SS4『ひみつ兵器』
ある日。
雅ヶ丘高校、運動場にて。
「ねえねえ、センパイ」
「なんです、麻田梨花ちゃん」
「最近、調子はいかが?」
「いつものとおり。片っ端からゾンビをぶち殺す毎日ですよ」
「うふふふふ。ですよねー」
「それが、どうかしたんですか?」
「うふふふふ。本日は、そんなセンパイにプレゼントがありましてっ」
「ほう」
「ここ最近、探索班の人たちが、あっちこっちから物資を調達してくれているでしょう」
「そうですね」
「それで、――とあるルートから私、ひみつ兵器を仕入れてきたんです」
「とあるルートって、具体的になんです?」
「……………」
「……………」
「ま、まあそれは、どーでもいいじゃないですか!」
「なんですか今の、妙な沈黙は」
「とにかく! ひみつ兵器を仕入れたので! センパイにお試しで使ってもらおうかな、と!」
「別に構いませんけど。……なんか、ごり押ししてません?」
「してません!」
「なら、いいんですけど」
「それじゃーさっそく、一つ一つ、説明していきますね。まずこれは、――じゃん! ”特製ボディスーツ”!
「わあ。……なんか、『エヴァ』で観たことがあるようなデザイン」
「こちら、ただのコスプレ衣装じゃありません! ケブラー繊維を使用してあって、ゾンビに噛まれても大丈夫な防御力なのです! 今回は、センパイに合わせた女性用サイズを用意させていただきました!」
「ほほう」
「そしてお次に、……これは、ちょっとした力作。”全自動ゾンビ狩りロボ”です」
「へぇ。某携帯ショップでよく見かけるロボが、チェーンソー持ってる」
「はい。こちらその、ペッ○ーくんを再利用しています。スイッチを入れたら、盛大なBGMを鳴らしながらペ○パーくんがくるくる回転、寄ってきたゾンビを切り刻む、という。……ちなみにこいつ、いくら使い捨てても大丈夫です。ペッパ○くんの売れ残り、山ほど見つけたので! しょーじき持て余してるんです!」
「可哀想な○ッパーくん……」
「で、次。――”忍法・雲隠れの術”!」
「に、忍法……? なんかこれ、消火器にダイナマイトを巻き付けただけに見えますが」
「はい。仰るとおりのシロモノです。導火線に火を点けて、ぽいっと”ゾンビ”の群れに投げ込んでください」
「用途が意味不明すぎるんですけど」
「そこはそれ! 大量の煙を辺りにまき散らすことで、……長時間にわたって”ゾンビ”を混乱させることができる……はず! たぶん!」
「たぶんて」
「そして最後に、――じゃん。”改造エアガン”っ!」
「おおっ……、すごい。本格的だ」
「こちら、特性の金属弾を発射します。フライパンくらいなら打ち抜ける威力なんですよ!」
「なるほど。これは使えそうですね」
「細かい撃ち方は……えーっと、もともとのエアガンにくっついてた説明書があるので、それを参照してください!」
「りょーかい」
「それじゃ、ひみつ兵器の感想、お待ちしてますからねー♪」
「はぁーい」
▼
後日。
雅ヶ丘高校、とある教室にて。
「やあやあ、センパイ」
「どうも、梨花ちゃん」
「それで、……どうでした? ひみつ兵器の具合は」
「それなんですが、――まあ、結論から言うと、どれも実践で使うのは難しいですねえ」
「えーっ! それ、マ?」
「マです」
「具体的に、拙かった点、お教えいただいても?」
「まず、”特製ボディスーツ”ですが、通気性が悪くてめちゃくちゃ蒸れます。しかもこれ、とんでもなく動きにくい」
「Oh……」
「だいたい、ゾンビに噛まれたら、中の肉ごと噛みつぶされちゃいますからねぇ。噛まれても大丈夫なようにするより、噛まれないよう立ち回った方がむしろ、安全なんですよ」
「うーん。そっかぁ」
「あと”全自動ゾンビ狩りロボ”ですが、――これもひどかった」
「え」
「○ッパーくんったら、ぜんぜん重心が安定しなくて、すぐ転んじゃうんですよ」
「ほええええええ」
「それと、”忍法”のやつ。あれそもそも、重くてゾンビの群れに投げ込めないです。普通にダイナマイトを投げ込んだ方がマシですね。かさばるし」
「で、で……でも、”改造エアガン”は? あれは使いやすかったでしょ?」
「いいえ。実を言うと、あれが一番まずかったんです」
「えっ」
「あれ、実際に使ってみると火力がぜんぜん足りなくて、ゾンビを殺すに至らないんですよ」
「そんな馬鹿な」
「よっぽど至近距離で撃てば結果は違っていたかもわかりませんが、……それなら正直、刀を使った方が確実ですからねえ」
「…………うううぬぬぬ」
「――あれ? 梨花ちゃん、なんでそんな、ふくれっ面を?」
「私だって、私だって……。みんなの役に立つって、証明したかったのにぃっ!」
「えっ。もしかしてこのひみつ兵器作ったのって、……梨花ちゃん……?」
「もう、知らないっ! センパイの原始人! 鬼武者っ!!」
「原始人で鬼武者て。ちょ、ちょっと待ってくださいよ。梨花ちゃーん。おーい……」




