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 カッ、カッ、カッ......

 連続する音は、半ば規則的に周囲に響いていた。

 そして音と呼応するように、金槌を握る掌や、のみを握る指先に痺れが走る。

 ......うーん、手が痛くなってきた。正確には、これは俺の五感じゃないとはいえ、少し休んだ方がいいのかな? 時間的にはまだ余裕がありそうだし。

 手を止めて、地面に座り込む。

 改めて自分の姿を見れば、手も服も真っ白な破片と粉に塗れていて......

 ――何も考えずに石灰岩は失敗だったかなー。後悔しても、もう遅い訳だけど......


 ええと、まずは軽―く自己紹介代わりに、この世界について解説でもしておきましょうか。

 ――一言で言えばこの世界、二面性とバランスで成り立っている。

 その、一番大きな二つが物質界と精霊界――全ての要素がひとつのフィールドの上にあり、生物が営みを行う物質世界と、それぞれの要素が性質ごとに分けられ、純粋な『力』として存在する精霊たちが在る精霊世界。二つの領域は同じ要素から成り立っているのだが全く違う世界のように一見、みえる。しかしこの二つ、コインの両面みたいな接し方をしているのだ。

 基礎は同質。違うのは組み立て。影響し合い、バランスを取り合い、ひとつの『世界』が存在している。

 ......と、まあ、解説してみたけど、結局のところ、こーゆー話から俺が言いたいのは、この二通りの世界、どちらがより正しいか、なーんてのは誰にも言えないって事かな?

 あまりにも違うものに見えちまう為に、どっちが高等だの下等だのくだらない事を気にしだす奴がいるんだが、そんなのは視野の狭いお馬鹿さん。

 ――精霊界は物質界を支える為の基礎......これも、よく言われる事だし、物質界の者達からすれば、そう考えるのが解り易いとは思うけど、視点を変えれば、精霊が純粋な力となる為の、雑多な土台が物質界という見方だって出来る。

 この世界の中で、与えられている力と権限は、存在(ひと)によって違うけど、大きな力がそのまんま、大きな自由に繋がるとは限らないし、反対に、ささやかなものしかなくたって、それが矮小であるとは言えない。

 ――存在は、すべてが等しく尊いのだ。

 ......って、こんな事ばっか考えてるから疲れんのかな? 俺。


 

 久しぶりのお呼び出しを受けて物質界に現れた俺は、召喚者である長身のハーフエルフのお姉さんが用件を話し始めるより早く、身体を乗っ取らせていただいた。――時間短縮ってヤツだ、うん。

 さて、どうやら彼女、なにやら大掛かりな契約を、俺と交わしたかったらしい。呼び出された場所は(おれ)の力の強い、ちょっとした洞窟の奥だった。

 ......どうも認識に間違いがあるんだが、確かにこういった一つの精霊の力が強く働く場所であれば、世界の逆サイドである精霊界から力――精霊を呼び出すのはたやすくなる。

 しかし、精霊界との関わり、即ち影響が強いというのは、呼び出すのが楽になっても制御するのは困難になるという事でもある。

 この辺の感覚をちゃーんと理解していないとこういう安易な......いやいや、ほほえましい失敗をする羽目になる訳だ。

 でもまあ、心の広い俺としては、この程度の事で「愚かな半妖精風情がっ、久遠の闇に堕ち自我を持たぬ小さな精霊として終末の果てまで暗がりを彷徨うがよい」なーんて事言って、このお姉さんを自分の方へ引き込んだりはしないけど。

 ほら、そんな趣味の悪い事したってたいして楽しくないし、俺に別にメリットないし、それだったら身体をお借りして物質界で遊んだ方が断然楽しいよ。

 ......さっきみたいな台詞がさらっと出てきてしまうだけでも悪趣味な気もするけど、それは精霊界(むこうがわ)にでも置いておく。......闇に堕ちるって表現なんだ? 自分で言ってて解らんぞ?

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