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JK無双 終わる世界の救い方   作者: 蒼蟲夕也
フェイズ1「ゾンビだらけの世の中ですが、剣と魔法で無双します」
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その31 計画的窃盗

 軽トラを手に入れた後は、驚くほどスムーズにことは進みました。


 出くわした“ゾンビ”の群れは、多くて三匹。

 “ゾンビ”が現れるたびに、私は荷台から降りて刀を振るいます。で、仕留めた“ゾンビ”は、麻田さんと紀夫さんが邪魔にならないところに引きずっていく、と。

 いつの間にか、そういう役割分担が出来上がっていました。


「くそっ。これじゃあまるで、立場が逆じゃないか」


 紀夫さんが苦い顔を作ります。


「今日のため、家族に遺書まで書いてきたってのに」

「奇遇ですね。私もです」


 中年男同士が目を合わせて、きまり悪そうに笑い合いました。


 ふと、オタク文化とホモソーシャルの絆に関する思索を巡らせたりなど。


 軽トラが裏門にたどり着くと、康介くんを始めとする四人が、私たちに手を振っているのが見えます。


 すでにコンビニ前の“ゾンビ”たちは、彼らの独断で全て始末し終わっていたようでした。

 しかも、ちゃっかりコンビニの入り口は出入りしやすいよう開けられています。


「たまげたな……。なんて勝手なガキどもだ」


 紀夫さんが呟きました。

 ただ、今度はあんまり迷惑そうな口調ではありません。

 なんというか……息子の成長を喜ぶ、父親って感じの。


 やれやれですな。


 麻田さんの運転で、軽トラックがコンビニの入り口に横付けされます。

 周囲に“ゾンビ”の影はなし。

 このまま作業を進めても、問題はなさそうです。


「十年以下の懲役、または五十万円以下の罰金……でしたかな?」


 紀夫さんが半畳を入れると、


「警官が不祥事起こすとですね。すぐにインターネットに載るんです。この一件は内密に」


 麻田さんも応えます。


「では……。新しい仕事をはじめましょうか」


 その言葉を皮切りに、略奪が始まりました。



「まず、弁当類を中心に。ダメそうなものでも、最悪火を通せば食べられるだろう」

「ハハッ! 見ろよコースケ! アイスクリームのコーナーがエゲツナイことになってる。みんなドロドロだ!」

「そーいうのは放っとけ、リンタロー」

「わーい! 私、このお菓子大好きなんです! 期間限定品!」

「……雑誌類はどうする? 焚き付けに使えるかも」

「本はとりあえず各一冊ずつ持っていこう。酒類、コーヒー、それとタバコも要る。娯楽も大事だ」


「賞味期限は見なくていい。とりあえず、少しでも使えるかも知れないものは片っ端からもらっておこう」

「はははははは! なんかすっげーたのしい! ゲームソフトも取り放題だぞ!」

「持っていってどうするんだよ。肝心のゲーム機がない」

「このパンすっごく美味しいんですよぉ。あっ、でもクリーム大丈夫かな?」

「……うん。これでようやく靴下を替えられる」

「ガキどもに二つ三つ、人形を持って帰るとするか……なんのキャラクターか知らんが」


「冷凍食品は……さすがに無理そうだな。だが、一部持って帰ろう。火を通せばなんとかなるかもしれん」

「見ろよ! 『ワン●ース』のTシャツだ! 欲しかったんだこれ!」

「ここらへんのフィギュア、オークションに流せばちょっとした額になるよな……」

「あーっ。このジュース試してみたかったんだぁー。ラッキー」

「明日香、……食べ物ばかりで、生活用品を忘れるな」

「助かった。パンツと髭剃りを切らしていたんだ」


 怒涛の勢いで軽トラの荷台が埋まっていきます。


 私はというと、念のためコンビニの外で見張りをしていました。

 みんなの仕事が手際よく進んだためか、腕をふるう機会はありませんでしたが。


「見ろよセンパイ! 『ワン●ース』のTシャツだ! けっこー高いやつだぜこれ!」


 林太郎くんが、勝ち誇ったようにシャツを抱えて現れます。


 気がつけば軽トラ一杯に雑多な物資が積まれていました。


「これでも半分ほどだが……とりあえず、期限の迫っているものは全て積み込めたな。そろそろ引き上げよう。……麻田さん? 何してる」

