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JK無双 終わる世界の救い方   作者: 蒼蟲夕也
フェイズ3「鏡の国の冒険」
352/433

その346 謎系魔法

「謎系……ですか?」

「そーそー」


 ナナミさん、ノーブラのおっぱいをぽよんとして、


「あたしだって死ぬのはイヤさ。でも、まだ気持ちに余裕があるのは、この魔法があるからなの」

「どういう術なんです、それ」

「パルプンテ」


 その一言で、私はほぼ完璧に彼女の言いたいことを理解しました。


「あー。なるほど」

「お、わかってくれる?」

「ええ、まあ」

「やっぱオタの友人はいいねえ。舞以はそーいうの、ぜんぜん知らないからさ」


 私、”プレイヤー”としての力を手に入れた後ほどゲーマーで良かったと思ったことはありません。


「ドラクエでしょ。何が起こるかわかんないやつ」

「そういうこと。効果がランダムな魔法。それが謎系なんだ」


 私たちは今、すぐそばにあった二階建ての建物に移動していて、”ゾンビ”たちを見下ろしているところ。

 赤い目をした彼らは、例によって肉の階段を構築中。

 もちろんこちらは、彼らの手が届く前に一仕事終えるつもりでした。


「この魔法、ちょうど今みたいな状況で使うのがベストなの。一人っきりでも、みんながいる時でもよくない。……頼れる仲間が一人だけ、そばにいてくれる時がベスト」

「パルプンテって確か、えげつないマイナス効果が起こったりしましたよね」


 原作の通りなら、味方が突如死んでしまったりもするはずです。


「うん。敵味方見境なく迷惑を被る」

「迷惑、程度なのですか?」

「ちゃんと対処を理解している仲間ならね。あと《治癒魔法Ⅱ》は必須」


 私はふと、先ほどまで休憩していた隣のビルを見上げます。もはや、そこに人気はありません。睡眠と軽食を済ませた避難民のみなさんは今、エレベーターを使って一階に移動済でした。

 この作業が終われば、私は避難民と合流、その後、渋谷駅への道を急ぐことになります。


「ちなみに、調べがついてる《謎系魔法》の効果は9つ」


 彼女が語った話をまとめると、


 1、呪文がやまびことなって木魂する。

 2、”敵性生命体”がランダムで一匹、召喚される。

 3、火系、水系、雷系Ⅰ~Ⅴの中からランダムで効果が発動する。

 4、自分を含めた周囲の仲間の魔力が全回復する。

 5、自分を含めた周囲の仲間の怪我が全回復する。

 6、自分の体調がとてつもなく悪くなる。場合によってはそのまま死ぬ。病気は《治癒魔法Ⅱ》で治せる。

 7、”とてつもなく恐ろしいもの”を召喚し、周りにいる”敵性生命体”を攻撃する。

 8、時間が一分ほど巻き戻る。

 9、プラスにもマイナスにもならない謎の現象。(例:すっかり疲弊した不死のチンパンジーにハムレットの台本を手渡される、など)


 とのこと。


「ほほう。いろいろ多彩ですねえ」


 この中で、明らかなマイナス効果は、――2と6、でしょうか。


「あと、3も危険ね。放たれる魔法は敵味方を区別しないから。……ただ、”名無し”が相棒なら、大した問題じゃあない」


 まあ、私には《魔法抵抗》系のスキルが充実してますからね。

 ことほどさように、戦闘中に使うのはあまりにもリスクが高すぎる魔法ですが、こういう場合はわりと使いやすい、かも。


「今回、狙って出したいのはもちろん、――」

「7番。味方になってくれる化物を召喚し、そいつにあたしらの援護を頼むの」

「ちなみにその”とてつもなく恐ろしいもの”って、どんな生き物なんです?」


 クトゥルフ神話生物みたいのかな?


「わからない。どうも、あたしのメンタル次第で変わるっぽい。なんとなくその時、怖いと思ったものが顕現するみたいねぇ」

「以前に出たものは?」

「馬鹿でかいスパゲッティの怪物とか、巨漢の殺人ピエロとか。あと、アニメのキャラクターが出てくるときもあるな。『まどマギ』でマミさん喰ったやつとかね」


 お菓子の魔女シャルロッテのことですね(メガネクイッ)。


「見た目でいちばん最悪だったのは、暴れる巨大なちんこかな。ちんこが”ゾンビ”をなぎ払う様は、……正直、かなりキツかった」

「そうならないことを祈りましょう。私たちのコラボ動画が発禁になってしまう」


 ちなみに、生存確率の違いということで、今は私がビデオカメラを受け取っています。

 これを無事に持って帰って、ここで起こったことを余すことなく公表するのも私の使命だと言えるでしょう。


「じゃ、そろそろ始めようか」

「はい」


 私が身構え、ナナミさんの呪文を待ちます。

 彼女、しばらく考え込んでから、


「ええと……ごほん。いちおう危険な魔法だから間違って使わないように、ちょっと長めの呪文にしてるんだ。だから恥ずかしいな」

「いいですから。はよ」

「うん。――《ぴーりかぴりらら、ぽぽりなぺぺると》! なーんかおこれ!」


 ナナミさんが魔女ッ子アニメじみた台詞を言うと、


 びゅう!


 と、そこそこ殺意のこもったスピードで炎の塊が私に向かって飛んできます。

 私はそれを、ちょっと首を傾げる形で躱して、


「今のは《火系》の二番ですね」

「ああ、ごめんっ」

「覚悟の上です。おきになさらず、どんどんいきましょ」

「了解。……いくよ……っ」


 それが、私たちの小さな受難のはじまりだったりして。


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