触れる分泌物も含めて魔素がそれらしく流れているだけだそうよ。身体が真っ二つに割れるくらいならマスターが治せると師匠が言っていたわ」

「まっぷたつ。なりたくないのですが」

「嫌でもなるときはなって私を守ってね。ちゃんと治してあげる」

「サラ、鬼のようなことをおっしゃいますね」

 げんなりと抗議すると、サラは不思議そうな顔をしていた。


「そうかな?だって、ミャーノは使い魔なのよ。使い魔なのだからマスターの盾と矛になってもらわなきゃ」


キリがいいのでここで引きにします


2018/3/2:横書きWeb小説だしと思い文頭空白つけてなかったのですが、つけました。

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