「ああ、いえ。鈴木朝香先生に頼まれたものですから」


 言って、麻田さんは、ポケットの中から、少なくない額の万札を取り出し、レジ横にそっと置きます。


「なんとまあ。……どこまでもマジメな先生だ」

「こういうことも、時には大切だ。さもないと我々は、きっとケダモノと変わりなくなる」

「……ふん」


 紀夫さんが鼻を鳴らします。


「コースケ! もうそろそろ出るぞ!」


 父親に怒鳴られて、最後まで残っていた康介くんが、コンビニの中から飛び出しました。

 そのポケットに、こっそりとコンドームが忍ばせてあったことを私は見逃しません。


 なるほど。

 彼もまた、色を知るお年ごろということですか。

 このこと、リカちゃんのパパは知ってるのかな。


「みんな、とりあえず今日はここまでにしよう! ポケットに入る分は構わないが、他は次の機会だ」


 ……きっと知らないでしょうね。


 うん。

 見なかったことにしておきましょう。



 その後、軽トラックを校舎内に運びこむと、


――おめでとうございます! あなたのレベルが上がりました!


 という声がしました。

 ああ、今回の一件、人助け判定だったんですね。


――おめでとうございます! 実績“救援物資”を獲得しました!


 ほほう。

 ついでに実績も解除、と。


 私は、トイレにいくとか適当な感じの言い訳をして、早速レベル上げの処理を終わらせます。

 一応、前回確認しなかった魔法関係のスキルをチェック。


――では、取得する魔法スキルを選んで下さい。

――1、《火系魔法Ⅲ》

――2、《水系魔法Ⅰ》

――3、《雷系魔法Ⅰ》


 おっと。

 なにが条件だったかわかりませんが、いつの間にか雷系の魔法が解禁されていますね。

 念のため、効果を確認。


――《火系魔法Ⅲ》は、任意の呪文を唱えることで魔法を使えるようになります。

――《水系魔法Ⅰ》は、任意の呪文を唱えることで魔法を使えるようになります。

――《雷系魔法Ⅰ》は、任意の呪文を唱えることで魔法を使えるようになります。


 あー。

 やっぱりみんなこんな感じなんだ。

 魔法系は、実践にて効果を確認する他ないんですね。


「《火系魔法Ⅲ》を」


 とりあえず、火系を極める方針で行きましょう。

 でも、魔法の試し撃ちはまた今度にしときます。危ないかもしれませんからね。


――実績“救援物資”の報酬を選んでください。

――1、てつのつるぎ

――2、てつのやり

――3、かしのつえ


 そーいや、実績で思い出しましたが、前々回に取得した“臆病者のメガネ”って、まだ効果を確認してませんでしたね。

 まあ、今んとこ腹の中を探りたい相手もいないので、仕方ないですけども。


――“てつのつるぎ”は、鋼鉄製の剣です。

――“てつのやり”は、鋼鉄製の槍です。

――“かしのつえ”は、樫の木を削って作られた杖です。これを手にした状態で魔法スキルを使用すると、スキルの威力に10%のボーナスが付加されます。


 ほー。いいじゃないですか。

 こういうのでいいんですよ。

 こういうので。


 ここ最近、『ドラ●もん』の道具めいた報酬が続いていただけに、今回はわかりやすくていいですね。

 それとも何か、もらえるものには法則性があるのでしょうか?

 解除した実績によって、報酬の種類も変わってくる、的な?


 まーわかんないですけど。


 “てつのつるぎ”か“かしのつえ”かで悩みましたが、ここは予備用に剣を手に入れておきますか。


「“てつのつるぎ”でお願いします」


 言うと、剣が一本、そっと目の前に現れます。


「へー……」


 それは、RPGとかでよく見られる、もっともシンプルなデザインの剣でした。

 諸刃で、柄の部分に金メッキの装飾が見られます。


 ……でもこれ、鞘がないですね。

 自作しろってことでしょうか。うーん、使いにくい。


 これだったら“てつのやり”にして、運動神経のいい理津子さんあたりに譲渡した方が良かったかもしれません。


 ま、いいか。

 

 私は、手に入れたばかりの“てつのつるぎ”を教室の隅っこに立てかけます。


 しばらくの間は、インテリアの一種ということにしときましょう。


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