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JK無双 終わる世界の救い方   作者: 蒼蟲夕也
フェイズ1「ゾンビだらけの世の中ですが、剣と魔法で無双します」
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その9 ゆかいなスキル振り

「お、……おーきに。助かったわ」


 仕留めた“ゾンビ”を怖怖と見下ろしながら、女教師がぺこりと頭を下げます。

 私は小さく頷いたあと、彼女に背を向けました。


「ど、どしたん?」

「他にいないか、念のため確認してきます。なんだったら、先に戻っていただいても結構ですので」


 などと適当にあしらいながら先生と距離を取ると、予想通り、スキル取得を求める声が聞こえてきました。


――1、《剣技(中級)》

――2、《スーパーメンテナンス》

――3、《格闘技術(初級)》

――4、《飢餓耐性(弱)》

――5、《自然治癒(弱)》


「……ええと、《スーパーメンテナンス》というのは?」


――《スーパーメンテナンス》は、取得することで装備品の劣化を時間経過により80%まで自動修復します。また、時間経過による修復速度も上昇します。


 なるほどわかりやすい。

 前回取得した《オートメンテナンス》の上位互換、と。


 顎に手を当てて、しばし考えこみます。


 先ほど、実績“はじめての安全地帯”を獲得したとかいう声が聞こえてきました。

 つまり、ここはしばらく安全な場所だと考えても良さそうです(とはいえ、それがどれほどの期間の“安全”を保証するのかは見当もつきませんが)。


 安全地帯。

 そして、学校の近場には、おあつらえ向きのコンビニエンスストア。

 ……ふむ。

 少なくとも、《飢餓耐性(弱)》は選択肢から外してよさそうです。


 となると、残った候補は、戦闘系のスキル、あるいは《自然治癒(弱)》になりますが……。

 うーん、今のところ、戦闘力には不自由してませんし。

 それなら、と、私は自身の生命の安定を重視することにしました。


「五番の《自然治癒(弱)》ってので」


――では、取得するスキルを選んでください。

――1、《剣技(中級)》

――2、《スーパーメンテナンス》

――3、《格闘技術(初級)》

――4、《飢餓耐性(弱)》

――5、《自然治癒(中)》

――6、《皮膚強化》


 なるほど。

 さきほど、二度もレベルアップの声が聞こえてきていたのは、私の勘違いではなかったようです。

 確か、少し前に、


――しばらく自由行動。人助けをしたり、敵を倒すことでレベル上げを行うことを推奨。


 とか言われた記憶があります。

 「レベル上げ」は、「人助け」をすることでも可能のようですね。


 さらにさらに、もう一つわかったことがあります。

 学校に来てから、私は少なくない数の“ゾンビ”を相手にしてきました。

 そして今回の一件で、一度に二つもレベルが上がった、ということ。

 このことから推測できる、「レベル」のルール。


 「人助け」は、“ゾンビ”を殺すよりも多くの経験となる。


 ……と。

 要するに、解決した問題が難題であればあるほど、その分、見返りとして「レベル」を上げるのに必要な経験値が大きくなるようです。

 まあ、ゲームやってりゃ意外でもなんでもないことですけども。


「五番と六番の効果を」


――《自然治癒(中)》を取得すると、中程度の怪我(骨折・脱臼など)であれば一日以内に全快できるようになります。

――《皮膚強化》を取得すると、皮膚の強度が上がり怪我を負いにくくなります。また、全裸でもある程度の寒さになら耐えられるようになります。


 うわ。

 なんかいよいよ人間離れしてきたな。

 ってか「全裸でも寒さに~」とか言われても、裸で走り回ったりする予定、ありませんけどね。


 私は悩みました。

 個人的には《皮膚強化》によって防御力を上昇させたい気持ちもあります。が、その結果として、どういう変化が私の身体に起こるかがわかりません。

 なんか、すっごいゴツゴツなボディとかになったらどうしよう。

 いずれ現れるかもしれない白馬に乗った王子様に、私の大切な【検閲削除】を捧げる際、その肌触りにドン引きされたりしないでしょうか。


 ま、そんな人、当分現れっこないし、そもそも現れるかどうかもわからないし、先のことなんて考えても仕方のないことではあるんですけども。


 私はもう一度だけ迷ってから、


「もっかい自然治癒でお願いします」


 比較的、生理的嫌悪感の少ない方を選択しました。


――では、スキル効果を反映します。


 次の瞬間、私の内部に、奇妙な感覚が生まれます。

 活力がみなぎってきた、とでも言いますか。あるいは細胞が活性化したような感じ?

 《剣技(初級)》を取得した時も思いましたが、この感覚、少し説明しにくいんです。

 ただ、自分の身体に何らかの変化が起こったという確信がありました。

 これでレベル上げの処理は終了……と思っていたら、


――実績“はじめての安全地帯”の報酬を選んでください。


 ……ん?

 どうやらまだあるようです。


――1、やくそう

――2、どくけし

――3、せいすい


「なんじゃそりゃ」

 尋ねると、


――“やくそう”は、飲むことで軽傷を即座に回復します。

――“どくけし”は、“ゾンビ”に噛まれた際、飲むことで毒を中和します。

――“せいすい”は、身体にふりかけることで数分間“ゾンビ”を寄せ付けにくくなります。


 律儀に全て答えてくれました。

 はあ。

 なんだか、ますますゲームめいてまいりましたなあ。

 “実績”というのは恐らく、特定の条件を満たすことで手に入る称号、あるいはトロフィー的なものでしょう。

 どうやら、何かしらの条件を満たすことでこの“実績”を解除することができるようです。

 そしてその“実績”を解除することによって、特定の報酬が手に入る、と。


 なるほど。


 となると、その“実績”の取得条件が気になるところ。

 どうにかすれば確認できるのかもしれませんが、とにかく今のところは「なんか手に入ったラッキー」くらいの気持ちでいた方がいいのかもしれません。

 少し考えてから、答えを出します。


「じゃ、“どくけし”で」


 そして、ちょっとだけわくわくしながら待つこと数秒。


――では、アイテムを支給します。


 その声がした次の瞬間、「そんじゃほら、やるよ」という感じのぶっきらぼうさで、私の胸元に一本の小瓶が飛び込んできました。

 慌ててそれを受け取ります。

 それがどこから現れたのかは不明。

 視界の外から、それこそ降って湧いたように飛んできたのです。

 小瓶のサイズは、栄養ドリンクよりもちょっと小さいくらい。


「ほえぇぇぇぇ……」


 間の抜けた声も出ようものです。


 目の前に現れた存在、“どくけし”は、私にとって二つの意味を持っていました。


 まず、今朝方からちょくちょく聞こえていた謎の声。

 その声が、自分の心の中だけに存在する妄想の類ではなく、物理的な影響をもたらす超常の何かだ、ということ。

 ゲーム一筋に生きてきた私が、器用に刀を振り回せていた時点でその不可解さは目に見えていましたが、今回の一件で、確たる物証が手に入りました。


 そしてもう一つ。これが重要なこと。

 どうやら私に語りかける「超常の何か」とやら。

 それと、現在起こっているこの状況には、なんらかの因果関係がある、ということです。

 でもなければ“どくけし”なんて都合の良いアイテム、用意できるわけありません。


 …………厄介だな。


 “どくけし”の瓶を眺めながら、内心、私は苦い気持ちでいっぱいになりました。


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