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JK無双 終わる世界の救い方   作者: 蒼蟲夕也
フェイズ1「ゾンビだらけの世の中ですが、剣と魔法で無双します」
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その1 目覚めの朝

――あなたは“ある理由”により、生き残らなければなりません。

――あなたの存在が必要とされなくなるその日まで、あなたを導きましょう。


「――みゃッ?」


 悲鳴と共に目を覚ましたのは、ある冬の日のことでした。

 こたつに足を突っ込んで、テレビゲームのコントローラーを握ったまま寝オチしていたようです。

 そのまま、十秒。


 ……幻聴かな?


 そう判断した私は、心地良い二度寝の世界へ……。

 と、その時です。


 どん、どん! どんどん!


 耳にうるさいノックの音が。

 宅配便かしらと思いながら起き上がり、もっさりした動作でメガネをかけると、昨晩寝る直前まで遊んでいたゲーム(ゾンビをバッタバッタと殺しまくるタイプのやつです)がつけっぱになっていることに気が付きました。

 そこに表示されているのは、


【 YOU DEAD 】


 という不吉な文字。

 おお、やだやだ。朝から不吉だこと。

 とりあえずゲーム機の電源をオフにして。

 寝起きの顔に「不機嫌」の文字を貼り付けた私は、飽きもせずどんどんどどんどどんどんどんとやってる誰かさんを迎え入れようと、1LDKを横切ります。


 多分ですけど、宅急便かなんかでしょう。

 乙女の恥じらいをかなぐり捨てて、寝ぼけ眼で扉をガチャリ。

 すると、


『――おぉぉぉぉ。……おぉおおおおおおおおおおお……』


 “ゾンビ”の仮装をした人が、目の前にいました。


「……あらまあ」


 そっと扉を閉めます。


 見間違えかしらと思って、覗き穴(マンションのドアに絶対ついてるやつ。正式名称不明。各自グーグルで調べて下さい)で外を確認。


『おおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!』


 そこには、さっきよりちょっとだけテンションが上がった“ゾンビ”の姿が。


 今日ってハロウィンだったかしら、とか。

 これだけハッチャケた仮装をしでかすご近所さんなんていたかしら、とか。

 そんなことを、ぼんやり考えます。


 ……フウム。

 おとなりの田中さんならありえますね。


 念のため、扉のチェーンをかけた私は、早朝の仮装パーティには参加せず、アクビまじりにリビングへと戻ります。

 ドアのノックはさらにうるさくなったけど、ごめんなさい私、トリックもトリートメントも間に合ってるんですよ。

 さよならどこかの誰かさん。他あたって下さい。


 そしてもう一度、我が愛しのこたつに潜り込み、ぬくぬくしようとすると……。


 ――武器を手にとってください。


 またもや幻聴。

 おう、おおおう。

 私の頭はどうしちまったのでしょうか。

 しかしどうでしょう。考えようによっては、幻聴というのも悪くないかも。

 一人ぼっちの人生でも、誰かが話しかけてくれるのなら、それもそれで楽しいような。


「じゃ、二度寝しまーす♪」


 誰に聴かせるわけでもなく、私は気軽に言いました。


――武器を手にとってください。


 まあ、しつこい。

 無視してこたつに潜り込みます。


 そして違和感。


 いつの間にやら、こたつの電源が切れていやがるじゃありませんか。

 足を突っ込んでも、感じるのは空虚な寒々しさだけです。

 愛おしくない。こんなこたつ、これっぽっちも愛おしくない。

 確認すると、ちょうどブレーカーが落ちたとこのようです。

 もっとも、焦りはしませんでした。

 よくあることなんです。うちみたいなボロマンションでは。

 手慣れた調子でブレーカーを操作……するのですが。


「あれれ?」


 スイッチを上げ下げしますが、変化なし。


「なんでやねん」


 慣れぬ関西弁も飛び出そうものです。

 どうやら、停電しているのはこの部屋だけではなさそう。

 復旧には時間がかかりそうです。

 ……。

 ふうむ。


 と……なると。

 どうしましょう?


――武器を手にとってください。


 いやいや。

 幻聴はもういいんですって。

 と、脳内にツッコミを入れつつ。


 そんじゃま、暇な間でさささっと洗濯でも済ませますかと、数日ぶりに遮光カーテンを引き、ベランダに足を踏み入れます。


「ありゃまあ」


 目を疑いました。


 無理もありません。

 どうやら、私がのんびり連休を満喫している間。



 世界が終わっていたらしいのです。




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