表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
JK無双 終わる世界の救い方   作者: 蒼蟲夕也
フェイズ2「デスゲームはじめました」
63/433

その62 友達

 次の日。

 空が白み始める時間帯に、自然と目が覚めました。


 今日こそは。

 今日こそは、“奴隷使い”とやらのいる場所へ向かわなければ。


 私は、まだ眠っているみなさんを起こさないように、スーパーマーケットの通用口へ向かいます。


 すると、


「行くのかい?」


 里中さんに呼び止められました。

 誰も居ないと思ってたので、不覚にもビクッとなります。


「あんまり寝られなくってね。……あの子と話してると」

「あー、そういえば、昨晩はずいぶん遅くまで話してましたね」

「聞いてたのかい?」

「いえ。さっさと寝ました」

「そうかい……」


 おばさんは、肺の空気を全て出さんばかりの深いため息を吐きました。


「頼みがあるんだけど」

「聞くだけなら」

「あの子、……彩葉ちゃんを連れてってあげてくれないかい?」


 少し、意外な申し出だと思いました。

 彼女の存在が、ここの人たちにとってとても大きなものだったことは、私でも予想がつきます。

 そうでもなければ、命がけでここまで戻ってきたりしないでしょう。


 きっとこの場所において、彩葉ちゃんは、“安全”の象徴であったはずでした。

 彼女がいれば、もう“ゾンビ”は怖くありません。もっと良い場所に移ることもできるでしょう。

 そんな彩葉ちゃんを、自分から遠ざける理由がわかりませんでした。


「っていうか、本人が納得しないのでは?」

「そうかもね。あの娘は優しいから、……また、あたしらの女神様になってくれるかもしれない」


 女神様、ねえ。


「でも、それじゃあダメなんだよ。あたしらなんかじゃね。どうやっても、あの娘の隣には並べない。あの子には、本心を話せる友達が必要なんだよ。あんたみたいな」


しばらく、気まずい沈黙が生まれました。


「……もし、彼女にその気があるなら、追ってくるように言って下さい。道中、“ゾンビ”を焼きながら進むので、追いつけるはずです」

「わかった。ありがとね」


 里中さんは、疲れた笑みを浮かべます。

 彩葉ちゃんの前では、決して浮かべない表情でした。


「なあ、あんた」

「はい?」

「“ゾンビ”は怖いかい?」

「いいえ、ちっとも」

「そうだろうね。……あたしも、最近ではすっかり慣れちまった。ここに来るまでも、何体か殺したよ。“ゾンビ”と……それと、人間も、だ」

「人間を?」

「ああ。暴力的なやつでね。一時期、そいつのことを旦那だとか、そんな風に呼んでいた男だ。あいつは、あたしだけじゃなく、高田さんたちまで危険に晒そうとした。その時ちょうど、手元に包丁があってね。長くは苦しまなかったはずさ」

「ふむ」

「何にも感じなかったよ。十五年は一緒だったんだけどね。“ゾンビ”の方がよっぽど難しいなって思った」


 私は、里中さんが何を言いたいか、感覚的にわかる気がしました。


「いいかい。ほんの一月と少し前には虫も殺せなかったあたしが、昔惚れてた男を平気で刺したんだ。あんたは賢い子のようだから、わかってるようだね。“ゾンビ”の恐ろしさは、力が強いってことだけじゃない。連中は、少しずつ、あたしらの常識を壊して、狂わせていくんだ。……なあ、忘れないでおくれよ。あんたたちは、魔法を使える。そんでもって、あたしらよりもずっと強い。……でも、心は、あたしらと一緒なんだ。一度壊れちまうと、もう戻らないんだよ」


 里中さんが、訥々と呟きます。

 昨夜のマシンガントークが嘘のようでした。


「あの子と、仲良くしてあげてね」


 まるで彼女は、彩葉ちゃんがどういう選択をするか、最初からわかっているようでした。


「わかりました」


 頷き、スーパーマーケットを後にします。



 それから、二時間ほど経ったころでしょうか。


「おーい! ねーちゃぁーん!」


 後ろから、少女が手を振っているのが見えました。


「……あら。来たんですか」


 特に意外でもなく、私は言います。


「ああ。みんなはもう大丈夫だって。食べ物もいっぱいあるし、他の生き残ってる人の見当もついてるってさ。そんで、新しくバリケードも作るって言ってた」

「そうですか」

「それに、ここの近くに悪いやつがいるかもしれないなら、やっつけてやらないとな! 何せ、あーしら二人が揃ったら、無敵だし! “怪獣”だってやっつけられるかんな! ……だから」


 そこで彩葉ちゃんは、少しだけ、視線と声のトーンを落として、


「だから、……その。あーしも、ねーちゃんについていっていいかな? たぶん、迷惑はかけないと思うし」


 もちろん、断る理由はありませんでした。


 彼女が私を必要としてくれたように。

 私もまた、友達を必要としていたのですから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