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JK無双 終わる世界の救い方   作者: 蒼蟲夕也
フェイズ1「ゾンビだらけの世の中ですが、剣と魔法で無双します」
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その21 すぐ身近にある死

 まあ、危機なんですけども。

 ほぼ詰みかけてるんですけども。


 “キャプテン”から逃れた私は、“ゾンビ”から逃げる間もなるべくスピーカーをオンにしたままにしていました。

 それもこれも、一匹でも多くの“ゾンビ”を引き付けるためです。この目論見はかなりうまくいきました。

 しっかり確認したわけではありませんが、林太郎くんと明日香さんが処理しなければならない“ゾンビ”は数匹ほどで済んだはずです。


 ……が。

 ちょっとばかり、派手にやりすぎたかも。


 どうやら、あたり一帯の“ゾンビ”の注目も集めてしまったようで。


 私、囲まれちゃってます。


 これには困りました。

 元々の作戦では、商店街方面にある大通りをぐるりと一回りしてから学園の正門に戻ってくる手はずだったんですけども、その大通り全体に“ゾンビ”が集まり始めていました。

 それでもまあ、“キャプテン”に集まっていた群れに突っ込んでいくよりはマシなので、道中にいる最低限の“ゾンビ”を倒しつつ、商店街の方へ向かってはいるんですけども。


 私はまず、林太郎くんから借りたポータブルオーディオとスピーカーを、“ゾンビ”の群れに向けて放り投げました。

 奴らは音に引きつけられるので、これで少しは時間が稼げるはず。

 すかさず、投げた方とは正反対に走ります。


『ウァ、ウォアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!』


 当然のように行く手を塞ぐは、十匹以上の“ゾンビ”。

 さすがに、いちいち倒している余裕はなくなってきていました。

 中腰のまま、連中の間を縫うように走り抜けます。途中、脇腹の辺りを“ゾンビ”の手が掠めてヒヤヒヤしたりしましたが、なんとか突破には成功。


 突破に成功したといっても、数ある波の一つを切り抜けたに過ぎません。私の目の前にはまだ、数十匹の群れが立ちはだかっていました。


 前門の“ゾンビ”後門の“ゾンビ”、と。

 これはもうダメかもわからんね。


 しばしの逡巡。

 逃げ場を失った私は、やむなく、道路に乗り捨てられていた適当な家庭用ワゴン車の上に乗っかります。

 “ゾンビ”の群れが、その周囲に群がってきました。

 ぐらぐらと揺れるワゴン車は、今にもひっくり返されそう。


 あっ、これ、詰んだ?

 チェスや将棋でいうチェックメイトにはまった?


 そう思った次の瞬間でした。


「身をかがめろ!」


 背後から声。振り向くと、例の自衛隊員さんがいるじゃあありませんか。

 ヒューヒュー! カッコいいねえ! 惚れちゃうねえ!


 タタタタタタタ!


 火薬が爆ぜる音がして、数匹の“ゾンビ”の頭部が吹き飛びます。


 おお、さすが銃。すごいぞ銃。

 ……と、感心するほどには、“ゾンビ”の群れに有効な打撃は与えられていないご様子。


 それもそのはず、“ゾンビ”は頭部を破壊しないことには動き続けます。

 群れに向かってがむしゃらに弾丸を撃ちこんでも、ちょっとした足止めにしかならないのでした。


「こっちだ! こっちにこい! 俺を喰ってみせろ!」


 野太い声が響き渡ります。


 何か、嫌な予感がしました。

 よくわかりませんがこの人、死ぬつもりに見えます。

 そうとしか思えない弾丸の使い方でした。

 私の目の前を、少なくない数の“ゾンビ”の群れが通り過ぎていきます。


 自衛隊員の某さんは、小銃を放り捨て、今度は拳銃で応戦し始めました。


 一匹ずつ。丁寧に狙いを定めて、“ゾンビ”の頭部を撃ちぬいていきます。


 自衛隊員さんの銃の腕前は、かなりのものに見えました。ですが、私の心配していた通り、彼ったら死ぬつもりのご様子で、“ゾンビ”の大群を前にして、引く気配が見られません。


「逃げてくださいッ! 私は大丈夫です!」


 眼前の“ゾンビ”を斬り捨てながら、あらん限りの声で叫びます。

 ですが、私の想いは全く通じませんでした。


 どことなく据わった目をした自衛隊員の彼は、“ゾンビ”の群れの中へと飲み込まれていきます。


 最後に見た彼の姿は、数匹以上の”ゾンビ”に噛みつかれながらもなお、不敵に笑っている姿でした。


「――くそぅっ」


 小さく毒づきながら、私はワゴン車を飛び降ります。

 少なくともお陰で道は開かれました。

 彼の行動を無駄にしちゃいけない。


 行かなくちゃ。


 そう自分に言い聞かせて走ります。


 ――と。


 瞬間、天地がひっくり返りました。

 何かに躓いたのだ、と思った次の瞬間には、鋭い痛みがふくらはぎへと走ります。


 ゾッとしながら視線を向ける、と。



 ワゴン車の下から這いずるように出てきていた女“ゾンビ”が、私の足に噛み付いているところでした。



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