その158 NTR
心が折れそうになっても、ゲームは無慈悲に続いていきます。
『ざんねん! 緑髪ちゃんに彼氏ができてしまった! 今後、彼女を攻略することはできない!』(謎の男に緑髪ちゃんがラブホテルに連れ込まれている一枚絵)
『ざんねん! 赤髪ちゃんに彼氏ができてしまった! 今後、彼女を攻略することはできない!』(謎の男に赤髪ちゃんがラブホテルに連れ込まれている一枚絵)
『ざんねん! 攻略対象のヒロインが全員奪われてしまった! 今後、あなたは学生生活に希望を持つことができない!
あなたは死んでしまった!』
なんなんだ、このゲーム。
マジでなんなんだ……。
結局、それから五分も経たずしてゲームオーバーに。
「ありゃ~……」
“賭博師”さんが、呆れたようにため息を吐きます。
でもこれ、どうしようもないですよね。
そもそも、ほとんどまともにゲームをプレイできてませんから。
何か、本作を進行させるのに必要な要素が足りていないのかもしれません。
一応、初回のプレイで手に入れた情報をまとめますと、
赤髪……文武両道な完璧超人。とある大手企業の社長令嬢でもある。幼なじみである主人公のことが好き(プロローグ時点では)。
金髪……ツンデレでロリ。可愛いものが好き。勉強も運動も得意ではない。犬に吠えられたところを助けてもらったので主人公のことが好き(プロローグ時点では)。
青髪……クールで無口。運動が得意。剣道部の主将で、自分より弱い男が嫌い。だが、主人公のことは無条件で気になっている(プロローグ時点では)。
緑髪……真面目な委員長タイプ。勉強が得意。図書館でよく時間を過ごしているらしい。本の趣味が合う主人公に好意をもっている(プロローグ時点では)。
こんな感じ。
「こうして見ると、――アレだな。この主人公、片っ端からヒロインに惚れられてるんだよな。……プロローグ時点では」
「たしかに」
そっから急転直下のNTR展開ですからね。なんなんでしょう、これ?
「今度はもっと話しかけてみたらどうだ? 自分磨きに時間をかけすぎたのかもしれない」
ううむ。そうかも知れません。
二周目に突入した私は、数ある選択肢の中から、”デートに誘う→金髪”コマンドを選択。
すると、
『えっ、気持ち悪い。普通に嫌だけど……』(by金髪)
もうね。
マウスを握る手が凍りつきますよね。
あなた、私のことが好きだったんじゃなかったの?
「こ、……断られたんですけど」
「みたいだな」
それから間髪入れずして、
『ざんねん! 金髪ちゃんに彼氏ができてしまった! 今後、彼女を攻略することはできない!』(謎の男に以下略)
も、もう嫌だぁ、このゲーム。
なんでこんなにも、ゲームの世界で敗北感を味わわなければならないんでしょうか。
「他に試せそうな選択肢はないのか?」
「っぽいです」
「だったらアレだな。この金髪を攻略すること自体が誤った選択なのかもしれない。次は別のヒロインを攻略すべきだろーな」
そりゃまあ、そうなんですけど。
私の(あんまり当てにならないことが判明した)ゲーマーの勘が言ってるんです。
他のヒロインで同じことをやっても、結果は一緒だと。
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『ざんねん! 攻略対象のヒロインが全員奪われてしまった! 今後、あなたは学生生活に希望を持つことができない!
あなたは死んでしまった!』
『ざんねん! 攻略対象のヒロインが全員奪われてしまった! 今後、あなたは学生生活に希望を持つことができない!
あなたは死んでしまった!』
『ざんねん! 攻略対象のヒロインが全員奪われてしまった! 今後、あなたは学生生活に希望を持つことができない!
あなたは死んでしまった!』
『ざんねん! 攻略対象のヒロインが全員奪われてしまった! 今後、あなたは学生生活に希望を持つことができない!
あなたは死んでしまった!』
そんなことを、五度ほど繰り返して。
「ねえ、縁さん」
「なんだね」
「なんだかだんだん腹が立ってきたので、一発ぶん殴ってもいいですか?」
すると、仲道縁さんは笑顔を引きつらせて、
「それは、……ちょっと勘弁してほしいな」
その場に腰を下ろします。
「苦戦しているようなので、――そろそろ、ふたつ目のヒントを送ろう」
んん?
二つ目のヒント、あるんかい。
だったらさっさと話して下さいよ。
「君はこのゲームに、二人の重要な男性キャラクターが登場していることに気づいているかい?」
「二人、ですか……」
「一人はもちろん、君が操作しているキャラクターだな」
と、なると、もう一人は。
「ゲーム中、――ヒロインたちを次々と落としていく”謎の男”ですね」
「そう。何を隠そう本作は、その”謎の男”からヒロインを奪い取ることが目的なのだ」
そこで私は、違和感の正体に気づきます。
「なるほど……」
プロローグ時点では主人公に惚れているはずなのに、ゲーム開始と共に冷たくなるヒロインたち。
自作ゲーム特有の作りの甘さかとも思っていましたが……。
「ひょっとしてその、主人公からヒロインを奪っていく”謎の男”っていうのは、プロローグ時点で登場したキャラクター……ええとこの、真田義男くんとかいうやつでは?」
するとそのゲーム製作者は、我が意を得たりとばかりに莞爾と笑って、
「よくわかったな。そのとおりだ」
基本的にこの手の美少女ゲームにおいて、主人公の外見描写は(感情移入の妨げにならないよう)最小限度に抑えられていることが普通です。
本作は、それを利用した叙述トリックが使われているということでしょう。
「このゲームは、いわゆる”モブキャラクター”の視点に立ったものとなっている。この世界は君のものではない。真田義男くんのものだ。彼は、別段大した努力もしないでヒロインと巡り合い、特に理由もなく、次々とヒロインとのフラグを立てていくだろう」
そんな状況下において、ヒロインと恋仲にならなければならない訳ですか。
ひねくれたゲームだなぁ。
「つまり――戦う相手が違ってたってことですね」
「うむ」
「ヒロインを攻略するのでなく、真田義男くんをどうにかしなければならない、と」
「はっはっは。君は理想的なユーザーだな」
縁さんは、一刻を争う事態だというのに、今だって仲間の誰かが危険にさらされているかも知れないっていうのに、まるでそんなことは考えの外にあるみたいに上機嫌でした。
「…………………」
“賭博師”さんが、さっきから妙に神妙にしてるので、何も言いませんけど。
これ、単純に楽しんでるだけとかだったら、ぶっ飛ばしますよ? あとで。




