葬王星上の空から、雫
殺るか、殺られるか。
神さま、ごめんね。
あたしは剣をとる。
だからこのまま死んでもいい。
でも戦わせて。
いつ来るか、あなたは盗人のように来ると教えてくれたその終わりの日が来るまでに、私にゆるされた寿命の限りは。
天国に行けなくてもいいの。
ただ守らせてーー。
「各機展開」
「右9時から砲撃、備えてッ」
「右翼被弾ッ、軽度通信障害ッ」
「もうもちませ…………ジ…………ジジ……」
私の生きる戦場は、宇宙。
ポイント・アルファゾイズ。
葬王星の周りに散らばる小惑星ゴンザの欠片。
遥河系銀河の中心部から少し離れた薄暗い場所。
小惑星ゴンザは隕石により七分割され、そのひとつがアルファ・ゾイズ。
ゴンザには葬王星上の国ゾルベタールの軍事施設があった。
クローンを研究・開発していた。
極秘・超機密施設。
敵国グロイリアーとの戦のため、クローン人間軍を補充していた。
だが、あの日。
流星が、空の雫のように見えた日の夜、突如。
星々が墜ちた。
隕石が、地面に。
小惑星は七つに割れた。
堅固な地下シェルターに液体に浸かり、時機を待っていたクローン人間のみが助かった。
粉微塵に破壊され、動植物すべてが息絶えた惑星の欠片の上で。
生命をつなぐのは不可能。
なのに。
ゾルベタール国内で劣勢だった革命軍は、本部機能をアルファ・ゾイズに移管。
崩壊した軍事施設の情報を求め。
破棄された未知の場所。
ここに逃げねばならないほど革命軍の状況は逼迫していた。
ゾルベタールの敵国グロイリアーから革命軍への援助は途絶えがちで頼りにならず。
グロイリアーも虫の息。
瀕死の革命軍は、亡命先のアルファ・ゾイズで。
眠り保管されていたクローン人間たちを見つけた。
大量の研究資料も。
革命軍が降り立った小惑星ゴンザの欠片は、ゾルベタール軍事施設の中心地だったのだ。
革命軍は直ちに解析を始めた。
ゾルベタール軍はこれらの基幹資料を処分したがっていた。
葬王星会議、つまり国際法ではクローン人間の研究はご法度、それを人的資源として戦線に投入したと知られれば、国際法により制裁が免れない。
ゾルベタール国の威信も地に堕ちる。
限られた弾薬、戦闘機、食料、水。
手を下さずとも滅びゆく革命軍を執拗に攻撃するのはこのクローン人間に関する機密を国が処分したがっているから。
革命軍がこの資料を葬王星会議にはかったら、ゾルベタール国は終わりだ。