その288 一面クリア
「――ッ! 気をつけろ!」
”賭博師”さんの叫び声と共に、四匹の子豚が戦闘態勢をとります。
「まずいぞ。追加の敵か……ッ!」
いの一番に飛び込んでいったのは青色の豚。藍月美言ちゃんでした。
彼女が草むらを探る、と……、
??『わあっ!』
飛び出してきたのは一匹の、若い狼族の少女。
彼女は、いかにも日本の萌え文化をカリカチュアライズしたようなデザインで、耳と尻尾が生えているところ以外はほぼ人間型です。
狼族の少女『こ、こ、腰が抜けて……』
少女は、いまにも泣きそうな表情でこちらを見上げていました。
対する四匹の子豚たちは、それぞれぺろりと舌なめずりをして、
黄豚『どうする、こいつ? 辱めるか?』
青豚『刺し、刺し、刺したい! 殺して辱めたい!』
白豚『馬鹿。もったいないだろ。辱めてから殺せ』
赤豚『こ、今度こそまともな女を辱められる……』
ワオワオ! こいつら全員、辱める以外に意見、ないじゃん!
こういうのって、ひとつくらい正義の選択肢があるのが普通じゃないの?
「どうします?」
「当然、幸福度の犠牲になってもらう。もはやオレサマたちは、引き下がれないところにいるのだ」
ですよねー。
「だが、――だれがするかが問題だな。四人でやると、むしろ幸福度にマイナスがつくらしい。妙なところでお行儀のいいやつらだ」
それ多分、嫌いなやつの裸を見たくないからでしょう。
「ここは、――”名無し”がやってくれ」
「え、私ですか?」
「ああ。その方が良いだろ。さっきの娼館であんまり回復しなかっただろうしな」
「なるほど」
ぶっちゃけ今の私、仲間に嫌がらせを続けた結果、普段より幸福度が高いくらいなんですけど。
とはいえそれをみんなに伝えるわけにもいかず、
「……わかりました」
「よし。コトの最中を見ると、こっちの幸福度が下がるみたいだから、オレサマたちは少し遠くにいる」
「了解」
私は、狼族の少女を引っつかみ、草むらへと連れ込みます。
狼族の少女『お、お助けぇええ……』
ファンシーな三頭身が、萌えキャラを押し倒しました。
また例の資料映像か……と思っていると、この後まだ、別の展開があるようで。
狼族の少女『おねがいします、私を逃がしてください! 売ります! 仲間の情報を売ります!』
こいつもクズなんかい。
私は、とりあえず狼少女を手放し、彼女から情報を聞き出します。
細かい状況説明は省かれ、私の持ち物に”西の砦の地図”が加わりました。
また、西の砦に住むボス敵の弱点(子どもの頃、溺れたことがトラウマで、水魔法を喰らうと気絶する)についても。
これだけの情報があれば、さほど労せずして西の砦の攻略が可能でしょう。
特にアドバンテージが大きいのは、この情報を私が独り占めできている点。
……この勝負、勝ったな。
私は、用済みになった狼少女をさっとレイプした上で絞め殺し、みんなと合流します。
赤豚『あの女、死ぬ一瞬前まで助かる気でいたぜ。うける』
黄豚『腰振った分、別のところでもちゃんとはげめよ』
白豚『蛮族のクズ女とはいえ、なんであのゴミ野郎に……』
青豚『…………………………』
「いやあ、お待たせー」
「どうだった?」
「幸福度はほぼ最大まで回復しましたよ。しかもレベルも上がりました」
「よし。……それで、他に手に入ったアイテムは……?」
「ありませんでした。死体はすぐそこに転がっています」
「殺したのか?」
「ええ。何か問題が?」
「……いや」
どうやら彼女、彼我の戦力差を推し量りたい様子。
このゲームの怖いところは、敵だけでなく味方の戦闘能力、所持品、健康状態をも確認することが難しい点にあります。
「ところで”賭博師”さん、西の砦に捕らえられているというビャッコ様は、誰が手に入れるのですか?」
「それはどうやら、砦攻略で活躍したプレイヤーが、自動的に女の所有権を得られるようになっているらしい」
よし勝ったッ!
私が人知れず邪悪な笑みを浮かべていると、
「やっぱりオメー、何か手に入れたんじゃないのか?」
「ん? いいえ? なんでそう思うんです?(すっとぼけ)」
「……いや。……ただ、どこかで一度見たことのある表情が見えた気がしてな」
「はあ? はぁあああああああ? 何言ってるかぜんぜんわからないんですけどぉおおおおおおおお?」
「…………………………………」
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その後の”西の砦”攻略は、三十分も掛からずに終了しました。
私が”偶然”発見した抜け道により、まったく無警戒の進入路から狼族の裏を攻め、お昼寝中のボス敵の寝首をかくことができたためです。
もちろん、MVPは私。なぜか現代的な学生服を身にまとったツンデレ系金髪ロリっ娘のビャッコ様を手に入れたのも、私。
ビャッコ『あなたの活躍、ずっと見てたよ。あたし、あなたになら操を捧げても……構わない……よ……(ぽっ)』
やったあ! チョロいぞこの女!
赤豚くんの幸福度上昇はとどまることを知らず、ぽんぽこぽんぽことレベルが上がりまくります。
まあ、レベル上がったところで武器がラバーカップなんで、攻撃力は最低値のままなのですがね。
そこで華々しいファンファーレが流れ、『1st STAGE CLEAR!』の文字が表示されました。
「そういえば、――”賭博師”さん」
「なんだ?」
「私が勝った場合の罰ゲーム、決めてませんでしたよね」
「………………そういえば、そうだな」
「じゃ、こっちが勝ったら、あなたは私の言うことをなんでも聞く。どうです?」
「なんでもって、……本当に、なんでも、か?」
「ええ」
「…………いいだろう」
そしてゲーム内時間で、まる一年が経過したことを示すアナウンスが流れます。




